糖尿病
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29 巻, 11 号
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  • 平井 淳一, 上田 幸生, 羽場 利博, 竹越 忠美
    1986 年 29 巻 11 号 p. 979-985
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の代謝異常が収縮期および拡張期心機能に与える影響について検討した.
    対象は65歳以下の糖尿病患者の内, インスリン治療群 (54±7歳, I群), 経口剤治療群 (49±7歳, Su群) および食事療法群 (47±5歳, D群) 各群とも6例, 計18例である. 治療前後の早朝空腹時に血糖 (FBS), HbA1, 血圧 (BP), 心拍数 (HR) を測定し, Weisslerの方法で補正した駆出時間 (ETi) と前駆出時間 (PEPi) およびET/PEP, 拡張期心機能を表すII音の大動脈成分から僧帽弁開放時間間隔 (IIAMVO) について観察した.
    年齢は各群間に差はないが, 罹病期間はD群, Su群, I群と次第に長くなり, D群とI群間にp<0.05にて有意差が認められた. 治療後FBS, HbA1は各群とも著明に低下したが, HR, BPは有意な変化を示さなかった. 治療後各群ともETiは延長し (I群ではp<0.01), PEPiは短縮し (su群ではp<0.05), ET/PEPは増加した (I群ではp<0.05). IIA-MVOは短縮し, 特にI群では有意差 (p<0.02) が認められた. また, 個々の症例のFBSの変化量とIIA-MVOの変化量の間には有意な相関関係 (y=0.22x-8, r=0.51, p<0.05) が得られた.
  • 糖尿病性下痢症の糞便中胆汁酸, 水酸化脂肪酸について
    中村 光男, 今村 憲市, 宮沢 正, 阿部 泰久, 牧野 勲, 武部 和夫, 菊池 弘明
    1986 年 29 巻 11 号 p. 987-993
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    6例の糖尿病性下痢症 (うち1例は膵性吸収不良を合併) の糞便量, 糞便中胆汁酸, 脂肪酸排泄量および水酸化脂肪酸量を13例の健常者, 5例の下痢対照患者, 2例のヒマシ油服用者と比較した. 1) 1日当たりの平均糞便量は糖尿病性下痢症410g/日, 下痢対照432g/日で健常者より有意 (p<0.01) に増加していた. 2) 糞便中胆汁酸排泄量は糖尿病性下痢症で1009.2mg/日と健常者 (304.9mg/日), 下痢対照 (297.8mg/日) の約3倍に増加していた. 3) 糖尿病性下痢症のみでは脂肪便にならない (膵性吸収不良では糞便中脂肪23.4g/日, 水酸化脂肪酸13.8%, 3g/日) が, 糞便中水酸化脂肪酸は健常者に比し有意 (13.4%対1.5%, 0.21g/日対0.02g/日) に増加していた. 一方, ヒマシ油投与例での水酸化脂肪酸は19.5g (30.1%), 14.9g (56.1%) と著増していた.
    以上の結果から, 糞便中水酸化脂肪酸百分率の増加は腸内細菌の上行を, 中等度胆汁酸吸収不良は回腸機能障害を示唆したが, 糖尿病性下痢症の病態はこれら物質の異常のみでは説明できなかった.
