糖尿病
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28 巻, 1 号
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  • 畑中 裕司, 松本 真一郎, 石川 和夫, 川崎 富泰, 窪田 伸三, 高木 潔, 丹家 元陽, 吉村 幸男, 老籾 宗忠, 馬場 茂明
    1985 年 28 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    レーザードップラー皮膚血流量計を用いて糖尿病患者の手指皮膚毛細血管血流量 (PBF) を測定し, 糖尿病性合併症との関連を検討した. 健常者120名と糖尿病患者85名を対象として次の結果を得た。
    1) 健常者のPBF49.2±7.1%(n=120) に対し, 糖尿病患者では40.5±10.7%(n=85) と有意 (P<0.001) の低下を示した.
    2) PBFと糖尿病羅病期間との間には, 有意の負の相関 (r=-0.340, p<0.005) が認められた.
    3) 糖尿病性網膜症の進行に従って, PBFの有意の低下がみられた.
    4) 糖尿病性腎症とPBFとの関係では, クレアチニンクリアランスとPBFとの間に有意の正の相関 (r=0.505, p<0.001) が認められた.
    5) 糖尿病性神経症とPBFとの関係で, PBFは腓骨神経の運動神経伝導速度 (MCV), 腓腹神経の知覚神経伝導速度 (SCV) との間に, 共に有意の正の相関 (MCV: r=0.467, P<0.005, SCV: r= 0.432, P<0.005) が認められた。
    以上. 糖尿病性合併症 (網膜症, 腎症, 神経症) の重症度に平行して, 手指PBFの有意の低下を認め, 手指PBF測定が, 糖尿病性合併症の指標の1つになるのではないかと考えられた.
  • 三家 登喜夫, 近藤 溪, 里神 永一, 森山 悦裕, 南條 輝志男, 宮村 敬
    1985 年 28 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者を対象に, 空腹時血清pancreatic secretory trypsin inhibitor (PSTI) 値の測定意義にっいて, 膵外分泌機能との関連性において検討した.
    血清PSTI値はradioimmuneassayにて測定した. 膵外分泌機能の指標としては, PABA吸収試験を併用したPFD (PFD/PABAratio) および空腹時血清immunoreactive trypsin値を用いた。
    健常者 (n=136) における血清PSTI値は加齢とともに上昇した, また腎障害を有する者の血清PSTIは高値であった. 1型糖尿病 (n=9), II型糖尿病 (n=77) ともに, 血清PSTI値は, agematchedcontrol群に比し, それぞれ有意な低値であり, II型糖尿病では空腹時血糖値の高い者や, 経ロブドウ糖負荷試験時のinsulin分泌能 (ΣΔIRI120') の低下した者ではより低値となっていた. 糖尿病患者の血清PSTI値はPFD/PABAratio (r=0.24, n=71, p<0.05) や血清trypsin値 (r=0.42, n=86, p<0.001) とそれぞれ有意な正の相関を示した.
    以上より, 糖尿病患者における空腹時血清PSTI値は低値であり, PFDや血清trypsin値と同様, 糖尿病における膵外分泌機能低下を検出する指標の1つとして有用であることが示唆された.
  • 交感・副交感神経障害と臨床像
    及川 登
    1985 年 28 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    先に我々は心拍変動検査で深呼吸時は副交感神経が, 一方起立時は交感神経が優位であることを報告した. この2つの心拍変動を指標として, 40-59歳の糖尿病者95名と健常者38名の心臓交感・副交感神経機能を比較検討した. 心拍数の変動は瞬時心拍数連続記録装置を用い, 心拍変動の指標は1分間6回の深呼吸を行ないその最大変動幅の5つの平均値 (I-E difrerence), 起立時の最大心拍増加数 (ΔHRmax) を用いた. 健常者のI-E diffbrence 14.4拍/分,ΔHRmax 20.5拍/分に比較して糖尿病者は各々9.4, 15.1と有意に減少しており, 糖尿病者の異常出現頻度はI-E difference 37%,ΔHRmax 29%であった.I-E differenceは罹病期間や6ヵ月間の平均空腹時血糖値と負の相関を示すがΔHRmaxはこれらと全く相関がなかった. I-E diffcrehceはインスリン治療群や網膜症, 蛋白尿を有する群で低下が著しく, 一方ΔHRmaxは増殖性網膜症に至った群で著しい低下を示すが, 治療法や蛋白尿の有無では差がなかった.
