糖尿病
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30 巻, 7 号
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  • 長尾 宗彦, 坂本 長逸, 的崎 尚, 馬場 茂明
    1987 年 30 巻 7 号 p. 581-586
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    われわれは, dithiothrcitol (DTT) によるrat肝および大脳皮質細胞膜インスリン受容体S-S結合の還元が, 受容体の機能とsubunit構造に及ぼす影響について検討した.細胞膜を各種濃度DTTで処理すると, 膜への125I-インスリン結合は, DTT濃度依存性に増加した.最大結合は, 肝および大脳皮質細胞膜をおのおの3, 30mM DTTで処理したときに認め, これら膜へのインスリン結合をScatchard解析すると, 結合の増加は, いわゆる高親和性部位の結合親和性の増加によるものであった.disuccinimidylsubcratcを用いた125I-インスリンと受容体のcross-linkingののち, 電気泳動にてこれら膜蛋白を解析すると, α β, α subunitと思われる膜蛋白の標識強度は, 最大結合を認めたDTT濃度で最大であった.さらに, 30mM DTTで部分還元した肝, 大脳皮質細胞膜のα subunitと思われる120,110kDaに標識された膜蛋白は, cross-linking後, DTT存在下で電気泳動すると, おのおの130,120kDaへと移動した。また, 部分還元したαsubunit膜蛋白のみを還元剤存在下で二次元電気泳動すると, 分子サイズがさらに10kDa増加することから, αsubunit内S-S結合の存在が示唆された.以上の成績より, 部分還元したインスリン受容体が, 非処理受容体に比して親和性が増加し, αsubunitには, subunit内S-S結合が存在して, インスリン結合に関与する可能性が示唆された.
  • 川合 厚生, 島田 典生, 飯塚 孝, 益子 茂, 原 陽子, 赤沼 安夫
    1987 年 30 巻 7 号 p. 587-593
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性合併症の進展に, 残存B細胞機能がいかに関与lているかを検討する目的で, コントロール是正のため入院した糖尿病患者188名を無作為に選出l, 治療法とは無関係に尿中CPR排泄量別に, 低下 (30μg/日未満), 中間 (30以上60μg/日未満) および正常 (60以上90μg/日未満) 群の3群に分け, 各群における糖尿病性細小血管症および大血管症の出現率を観察した.罹病期間10年未満の患者では, 尿CPR排泄量と合併症出現率との間に相関は認められなかった.これに対し, 罹病10年以上の患者では, 尿CPR排泄量が30μg/日以下の者は, それ以上の2群に比して腎症 (蛋白尿), 網膜症 (Scott1度以上) および神経症 (アキレス腱反射消失) とも揃って有意に高率に出現した.また, 罹病期間の長短で比較すると, 尿CPR低下群においては, 3症とも揃って, 10年以上の罹病者が10年未満の者に比して出現率が有意に高かった.同様の有意差は尿CPR中間群においても, 網膜症と神経症の出現率において認められた.しかし, 糖尿病性大血管症 (レ線上大動脈石灰化像および虚血性心電図変化) の合併率には, 尿CPR排泄量に関連した差異は認められなかった.以上の成績より, 糖尿病性細小血管症の進展には, 罹病期間の延長とともに残存B細胞機能の低下が関与していることが推定される.
  • 光凝固療法の有用であった症例の検討
    佐中 真由実, 大森 安恵, 清水 明実, 東 桂子, 秋久 理真, 小浜 智子, 本田 正志, 平田 幸正, 亀山 和子, 福田 雅俊
    1987 年 30 巻 7 号 p. 595-603
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    最近, 罹病期間が長く, 糖尿病件網膜症を合併した妊婦が増加し, とくに妊娠時に増殖性網膜症を認め, 妊娠の継続が問題となる症例がふえてきている.
    私たちは, 1964年 (昭和39年) 2月から1984年 (昭和59年) 12月までに, 糖尿病妊婦166分娩例を治療, 管理した.妊娠中の網膜症の合併は89分娩例 (53.6%) に認められ, 増殖性網膜症11分娩例 (6.6%) で, 他はすべて (47.0%) 単純性網膜症であった.残り77分娩例 (46.4%) には網膜症を認めなかった.
    妊娠中に光凝固療法を行った者は6分娩例であり, 妊娠してから紹介され初診しprepregnancy管理をうけていない者がほとんどであった.血糖のコントロールと同時に光凝固療法を行い, 網膜症の進行をくいとめることができた.5例では, 網膜症は分娩後さらに改善した.
    妊娠前に, 増殖性網膜症に対して光凝固療法を行った者は4分娩例いた.これらは妊娠2~3年前に光凝固療法を行っており, 網膜症が改善したため妊娠が許可された.妊娠中網膜症が悪化することなく, 無事分娩を終了し, 現在も網膜症は安定している.
    妊娠中の増悪した網膜症に対して, 治療的流産を行う前に, 血糖コントロールと同時にまず光凝固療法をこころみるべきである, また網膜症の面からも, prepregnancy管理, 計画妊娠の重要性が強調される.