  • Beta 2-Microglobulin, Alpha 1-Microglobulin, Albuminとの対比
    木村 敬子, 小田桐 玲子, 川越 倫, 平田 幸正, 野村 武則, 明石 弘子
    1986 年 29 巻 11 号 p. 995-1000
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    試験紙法にて尿蛋白陰性のインスリン依存型糖尿病患者 (IDDM) 24例を対象とし, 1~2ヵ月ごとに尿中N-Acetyl-β-D Glucosaminidase (NAG), albumin (alb), β2-microglobulin (β2-MG), α1-microglobulin (α1-MG) の4因子を測定し, 同時に採血しHb-A1cを測定した. これらに対し9ヵ月間にわたり推移を観察し, 血糖のコントロール状況による変動について比較検討した. 結果 (1) 第1回測定時のIDDMと健常者 (n=20) の尿中NAG指数はそれぞれ11.6±1.7, 3.7±0.2 (U/gCr), 尿中alb指数は2.62±0.27, 1.93±0.20 (mg/g Cr), 尿中α1-MG指数は18.6±3.1, 4.8±0.6 (mg/g Cr)(M±S. E.) で, NAG指数, alb指数, α1-MG指数ともにIDDMで有意に高値であった (おのおのp<0.001, p<0.001, p<0.05), 尿中β2-MG指数はIDDM 114.0±16.3, 健常者78.0±6.2 (μg/g Cr)(M±S. E.) で両者に有意差を認めなかった. (2) Hb-A1cと相関を認めたのは, 尿中NAG指数のみであった (r=0.66, p<0.001). (3) 9ヵ月間Hb-A1c 7%以上であったI群, Hb-A1c 7%以上で経過中改善したII群, Hb-A1c 7%以下のIII群に分けると, 3群とも尿中β2-MG指数は正常範囲内で, 尿中alb指数は軽度高値を示した. 尿中α1-MG指数はI群で高値を示す例が多く, II, III群ではほぼ正常範囲内であった. 尿中NAG指数はI群で高値で変動しやすく, II群では改善傾向を認め, III群ではほぼ正常範囲内にとどまった. 以上より, 尿中NAG指数が血糖コントロールの指標として有用と思われた.
  • 久門 俊勝, 横澤 秀一, 丹野 尚, 大木 厚, 小林 達, 渡部 良一郎, 北風 芳春, 星 晴久, 斎藤 和子, 佐藤 徳太郎, 吉永 ...
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1001-1008
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    各種インスリン投与法における24時間にわたるin vivoでのインスリン効果を, stepwise glucose infusion testによって測定し比較検討した. 症例はCSII群10例, 中間型インスリン朝1回注射群 (以下INT群) 5例, 中間型インスリンと速効型インスリンの朝1回混注群 (以下Mix-I群) 5例, 朝に中間型インスリンと速効型インスリンを混注し, 夕に持続型インスリンと速効型インスリンを混注する1日2回注射群 (以下Mix-II群) 3例である. CSII群では追加注入後90分にmetabolic clearance rate of glucose (以下MCRG) のピークを認めた. また, 7時30分~24時のMCRG (110.4±44.0ml/kg/min) は24~7時のMCRG (16.4±8.2ml/kg/min) の6.7倍であり, MCRGは夜間に比し特に日中で大であった. Mix-II群でも日中のMCRGは114.7±10.2ml/kg/minと高値を示したが, 夜間にも21.7±10.9ml/kg/minと高値であった. CSII群では6~7時のMCRGが3~4時のMCRGの80.2%を保っており, INT群の68.4%, Mix-I群の72.0%, Mix-II群の76.6%よりも高値であった, すなわち, CSII群では夜間から早朝にかけての効果が他の投与方法に比してより良好に確保されていた. 以上の結果は, CSIIではインスリン必要量の変化に最も近い形での投与が可能であることを示している.
  • 面接法および剤数算定法による検討
    梶沼 宏, 渡辺 享子, 鈴来 和男, 羽倉 稜子, 川合 厚生, 葛谷 信貞
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1009-1015
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    長期通院糖尿病患者を対象として, 面接法と剤数算定法により経口血糖降下剤の服薬状況を調査した. 1983年282例, 1984年279例について分析を行ったが, そのうち両年ともに調査を行い得たものは183例であった. 服薬成績の評価法としては, 処方薬の95%以上, 75~94%, 50~74%, 50%未満を服薬したものをそれぞれ「優」,「良」,「可」,「不可」とした.