    以上より, 交感・副交感神経機能とも糖尿病者で明らかに低下しており, 網膜症などの合併症と強く関連していた. 心臓副交感神経は早期に障害されるのに対して交感神経は後期まで保持されていた. 40-59歳の糖尿病者の自律神経症状出現のcritical pointはI-E difference約5.0拍/分,ΔHRmax約10拍/分と考えられた
  • 千葉 勉, 置村 康彦, 山口 彰則, 中村 章, 児玉 一司, 猪尾 力, 山谷 利幸, 門脇 誠三, 藤田 拓男
    1985 年 28 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    軽症II型糖尿病における増殖性網膜症合併例 (増殖性前駆期を含む) について増殖性網膜症を有しない例と種々の比較検討をおこなった. 65歳以下のII型糖尿病で食事療法のみで良好なコントロールが得られている122名中, 増殖性網膜症例は12名であった. これら12名は網膜症 (-) 群, 単純性網膜症群に比し血糖コントロールには差を認めなかったが, 罹病期間が明らかに長く, 過去の最大肥満度が著明に高かった. それで網膜症 (-) 群の中から増殖性網膜症群12名と年齢, 性, 罹病期間をマッチさせて14名を選び比較すると, 増殖性網膜症群では治療開始までの無治療放置期間が明らかに長く, 過去の最大肥満度が高かった. また高血圧合併例も多い傾向にあった. さらに増殖性網膜症群では初診時の空腹時血糖, 血中遊離脂肪酸が網膜症 (-) 群に比し明らかに高く, また50g経口ぶどう糖負荷 (O-GTT) 時の耐糖能および血中インスリン反応はともに明らかに低下していたが, 食事療法にて良好なコントロールが得られた時点の75g O-GTTでは両群間に差を認めなかった. なお初診時から経過中に増殖性網膜症へと進展した例は2名のみであった. 以上, 増殖性網膜症を有する軽症II型糖尿病では, 食事療法により耐糖能は著明に改善したが, 肥満を伴った無治療放置期間が長く, その間にすでに重症網膜症へと進行した例が多い事が示唆された.
  • 織部 安裕, 川口 憲司, 鵜沢 春生
    1985 年 28 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    プロスタサイクリン (PG I2) に対する血小板の感受性を糖尿病性合併症を有する患者でADP惹起血小板凝集能を用いて検討した. すなわち, PG I2の血小板凝集能への抑制効果と血小板凝集能を50%抑制するPG I2の濃度 (IC50) を検討した. そしてこれらの指標と他の代謝指標との関連を中心に検討を加えた. 以下にその成績を示す.
    (1) 空腹時血糖は糖尿病群が健常群より有意に高値であり (P<0.001), 血清中性脂肪は糖尿病群が健常群より高値の傾向を示した.
    (2) 糖尿病患者は全例が網膜症と運動及び知覚神経伝導速度測定によるニューロパチーの存在を示した. また, ほとんどの症例に腎症すなわち腎生検による糸球体病変の存在あるいは持続性蛋白尿を認めた.
    (3) ADP (6μM) による最大凝集率は健常群と糖尿病群の間には差はなかったが, PGI2 (0.5ng/ ml) 添加時の最大凝集率は糖尿病群が健常群より高値であった (P<0.001).
    (4) IC50は健常群 (0.30ng/ml) に対し, 糖尿病群 (2.15ng/ml) が有意に高値を示した (P< 0.001).
    (5) 空腹時血糖とIC50の間には有意の相関があった (r=0.79, P<0.001).
    (6) 以上の結果より糖尿病の血小板機能充進にはPGI2に対する血小板の感受性の低下が重要な要素であり, このことが糖尿病性細小血管症の成因あるいは進展に関与しているものと考えられる.
  • 小林 孝好
    1985 年 28 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    自然発症糖尿病動物として知られるKKマウスには種々の形態学的な変化の現われることがすでに報告されている. しかし, KKマゥスの示す糖尿病状態とこれらの形態学的変化との関係をみた報告は少ない.
    そこで, 本研究では, 生後4か月より16か月までの間, 体重を30-359に保つように毎日の給餌量を3-4.59と制限し, 糖尿病状態のコントロールを試みた. その結果, 血糖値および耐糖能の正常化がみられ, 尿糖は陰性化を示し, 糖尿病状態をコントロールすることができた.
    そこで, このような給餌制限による糖尿病のコントロールの形態学的変化に及ぼす影響について観察を行なった. その結果, 飼料を自由に摂取させた非謙ントロール群では, KKマウス特有の変化, すなわち, 膵ラソゲルハソス島の肥大・増生, 腎糸球体の糸球体基底膜の不規則な肥厚とメサンギウム基質の増加, および, 心臓・肺・腎臓の中小動脈を主体とした部位に現われる石灰化などめ変化が観察された. これに反して, 糖尿病状態をコントロールした群では膵ランゲルハンス島, および, 腎糸球体の変化は明らかにその進展が抑制された.しかし, 心臓・肺・腎臓の中小動脈に現われた石灰化は非コントロール群同様にコントロール群でも観察された.