  • Euglycemic Clamp法による検討
    宮本 市郎, 能登 裕, 森丘 里香, 番度 行弘, 西村 泰行, 真田 陽, 宮腰 久嗣, 服部 信
    1987 年 30 巻 7 号 p. 605-611
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肝硬変における耐糖能異常の成因を明らかにする目的で, 肝硬変患者6名および健常対照者7名にeuglycemic clamp studyを行い, インスリン感受性について比較検討した.インスリン感受性の指標として, ブドウ糖利用率 (M), ブドウ糖のmetabolic clearance rate (MCRG), インスリン感受性指数 (M/I×100) を用いた.健常対照者に比し, 肝硬変患者のM (5.77±0.72vs.0.57±125mg/kg/min, p<0.01), MCRG (6.56±0.84vs.13.05±1.42ml/kg/min, p<0.005), M/1×100 (1.76±0.43vs.3.95±0.47, p<0.01) はいずれも有意に低値であった.また, 肝硬変患者におけるブドウ糖利用率 (M) と759経ロブドウ糖負荷試験のざBG (r=-0.85, p<0.05) および空腹時1血清インスリン値 (r=-0.91, p<0.05) との間には, 強い負の相関関係が認められた.インスリランのmetabolic clearance rateは健常対照者で15.5±1.7ml/kg/min, 肝硬変患者では12.5±2.2ml/kg/minであり, 両群間に有意差を認めなかった.以上より, 肝硬変患者ではインスリン感受性が低下していることがeuglycemic clamp法により確認され, 耐糖能異常の成因の1つとして重要な役割を演じていると考えられた.また, このインスリン感受性低下は, 肝硬変にしばしば認められる高インスリン血症と関連している可能性が示唆された.
  • Human Ultralente InsulinとHuman Actrapid Insulin (ペンシステム) を用いて
    西村 治男, 葛谷 英嗣, 吉政 康直, 山田 和範, 井田 達也, 筧 隆子, 菊池 清, 小出 操子, 赤沢 好温, 井村 裕夫
    1987 年 30 巻 7 号 p. 613-618
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    従来のインスリン投与法でコントロールが不良であった糖尿病患者10名にhuman ultralente insulin (U-HM) とペンシステムによるhuman actrapid insulin (A1HM) の頻回注射療法を行った.
    1) 治療法変更前後で空腹時血糖 (211±27v.s.125土12mg/dl, p<0.01) およびHemoglobin A1 (12.5±0.4v.s.10.6土0.4%, p<0.01) の有意な改善がみられた.
    2) 血糖の日内変動も改善した.
    3) 血.中遊離インスリン濃度の日内変動では, 食後の上昇が大きくなり, より生理的パターンに近くなった.
    4) 空腹時遊離インスリン濃度は前後で有意差がみられなかったが, 個々の症例でみると, 空腹時遊離インスリン濃度の上昇が空腹時血糖の改善をもたらした症例がみとめられた.
    5) U-HMの投与量と夜間の遊離インスリン濃度との間には有意な相関 (r=0.793, p<0.05) がみられた.さらにその投与量は人工膵島から得られた夜間の基礎注入量と正の相関を示した (r=0.782, p<0.05).
    以.上のように, ペンシステム (A-HMとNovopen (R)) により食後の追加インスリン必要量を簡便に補い, さらにU-HMによって夜間の基礎インスリン必要量を的確に投与することが可能となった.両者により血中インスリン濃度をより生理的パターンに近くすることが可能となり, 血糖を良好にコントロールすることができた.
  • 脇坂 正則, 布井 清秀, 和田 美也, 岩瀬 正典, 牧 之博, 菊池 正統, 奥田 誠也, 藤島 正敏
    1987 年 30 巻 7 号 p. 619-624
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性ケトアシドーシスで突然発症し, エラスターゼ1が高値を示したI型糖尿病の2例を報告する.
    症例1は22歳の女性で, 出産13週前の経口ブドウ糖負荷試験は正常型でインスリン反応も正常であった.分娩予定日, 胎児死亡が確認され誘導分娩が行われたが, その直後より意識レベルが低下し当科に入院となった.症例2は20歳の男性で, 1986年1月15日感冒様症状につづき吐気・嘔吐が出現したため, 当科を受診した.症例1, 2ともに糖尿性ケトアシドーシスの診断で, 輸液, インスリン投与により症状は改善した.内因性インスリン分泌能も欠如しており, 発症時の血糖は著明な高値を示したが, HbA1はそれぞれ, 6.2%, 7.8%と正常範囲にあり, 突然に発症した1型糖尿病と考えられた.エラスターゼ1はそれぞれ, 2500, 1800ng/dlと高値であったが, アミラーゼ, リパ-ゼ, 尿中アミラーゼは正常であった.インスリン治療後アミラーゼは一過性にやや上昇したがほぼ正常範囲内の動きであった.一方エラスターゼ1は徐々に低下した.ケトーシスまたはケトアシドーシスで入院し, エラスターゼ1を測定し得た他の3例との比較より, 今回の症例でエラスタービ1が上昇した原因として, ラ氏島周囲の外分泌腺細胞への急性ラ氏島炎の炎症波及が考えられた.
  • 1987 年 30 巻 7 号 p. 625-663
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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