著者らは, 単一臍帯動脈 (SUA) の児は様々な心奇形を合併し死の転帰をたどることを既に報告した.最近, 超音波断層法により出生前にSUAを診断しえた1例を経験したので報告する.
母親は肥満があり, 前回妊娠時に尿糖を指摘されている.今回妊娠第12週での75g経口糖負荷テスト (OGTT) では, 妊娠糖尿病型であったが, 指示された食事療法は守れずにいた.妊娠35週で超音波断層法によりSUAが診断された。当院に入院し施行した75gOGTTは糖尿病型であった.患者の体重は+45%の肥満であったので, 1,200kcalの食事療法が指示された.血糖の日内変動は, ほぼ正常であったが, ケトン体のそれはやや高値で, 興味あることに食後に高値であった.
出産は予定日より1ヵ月早かったが, 児の合併症や奇形は認められず, 肉眼的, 組織学的にSUAが確認された.分娩1ヵ月後のOGTTでは, 母親が糖尿病であることは明らかであった.
本症例は, 妊娠糖尿病の母親の児の出生前診断が必要であること, および肥満のある妊婦では妊娠中も出産後も注意深い観察が必要であることを示唆している.
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