    (1) 服薬成績「優」と判定されたものは面接法で86.2%, 剤数算定法で74.8%あり, 患者は自己の服薬成績を過大評価する傾向がみられた. (2) 服薬率が100%を超えるものが9.6%存在した. (3) 服薬成績「可」の群の平均年齢65.7±9.9歳 (平均土標準偏差) は,「優」の群の平均年齢60.2±9.8歳より有意に高かった. (4) 男女別の服薬成績に差はなかった. (5) 朝の服薬成績が最もよく, 夕がこれに次ぎ, 昼の成績が最も不良であった. (6) 剤数がふえても, 服薬期間, 罹病期間が長期化しても服薬率の低下はみられなかった. (7) 降圧剤を併用している患者では, 降圧剤の服薬成績は経口血糖降下剤のそれより劣る傾向がみられた. (8) 空腹時血糖あるいはHbA1と服薬成績の間に相関はみられなかった. (9) 1983年と1984年の服薬成績を比較すると, 全体としては差がなかったが, 個々の症例の成績には変動がみられた.
  • 佐々木 陽, 堀内 成人, 長谷川 恭一, 上原 ます子
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1017-1023
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    初診時に蛋白尿 (-) もしくは (±) であった糖尿病患者からの持続性蛋白尿の発生の頻度ならびに, その危険因子を長期経過観察により検討した. 対象は当センター登録のII型糖尿病患者 (NIDDM) 1,196名で, 昭和59年末まで平均10年間追跡した.
    1) 持続性蛋白尿の発生をみたのは193例 (16.1%) で, 男に多く, 糖尿病の発症からの経過年数は平均11.1±6.9年であった. 持続性蛋白尿の発生したものからは66例 (34.2%) が観察期間中に死亡し, その他のものからの死亡174例 (17.6%) に比して著しく高率であった. また持続性蛋白尿出現から死亡までの期間は平均3.0年で, 生命予後が不良であった.
    2) 持続性蛋白尿の平均年間発生率と各種危険因子との関連性を検討すると, 初診年齢, 罹病期間, 収縮期血圧, 空腹時血糖値, 糖尿病性網膜症, 治療方法と有意の関係があり, また初診時尿蛋白 (±) のものは (-) のものに比して明らかに高い発生率がみられた.
    3) 持続性蛋白尿の発生の有無別に初診時における各種因子を比較すると, 持続性蛋白尿発生群では罹病期間が長く, 収縮期血圧も高く, 糖尿病性網膜症を合併するものが多かった. また, 空腹時血糖値も高く, 経口剤およびインスリン治療のものが相対的に多く認められた.
  • 衛星細胞の膨化変性を中心にして
    山岡 孝, 斎藤 基一郎, 川井 紘一, 葛谷 信明, 山下 亀次郎
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1025-1033
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者3症例の剖検時に採取した腹腔神経節を, ヘマトキシリン・エオジン染色後の光学顕微鏡所見により検討した. 本研究において, 糖尿病による衛星細胞障害の特徴的初期変化と思われる好酸性硝子様物質の蓄積と胞体の著しい膨化が認められた. 次いで, 衛星細胞の膨化が次第に進行するに伴い, 核の崩壊像や隣接する神経節細胞への圧迫像が認められた. 一方, 神経節細胞では, 圧迫による胞体の扁平化, Nissl小体の消失・配列の変化, 樹状突起の膨反が認められた. 膨化した衛星細胞と神経節細胞は, 最終的には崩壊・消失し, 類円形の空胞を残した. この衛星細胞の一連の病理学的変化は, 神経節細胞のそれに先行して出現することから, 衛星細胞の障害が腹腔内交感神経節後ニューロンの糖尿病性障害の成因に深く関与している可能性が示唆された.
  • 小野 百合
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1035-1045
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における脳幹機能として聴覚脳幹誘発電位 (ABR) を施行し, 従来測定されている各波潜時, interpeak latencyの他に刺激音圧の変化に伴うABR潜時の変化を測定, 解析を行い, また合併症, 罹病期間との関係も合わせて検討した. 15~54歳までの糖尿病患者53名を対象とし, 年齢, 性別をほぼ一致させた健常者35名を対照とした. ABRの記録にはDISA system 1500を用い, ホワイトクリック音を10Hzの頻度で両側耳から与え, 頭頂, 両乳様突起部より脳波を導出し, 解析時間10msecで1000~2000回平均加算を行った. 音圧は60dBより10dB間隔で120dBまでを用いた.
    1) 糖尿病患者は低音圧刺激で正常群に比べ各波の分離が悪く, より多くの加算を要した.
