試験紙法にて尿蛋白陰性のインスリン依存型糖尿病患者 (IDDM) 24例を対象とし, 1~2ヵ月ごとに尿中N-Acetyl-β-D Glucosaminidase (NAG), albumin (alb), β
2-microglobulin (β
2-MG), α
1-microglobulin (α
1-MG) の4因子を測定し, 同時に採血しHb-A
1cを測定した. これらに対し9ヵ月間にわたり推移を観察し, 血糖のコントロール状況による変動について比較検討した. 結果 (1) 第1回測定時のIDDMと健常者 (n=20) の尿中NAG指数はそれぞれ11.6±1.7, 3.7±0.2 (U/gCr), 尿中alb指数は2.62±0.27, 1.93±0.20 (mg/g Cr), 尿中α
1-MG指数は18.6±3.1, 4.8±0.6 (mg/g Cr)(M±S. E.) で, NAG指数, alb指数, α
1-MG指数ともにIDDMで有意に高値であった (おのおのp<0.001, p<0.001, p<0.05), 尿中β
2-MG指数はIDDM 114.0±16.3, 健常者78.0±6.2 (μg/g Cr)(M±S. E.) で両者に有意差を認めなかった. (2) Hb-A
1cと相関を認めたのは, 尿中NAG指数のみであった (r=0.66, p<0.001). (3) 9ヵ月間Hb-A
1c 7%以上であったI群, Hb-A
1c 7%以上で経過中改善したII群, Hb-A
1c 7%以下のIII群に分けると, 3群とも尿中β
2-MG指数は正常範囲内で, 尿中alb指数は軽度高値を示した. 尿中α
1-MG指数はI群で高値を示す例が多く, II, III群ではほぼ正常範囲内であった. 尿中NAG指数はI群で高値で変動しやすく, II群では改善傾向を認め, III群ではほぼ正常範囲内にとどまった. 以上より, 尿中NAG指数が血糖コントロールの指標として有用と思われた.
抄録全体を表示