糖尿病
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30 巻, 6 号
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  • 茂久田 修
    1987 年 30 巻 6 号 p. 489-495
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    組織におけるインスリン分解とブドウ糖代謝に及ぼすインスリン作用との関連性を検討するため, 種々の濃度のインスリンを含む灌流液でラット肝, 腎, 心, 骨格筋 (後肢) 摘出標本を灌流し, インスリンクリアランス, ブドウ糖の取り込み, 放出および酸化を観察した. 灌流液には10mMブドウ糖, 2%ウシ血清アルブミンを含むKrcbs-Ringer重炭酸緩衝液 (pH7.4) を用い, 各臓器をヒトの生理的血流量の3倍の灌流速度 (肝, 腎, 心, 骨格筋それぞれ1.8, 12.6, 2.5, 0.08ml/min/g) で60分間再循環灌流した. 各臓器はいずれも添加インスリン濃度に正比例してインスリンを除去し, 肝, 腎, 心, 骨格筋のインスリンクリアランスは157, 1063,143および6.3μl/min/gであった. 心および骨格筋におけるブドウ糖の取り込みと酸化はインスリン添加により増加し, 添加インスリン濃度2000μU/mlまで用量反応的に増加した. 肝でのブドウ糖出納に及ぼすインスリン作用は, 添加インスリン濃度100μU/mlで最大に達した. 腎でのブドウ糖代謝にはインスリン添加による影響がほとんど認められなかった. 以上より, 糖代謝に及ぼすインスリンの濃度効果には各臓器により差異が認められたが, インスリン分解動態には各臓器による差異を認めず, また肝および腎がインスリン分解に大きい役割を果たしている1つの要因として臓器血流量の大きいことが関与していると考えられた.
  • 清水 弘行, 下村 洋之助, 佐藤 則之, 高橋 正樹, 上原 豊, 大島 喜八, 諏訪 邦彦, 小林 功, 小林 節雄
    1987 年 30 巻 6 号 p. 497-502
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン投与時刻の相違がいかなる影響を食行動や生体内代謝におよぼすのであろうか. 今回私たちはストレプトゾトシン (STZ) 糖尿病ラットを用いて検討を加えた.
    方法: STZ60mg/kg腹腔内投与により作成した糖尿病 (DM) 群と対照 (Cont.) 群に対してNPHインスリン8単位/日または同量の生食水を投与し, 7日間の体重, 摂食行動や脂質代謝変化について検討した.
    結果: 1) 体重;NPH投与によりDM群の体重は増加し, 特にこの増加はL-NPH群に顕著であった. 2) 摂食量;糖尿病状態で増加した摂食量は, L-NPH群においてのみ有意 (P<0.05) な減少を認めた. 3) 血糖値;血糖値をDM生食投与群と比較した場合, DINPH群はインスリン投与12時間後23.00%まで低下したが, 24時間後に63.49%まで. 上昇した.それに反し, L-NPH群は, 12時間後に12.00%まで低下したが, 24時問後に77.27%まで上昇した. 4) 脂肪織重量;インスリン投与により各脂肪織重量は増加し, LNPH群においてのみ正常レベルまで復した.5) 肝総脂質含量;インスリン投与によりCont. 群レベルにまで減少を示し, 特にL-NPH群はD-NPH群に対して有意 (P<0.05) な減少を認めた.
    本研究を通してインスリン投字時刻の相違により, 生体が糖尿病状態から回復してゆく週程に差異の存在することが明らかとなった. 今後臨床的意義についてもさらに検討をすすめてゆくべき重要な課題と考えられた.
  • 高血糖および低血糖状態における検討
    宮本 泰文
    1987 年 30 巻 6 号 p. 503-510
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    高血糖および低血糖ラットにみられる神経障害の神経組織各部位でのvulnerability (易傷害性) とmyo-inositol (MI) 代謝異常の関連性につき検討を行った.
    (1) 高血L糖状態では, 大脳皮質, 小脳皮質でMI含量の変動はなかったが, 脊髄, 坐骨神経で有意な減少を認めた.さらにneurotransmitterとしてMI代謝を促進するthyrotropin-releasing hormone (TRH) を負荷したが, 有意な変化をもたらさなかった.
