血糖調節に関連した脳内ニューロンの特異性を検討するために, 麻酔ラットの第III脳室へ神経伝達物質 (epinephrine, norepinephrine, dopamine, acetylcholine, carbachol: 5×10
-8mol/1μ
l) および神経ペプチド (bombesin, neurotensin, substance-P, β-endorphin, somatostatin: 10
-9mol/1μ
l) を注入し, 肝静脈中の血糖値, インスリン, グルカゴンの変動を調べた.
Epinephrine, bombesinおよびcarbacholの注入により著明な高血糖が認められ, そのいずれもがグルカゴン分泌を伴っていた.
Bombesinとcarbacholの高血糖作用は, 両側の副腎摘出およびsomatostatin (10
-9mol/1μ
l) の第III脳室内前投与により消失あるいは抑制されたが, epinephrineによる高血糖は副腎に依存しておらず, またsomatostatinの第III脳室内前投与により何ら影響を受けなかった.
なお, epinephrine, bombesinおよびcarbachoiの静脈内投与と第III脳室内注入とでは, 血糖値, インスリン, グルカゴンの変動に相違を認めた.
以上の結果により, 脳内ではアドレナリン作動性ニューロンもコリン作動性ニューロンも共に肝臓よりの糖放出を増加させる作用のあることが示唆された. しかし, この両者の作用機序は脳内でも, また末梢への伝達様式においても異なっていることが判明した. さらに, 脳内でのbombesinによる高血糖作用は, コリン作動性ニューロンの作用機序に類似していることが示唆された.
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