近年, 糖尿病性神経障害の発症・進展にポリオール代謝系の関与が示唆され, その律速酵素であるアルドース還元酵素の阻害剤が糖尿病性神経障害の治療薬として世界的に開発されている. 本研究はわが国で新しく開発されたアルドース還元酵素阻害剤であるONO-2235の糖尿病性神経障害に対する有効性と安全性を全国10施設の共同研究により検討したものである.
対象症例は152例で内訳はONO-22351日量300mg (100mg×3回) 群67例, 600mg (200mg× 3回) 群85例であった. ONO-2235の投薬期間は原則として4週間とした.
本剤の300mg群ではしびれ感 (55.1%), 熱感 (53.8%), 立ちくらみ (58.3%) および下痢 (66.7%) に50%以上の効果を認め, 600mg群では300mg群よりも多くの項目で50%以上の改善率を示し, 用量依存性が認められた.また, 投薬期間では2週間よりも4週間の方が高い改善率が得られた. 機能検査では膝反射, アキレス腱反射, 振動覚では両群とも明確な変化はみられなかったが, 300mg群では尺骨および腓骨神経のMCVおよび腓骨神経のSCVに, 600mg群では腓骨神経のMCVおよび尺骨神経のSCVに有意な増加が認められた, 糖尿病の罹病期間, 病型, 重症度, 神経障害の重症度および罹病期間と自覚症状全般改善度, 機能試験全般改善度との層別分析では, 神経障害の中等・重症例および5.1年以上の神経障害の長い症例に対し, 300mg群と600mg群との間で用量依存性が認められた. このことは本剤600mgは神経障害の慢性例にも効果が期待できることを示唆している, 副作用は300mg群で下痢, 軟便, 心窩部痛および軽度のGOT, GPTの上昇が各々1例ずつが, 600mg群ではじん麻疹様皮疹が1例に認められたが, 用量依存性はなく本剤との因果関係は不明であった.
以上のことから, ONO-2235は糖尿病性神経障害の治療に有用であることが確認され, また同時に糖尿病性神経障害の病因としてポリオール代謝説の妥当性が裏付けられた.
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