    (2) 低血糖状態では, 大脳皮質, 尾状核+視床, 脳幹, 脊髄でMI含量の有意な減少を認めたが, 小脳皮質, 脳神経, 坐骨神経では変動しなかった-さらに中枢でMI代謝を促進しているコリン作動性神経をブロックするアトロピンを投与したところ, MIの減少は有意に阻止された.
    (3) MIのglucoseからの合成を阻害するリチウムの投与により, 大脳皮質, 脊髄でMI含量の有意な減少を認めたが, 小脳皮質, 坐骨神経では変動しなかった.しかし, MI代謝を促進させるTRHを負荷したところ, 小脳皮質ではMI含量の有意な減少を認めた.
    以上の結果より, 中枢ではコリン作動性神経が, またコリン作動性神経に乏しい小脳では外部より投与したTRHがMI代謝を促進しており, glucoseの減少やリチウム投与によりMI補充が低下するとMI含量が減少すると考えられた.末梢神経ではMIは高血糖のみの影響を受け, MI合成とは関連がないことより外部よりの取り込みに依存していることが一層支持され, また脊髄では両者の関与が示唆された.これらよりMI代謝の差異が高血糖および低血糖状態における神経障害の病態に関与している可能性があると考えられた.
  • とくにFischer比の変動から
    加納 隆, 越野 陽介
    1987 年 30 巻 6 号 p. 511-517
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン非鮪性糖尿病 (NIDDM) 31例を対象として早鯉腹時における藤灘アミノ酸を測定し, 空腹時血糖 (FPG), HbA1c, コントロールの良否, 合併症の有無と対比することにより, その臨床的有用性を検討した. その結果, NIDDMでは健常者に比し分枝鎖アミノ酸 (BCAA) の有意な増加が認められ, さらにBCAAと芳香族アミノ酸 (AAA) のモル比 (Fischer比) はFPGおよびHbA1cと有意な正相関を示した. また, Fischer比はコントロール良好群に比し不良群では有意な高値を示した. さらに, 治療により良好なコントロールにするとFischer比はFPGおよびHbA1cの改善に並行して正常化した. また, Fischcr比は合併症とくに腎症を有する症例では非合併例に比し有意な高値を示した. 以上より, Fischcr比は蛋白・アミノ酸代謝面からのNIDDMのコントロールの良否を良好に反映する指標になり得ると考えられ, 日常臨床上, 血糖およびHbA1cと併用することにより, より厳密なNIDDMのコントロールが可能になり, これにより合併症の発生あるいは進展が回避でき得ると考えられた.
  • 鬼頭 柳三, 堀田 饒, 角田 博信, 木村 雅夫, 深沢 英雄, 洪 尚樹, 榊原 文彦, 中村 二郎, 松前 裕巳, 坂本 信夫
    1987 年 30 巻 6 号 p. 519-527
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Insulnとglucagon両ペプチドホルモンの糖尿病性ヶトアシドーシスに及ぼす影響の大きいことが強調され, それらの肝ケトン体産生に果たす役割の重要性が指摘されているものの, glucagonの作用メカニズムはいまだ確立されていない. そこで, 肝ケトン体産生に果たすglucagonの作用がcyclic AMPを介するものか否かを明らかにする目的で, ラット摘出肝灌流実験手技を用い検討を加えてみた.
    飽食正常ラットを用い, oleate, octanoate, glucagon, dibutyfyl cyclic AMPを適宜組み合わせ, 既報通りの実験手技にて肝灌流実験を行った. Glucagonはoleateで増加した肝ヶトン体産生を相乗的に促進したが, octanoateでは促進効果を発揮しなかった. Dibutyryl cyclic AMPはglucagonとは異なりolcate, ioctanoateいずれに対してもケトン体産生を顕著に促進した. Emeriamineはoleateを前駆物質とする肝ケトン体産生を強く抑制したが, octanoateを前駆物質とする場合には抑制しなかつた.
    以上より, 肝ケトン体産生におけるglucagonの作用点がCarnitinea CyltransferaseIを介する系に存在し, かつ, このホルモン作用が必ずしもcyclicAMPを介した作用ではないかもしれないこと, そしてdibutyryl cyclic AMPの脂肪酸存在下の肝ケトン体産生促進メカニズムは, mitochondria膜のcamitineacyhransferaseI以降の代謝過程に存在するかもしれないことが示唆された.