    2) V波潜時は120dB~110dBの高音圧刺激では正常群および糖尿病群の2群間に差を認めなかったが100dB~60dBの低音圧刺激では糖尿病群は正常群に比し急速にその潜時の延長が認められた.
    3) 刺激音圧60dBと120dBにおけるV波潜時の差は糖尿病群2.00±0.41msec, 正常群1.52±0.29msecと明らかに糖尿病群で延長していた. I波, III波潜時においても同様の傾向が認められた.
    4) 刺激音圧60dBと120dBにおけるV波潜時の差は糖尿病群のうち末梢神経伝導速度低下群, 心電図上R-R間隔起立時30: 15比<1.03の群, 罹病年数10年以上の群では有意に延長し, 随時尿にて蛋白尿 (+) 群, 網膜症 (+) 群, 血糖コントロール不良群 (HbA1>12%) では延長傾向が認められた.
    5) 刺激音圧60dBと120dBにおけるV波潜時の差は末梢神経伝導速度正常群, 罹病年数5年以下の群, 随時尿にて蛋白尿 (-) 群, 網膜症 (-) 群, 血糖コントロール良好群においても正常群に比し有意に延長していた. 以上より, 刺激音圧によるABR潜時の変化を計測することはより鋭敏にまた正確に中枢神経障害の検出を可能にすると思われた.
  • 石原 雅樹, 山田 隆司, 吉沢 国雄
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1047-1053
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病発見後全く未治療で受診し, その後継続して治療しえたII型糖尿病患者388例を用い, 初診時の臨床像とその後の網膜症の発症との関係について検討した.
    初診時の網膜症有病率は15.2%(59/388) で, すでに網膜症をおこしている症例はない者に比べ発見後の糖尿病放置年数 (3.63±3.27年vs 1.64±3.01, p<0.001), 血糖値 (50g糖負荷による0分, 60分, 120分値の合計: 951±234mg/dl vs 822±262, p<0.001) に有意差がみられた. 放置年数, 血糖値とその後の網膜症の発症率との関係については, 初診時網膜症未発症の者について生命表分析, Gehantestを行うと, 初診時に血糖値の高かった者, 放置年数の長かった者はそうでない者に比べ治療経過とともに網膜症の発症率が有意に高かった. 一方, 初診時体重についてはその後の経過中を含め網膜症の発症した者で, しない者に比べ有意に体重が少ない傾向がみられた (%標準体重, 104±17.3% vs 108±15.8, p<0.05). 特に, 網膜症は初診時に体重が標準体重以下で, 治療開始とともに体重増加傾向のみられた者に高率に発症していた. これらの因子に対して, 健康診断などで無症状の時期に糖尿病のみつかった患者と, 口渇, 多飲, 多尿などの症状を呈して受診した者と比較した場合, 網膜症の発症率に有意な差はみられなかった.
    以上の結果より, 未治療の糖尿病の患者で初診時に血糖が高く, 放置年数が長く, 肥満のない者は網膜症の発症に関して高リスクであり, その後の治療についてより注意が必要であるといえる.
  • 大屋 敬一郎, 佐藤 譲, 新谷 茂樹, 片岡 茂樹, 豊田 隆謙, 後藤 由夫, 鈴木 隆二, 熊谷 勝男
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1055-1062
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン依存性糖尿病 (IDDM) はその病因に自己免疫反応が関与しているといわれている. IDDMのモデル動物であるNODマウスには細胞性免疫能の低下がみられる, 一方ラ島B細胞に対する自己免疫反応の形態学的証拠といわれるinsulitisが存在する. われわれはNODマウスの細胞性免疫異常を免疫修飾剤によって是正し, IDDM発症の予防を試みた。
    雌NODマウスにbiological response modifier (BRM) であるインターフェロン (IFN), インターロイキン2 (IL-2), 溶連菌製剤 (OK-432) を投与し, 糖尿病の発症が抑えられるかを検討した. 生食投与群では10~14週齢から尿糖陽性マウスが出現し, 24週齢までに約85%が糖尿病を発症した. これに対して, IFNγ, IL-2投与群は糖尿病発症時期が遅延した. さらにOK-432投与群では完全に発症が抑制され, ラ島への単核細胞浸潤は著明に抑制されていた. NODマウスへのBRMの投与は細胞性免疫能の指標としてのnatural killer (NK) 活性やcytotoxic T lumphocyte (CTL) 活性を増強させ, 対照のICRマウスの活性にまで回復させた.