  • 三上 裕平, 松浦 信夫, 福島 直樹, 奥山 承代, 脇坂 明美, 新城 孝道
    1985 年 28 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン依存性糖尿病 (IDDM) の発症にはウィルス感染と自己免疫機序が大きく関与していると考えられている. そこで, 北海道内で15歳以下で発症した小児IDDMのHLA抗原型, Islet Cell Antibody (ICA) 陽性率, 抗甲状腺自己抗体 (AMA/ATA) 保有率を調べた.
    IDDMと正の相関を示すHLA haplotypeとしてHLA-Bw54-DR4-MT3が示唆された. ことにMT3は69例中67例 (97.1%) に認められた。負の相関を示す抗原としてHLA-B5, DR2が示唆された.
    ICAは診断から1年以内で50例中22例 (44.0%) が陽性を示し, 罹病期間と共に陽性率はほぼ漸減した.
    AMA/ATAは86例中23例 (26.7%) が陽性を示した.
    発症から5年以上ICA陽性が持続した10例と, 4年以内に陰性の確認された22例の比較では, HLA抗原型, AMA/ATA保有率に差はなかった.
    インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) では, IDDMへ移行した8例中7例がMT3を保有していた. ICAは15例のうち, IDDMへ移行した4例を含め全例陰性であった.
    IDDMはMT3のようなある種の疾患感受性のある者に発症し, その機序には自己免疫の関与していることがうかがわれた. しかし, 病初期からICA陰性で他の自己抗体をもたない患者も多数みられたことは, 自己免疫以外の要因も関与していることが同様に示唆された. また, 持続的ICA陽性が自己免疫性の優位を示すという結果は得られなかった.
  • 非インポテンス群との比較検討
    高橋 良当, 井上 幸子, 平田 幸正
    1985 年 28 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病におけるインポテンス患者の臨床像を明らかにし, その原因を追求するため, 多数の患者を対象にして臨床的に比較し検討を加えた.
    問診表より,「勃起不十分で性交不能」と答えた糖尿病患者100人 (IMP群) と年齢構成を一致させたコントロール患者 (非IMP群) 100人とを対象にした. 振動覚と深部反射検査にて末梢神経障害を, 心電図RR間隔変動より自律神経機能を検討した. また, 腎盂造影排尿後の膀胱撮影から残尿量を推定し, 弛緩性膀胱とインポテンスとの関連を調べた. さらに, Selhatingdepressionscaleを調査し抑うつ傾向について検索し, 問診表から性欲低下の有無についても検討を加えた.
    その結果, IMP群は非IMP群に比べ,
    1) 糖尿病罹患年数が長く, 比較的やせていて, インスリン治療者が多い. HbA1値では差はみられない.
    2) 糖尿病性合併症 (網膜, 腎, 神経) を多く有し, 心電図RR間隔変動や残尿量から検討した自律神経障害を高頻度に有していた.
    3) 抑うつ傾向を認め, 30代から60代の各年代で, 性欲の低下が認められた.
    以上の結果から, 糖尿病性イソポテンスは, 糖尿病の合併症として位置付けられ, 原因として, 自律神経障害の関与が考えられた. また, 糖尿病性インポテンス患者では抑うつ傾向や性欲の低下が有意に認められた
  • 西村 泰行, 宮本 市郎, 大沢 謙三, 真田 陽, 山本 哲郎, 宮腰 久嗣, 能登 裕, 服部 信
    1985 年 28 巻 1 号 p. 61-63
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Urinary sulfosalicylic acid-soluble mucoprotein (U-SSMP) concentrations were measured in 67 diabetic patients with or without clinical diabetic nephropathy and their correlation with urinary N-acetyl-beta-D-glucosaminidase (NAG) activities, serum creatinine and HbA1c levels, was studied.
    The diabetic group showed a significant increase in U-SSMP levels compared to non-diabetic controls (17.27 ± 1.34 vs 6.51 ± 0.62 mg/dl, p< 0.001) The U-SSMP concentrations in diabetics without proteinuria, with intermittent proteinuria and with persistent proteinuria were 15.24 ± 1.38 (n=48), 24.20 ± 5.85 (n=10) and 20.40 ± 3.08 mg/dl (n=9), respectively. All these values were significantly higher than those in non-diabetics. In addition, diabetics with intermittent proteinuria showed significantly higher levels of U-SSMP than those without proteinuria (p< 0.05).
    A significantly positive correlation was observed between U-SSMP concentrations and urinary NAG activities (r=0.80, n=67, p< 0.001). A positive correlaion was also found between U-SSMP concentrations and HbA1c levels.
    U-SSMP concentrations were abnormally high in 20 %(10/48) of the diabetics without proteinuria whose urinary NAG activities were normal. In contrast, only 6 %(3/48) of the diabetics without proteinuria demonstrated elevated urinary NAG activities despite normal U-SSMP levels.
    These results suggest that the increased U-SSMP levels seen in diabetics might be associated with early diabetic renal involvement, although many additional studies will be needed to confirm this.
  • 1985 年 28 巻 1 号 p. 65-80
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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