  • 北村 嘉章, 前田 裕一郎, 秦 文彦, 西本 茂樹, 松本 真一郎, 畑中 裕司, 老籾 宗忠, 馬場 茂明, 伊賀 俊行, 井上 正則
    1987 年 30 巻 6 号 p. 529-533
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    蛋白に糖が非酵素的, 非特異的に結合して生じるnonenzymatic glycationは生体の種々の組織蛋白にも生じ, 糖尿病性合併症の成因との関係でも注目されている. 今回糖尿病性白内障とnonenzymaticglycationとの関連について検討するため, 蛋白のlysine残基のε アミノ基にglucoseの結合するnonenzymaticglycationを特異的に測定するfurosinc測定法を用いて水晶体蛋白のnonenzymatic glycationを測定した. 水晶体摘出術で得られた老人性白内障22例, 糖尿病性自内障12例の水晶体を, 核, 皮質, 被膜の三成分に分離し, 酸性加水分解後, 高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した. 水晶体蛋白のnonenzymaticglycationはfurosine値 (furosineのpeak面積/tyrosincのpeak面積×100%) で表現した. 老人性白内障でのfurosine値は核0.7±0.4%(mean±S. D.), 皮質0.9±0.4%, 被膜1.4±0.9%であり, 糖尿病性白内障では核1.9±1.0%(mean±S. D.), 皮質2.4±1.1%, 被膜3.5±1.3%と両群ともに核, 皮質, 被膜の順にfurosine位は上昇した.さらに, いずれの成分においても糖尿病性白内障のfurosine値は老人性白内障に比べて高値を示した. 一方, 老人性白内障の水晶体のfurosinc値とHbA1値との間には有意の相関がみられた. これらのことより水晶体蛋白のnoncnzymatic glycationは白内障の成因に関学し, 糖尿病はさらにそれを促進させるものと考えられた.
  • 微小針型ブドウ糖センサの応用
    鮴谷 佳和, 斎藤 雄二, 上田 信行, 星山 俊潤, 七里 元亮, 鎌田 武信
    1987 年 30 巻 6 号 p. 535-541
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存型糖尿病患者におけるSU剤 (glibenclamide) 治療時の血糖日内変動の日差変動を追求, SU剤治療時のコントロール目標に資せんとし, 6名の新規治療患者と6名の既治療患者の計12名に対し, 微小針型ブドウ糖センサを用いた3日間連続血糖日内変動のモニタを行った. その結果, SU剤治療下のインスリン非依存型糖尿病患者における血糖日内変動の日差変動は極めて小であった. さらに, SU剤療法にて食後血糖値200mg/dl以下の厳格な血糖コントロールを得るには, 空腹時血糖値を120mg/dl以下とする必要があることを示唆しえた.
  • 筒井 理裕, 小沼 富男, 落合 滋, 朴 明俊, 梁田 敦子, 今村 憲市, 上原 修, 武部 和夫
    1987 年 30 巻 6 号 p. 543-548
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    膵性糖尿病患者8名 (P群) の血中アポ蛋白濃度について一次性糖尿病患者23名 (D群) および健常成人13名 (C群) と比較検討した. アポ蛋白BはP群 (80±10mg/dl, mean±SD) がD群 (107±28mg/dl) と比べて有意に低値であった. アポ蛋白Bとアポ蛋白AI, あるいはAIIとの比であらわしたアポ蛋白動脈硬化指数はP群 (0.68±0.22, 2.63±0.87) がD群 (0.98±0.44, 3.82±1.43) と比べて低値であり, C群とは近似していた. これらは膵性糖尿病が一次性糖尿病と比べて血中アポ蛋白の面で抗動脈硬化的な病態にあることを示唆する成績であり, 膵性糖尿病に動脈硬化性病変の合併が少ないとする疫学的成績を裏付け得た. 低比重リポ蛋自コレステロールとアポ蛋白Bとの間にはいずれの群においても有意な正の相関関係がみられ, また両者の比には3群間で差がみられなかった. アポ蛋白CII, CIII, EにはP群とD群との間で差がみられなかった.
  • 佐藤 光代, 橋本 文代, 大星 千鶴子, 弘田 明成, 大島 一洋, 白川 悦久, 島 健二
    1987 年 30 巻 6 号 p. 549-555
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    抗インスリン抗体吸着ビーズを用いた簡便で定量性のあるインスリン抗体価測定法を開発し, インスリン治療中のIDDMおよびNIDDM50例に応用した. 患者のインスリン使用年数は平均5.8年, インスリン使用量は平均46.4U/dayであった. そのうち, 9例は治療途時ウシ・ブタインスリンよりヒトインスリンに変更した.