    BRM投与によってNODマウスのラ島炎が抑制され, 糖尿病発症が抑えられたことは, NODマウスの細胞性免疫不全がラ島炎の発生に影響していることを示唆し, 免疫修飾剤がIDDMの原因療法あるいは予防薬となる可能性を示した.
  • 小田 秀治, 能登 裕, 森丘 里香, 宮本 市郎, 西村 泰行, 真田 陽, 宮腰 久嗣, 服部 信
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1063-1069
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1日のインスリン必要量が200単位を超えるインスリン抵抗性を示した肝硬変合併糖尿病の1例を経験し, その抵抗性の機序を検討する上で興味ある知見を得たので報告する. 症例は42歳男性. 20歳頃より大量の飲酒歴があり, アルコール性肝障害でこれまで4度 (33歳, 35歳, 37歳, 39歳) の入・退院を繰り返している, 37歳の時に糖負荷試験の成績から初めて糖尿病と診断されたが, 血糖は食事療法ないし経口血糖降下剤にて良好にコントロールされていた. 今回, アルコール性肝硬変の代償不全を契機に入院となり, 高血糖が持続するためインスリン療法が開始された. しかし, 肝硬変の代償不全が改善した後も血糖コントロールは不良で, 一時期200単位を超える大量のインスリンを必要とした. 患者血中のインスリン抗体は陰性. インスリン拮抗ホルモンのうちグルカゴンと成長ホルモンの基礎値の上昇を認めたが, 通常の肝硬変でも認められる程度の増加であった, インスリン抵抗性の極期に一致して, 一過性の血中インスリン分解活性の上昇が認められた. 赤血球のインスリンレセプターへのインスリン結合能はほぼ正常, 抗インスリンレセプター抗体は陰性であった. euglycemic clamp studyから得られたインスリンの用量一反応曲線では著明な反応性 (responsiveness) の低下が認められ, 同時にインスリンのmetabolic clearance rate (MCR) の上昇が認められた.
    以上より, 本例におけるインスリン抵抗性の主因はpostreceptorの障害と考えられたが, これに加えて組織のインスリン分解ないしはクリアランスの亢進が抵抗性の成因に関連している可能性が考えられた.
  • 勝又 一夫, 勝又 義直
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1071-1073
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Gliclazideは第三世代の血糖降下性Su剤として広く使用されている. 血糖降下性Su剤はtolbutamide, glibenclamideなど肝mitochondriaに対してin vitroで脱共役作用を有することが知られている. しかしgliclazideと脱共役作用との関連は知られていない. そこで本研究でgliclazideの脱共役作用について検討を加えた.
  • 田中 克明, 井上 修二, 藤井 隆人, 大川 伸一, 高邑 裕太郎
    1986 年 29 巻 11 号 p. 1075-1077
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Many reports have shown that vagal neural efferent pathways affect the secrtion of insulin and glucagon. However, afferent pathways that might affect this system have received little attention. The present study was carried out to examine the role of the hepatic branch of the vagus nerve, which is composed mostly of afferent fibers in the rat and is a major afferent pathway between the liver and the medulla, in the secretion of insulin and glucagon after the intraperitoneal injection of arginine (1g/kg body weight) in rats. Measurements were made one week after section of this branch. Intraperitoneal arginine enhanced both plasma insulin and glucagon concentrations more in hepatic-vagotomized than in sham-vagotomized rats.
    The results suggest that inhibition of the secretion of insulin and glucagon after arginine stimulation is mediated by the hepatic branch of the vagus nerve. The existence of “sensors” in the liver for arginine is proposed as an explanation for the inhibition of the secretion of insulin and glucagon by the hepatic vagus nerve.
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