    ビーズ法は, 再現性および総インスリン濃度との相関はPEG法に比べてよく, Scatchard analysisによるhigh affinityのbinding capacityともよく相関し, 定量性がえられた.
    糖尿病患者のインスリン抗体価は, 7例が陰性, 他は14.1~10335.6μUEq/mlの範囲に分布した. ヒトインスリン治療へ変更した例では, 変更前に比べ変更後のインスリン抗体価は低下した.
  • 杉 謙一, 中野 昌弘, 仲村 吉弘, 徳永 剛
    1987 年 30 巻 6 号 p. 557-560
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性壊疽症例の分析を行った.1970年から1985年の16年間に4,131例の糖尿病症例が入院したが, うち47例に糖尿病性壊疽を認め1.14%の頻度であった.糖尿病壊疽症例は罹病期間が長くコントロール不良の例が多く, 他の糖尿病性合併症として神経障害, 網膜症, 腎症を高頻度に有していた.保存的療法で85%が治癒したが他の症例は切断を含む外科的処置を必要とした.糖尿病性壊疽を防ぐためには糖尿病のユントロールが大切であることが示された.
  • 急性運動負荷後のインスリン感受性の変化
    山之内 国男, 佐藤 祐造, 押田 芳治, 石黒 哲也, 坂本 信夫
    1987 年 30 巻 6 号 p. 561-566
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Euglyccmic insulin cramp法を用いた長期トレーニング効果の判定に日常トレーニング中の1回の運動が及ぼす影響を調べる目的で, 急性運動効果によるインスリン感受性の経時的変化について検討を加えた.対象は19歳から20歳の健康な男子11名であり, この中, 6名にトレッドミルによる最大酸素摂取量 (VO2max) 40~50%の中等度運動負荷を加えた (M群).また, 他の5名には自転車エルゴメータによる VO2max 60~70%の強度運動負荷を加えた (S群).両群とも120分間の運動負荷前, 直後, 24時間後, 72時間後にeuglycemic insulin cramp法を施行した.M群におけるグルコース代謝量はそれぞれ5.53±0.59, 5.71±0.47, 6.61±0.60, 5.59±;0.64mg/kg/minと24時間後で増加傾向を認めるにとどまった.一方, S群ではそれぞれ, 6.55±0.61, 6.02±0.36, 8.21±0.94, 8.32±0.88mg/kg/minと24時間後, 72時間後に有意な増加を認めた (P<0.05).以上の結果より, 運動強度がVO2max 60~70%120分間の運動では, インスリン感受性の増加が少なくとも3日以上続くが, 日常運動療法として処方されるVO2max40~50%の運動では, 急性効果としてインスリン感受性に有意な変化を及ぼさないと思われた.しかしながら, 24時間後の増加傾向を考慮すると, 長期トレーニング効果を評価する際, euglycemic insulin cramp施行2日前よりトレーニングを中止した方がよいと考えられた.
  • 尾山 秀樹, 米田 正也, 安達 典子, 松木 道裕, 西田 聖幸, 堀野 正治
    1987 年 30 巻 6 号 p. 567-569
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Although the absolute retention time is a fundamental value in HPLC, there is usually some small variation in every chromatogram, even though the operating conditions are the same. For this reason, the most widespread method used today is the internal standard methd, in which the retention time of a solute is measured relative to that of a reference solute (internal standard). An internal standard added in the sample is also useful as a visible reference during the HPLC run. Such situat.ons often exist in clinical studies such as those of abnormal insulinemia or hyperproinsu linemia, in which the sample concentrations are usually too low to be detected by spectrophotometry.
    We prepared three peptide fragments of cytochrome-C by trypsin or protease digestion for use as internal standards for HPLC of human insulin, proinsulin and C-peptide. Under our experimental conditions, coefficients of variability (C.V.) of the absolte retention time were 1.46% for insulin, 1.36% for proinsulin and 0.91% for C-peptide, while the C.V. values of the relaive retention time were much lower: 0.84%, 0.56% and 0.65%, respectively. These results suggest the usefulness of the internal stadard method for HPLC of these hormones.
  • 1987 年 30 巻 6 号 p. 571-578
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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