糖尿病
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31 巻, 1 号
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  • 大塚 和子, 吉田 政彦, 小出 輝
    1988 年 31 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    当科に入院し糖尿病性腎症と診断した63例を対象に, 予後に関する臨床的検討をした.臨床的因子のうちネフローゼ症候群 (NS) に注目し, NSと血液透析 (HD) 移行の有無により全体を4群にわけ, 糖尿病発症から腎症発現まで, 腎症発症からHDまでの期間の相互関連を検討した.NS以外に高脂血症, 高血圧, 眼底所見についても検討した.NSを呈しHDに移行した群は腎症発症からHDまで3.6±2.4年, NSから1.2±0.8年であり, NS発症から3年以内に100%がHDに移行した。非NSでHD移行群の腎症発症からHDまでは7.3±7.3年であり, 10年以上にわたる例もみられた.高コレステロール血症はHDに移行した群で合併率が高かった.眼底所見はNSを呈した群でScott III以上を示す例が多かった.高血圧の合併率は4群で差がなかった.以上の結果から, 糖尿病性腎症の予後に, NSは重要な因子となると考えられた.
  • 岡崎 怜子, 松岡 健平, 堀内 光, 丸山 勝也, 岡崎 勲
    1988 年 31 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    東京都済生会中央病院内科に糖尿病の教育入院をした116名について, 基底膜糖蛋白であるlamininおよびtype III procollagen peptide (以下P-III-Pと略す) の血清濃度をradioimmunoassay法にて測定した.血清laminin値および血清P-III-P値と主要検査成績, 糖尿病性細小血管障害, 血糖コントロールの良否, 罹病期間との関係について分析し, 糖尿病性細小血管障害の発生機序を検討した.結果として糖尿病性腎症および網膜症の増悪に伴い, 血清laminin値および血清P-III-P値は高値を示すことが明らかになった.罹病期間が短く血糖コントロールが良好にもかかわらず合併症を有する群は, 合併症を認めない群より両者とも有意に高値で, 罹病期間が長く, 血糖コントロールが不良にもかかわらず合併症を認めない群では, 合併症を有する群よりも両者とも有意に低値であった.
    したがって, 細小血管障害の発現に血清lamininおよびtype III collagenの合成亢進の関与が推測され, その機序の1つとして不必要な薬物療法によって結合組織代謝を著しく擾乱している可能性が示唆された.
  • 発症様式と病態解析
    森 豊, 横山 淳一, 西村 正彦, 芹沢 治, 池田 義雄
    1988 年 31 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    新しい自然発症糖尿病strainであるWBN/Kobラットについて発症様式, および主として膵内・外分泌病態を中心に検討した.高血糖は雄性ラットにおいて生後6ヵ月齢頃より出現し始め, 生後12ヵ月齢における累積糖尿病発症率は73匹中33匹 (43.4%) であり, その後の長期観察に伴い発症率は上昇し生後21ヵ月齢において90%に達した.糖尿病発症ラットではインスリン注射で著明な血糖降下を示したが, 経口トルブタミド投与では血糖降下を示さなかった.生後12ヵ月齢における血中, 尿中アミラーゼは, 対照Wistarラットに比して有意に上昇しており, またPFD (Pancreatic Function Diagnostant) による膵外分泌機能検査では有意な低下がみられた.
    以上, WBN/Kobラットは新しいタイプの自然発症糖尿病ラットであり, 膵内・外分泌障害を示す際立った特徴がみられた.
  • 膵病変について
    森 豊, 横山 淳一, 西村 正彦, 芹沢 治, 池田 義雄
    1988 年 31 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    膵外分泌機能障害を伴った新しいタイプの自然発症糖尿病モデルであるWBN/Kobラットについて膵内・外分泌障害の病態を明らかにする目的で生後1ヵ月齢より2~3ヵ月間隔で膵病理像について検討した.雄性ラットでは肉眼的に3ヵ月齢の膵臓で既に褐色壊死巣が認められ, 加齢とともにその範囲の拡大がみられた.光顕的には, 3ヵ月齢で既に間質への細胞浸潤, 線維化がみられ, その後加齢と共に膵の線維化は広範囲となり, ラ氏島もその変化にまきこまれている像であった.膵組織内のアミラーゼ含量は, 対照Std: Wistarラットに比して著明に低下していた.ラ氏島のAldehyde-Fuchsin染色, Grimelius染色, 更に抗インスリン抗体, 抗グルカゴン抗体を用いた酵素抗体法 (ABC法) による免疫組織染色では, β細胞のみならずα細胞の減少も認められた.
    以上, WBN/Kobラットの膵病変は, NODマウスや脇ラットの膵病理像とは明らかに異なり, 膵内・外分泌障害が示された.
  • 帯刀 圭子, 大森 安恵, 嶺井 里美, 清水 明実, 東 桂子, 秋久 理眞, 佐中 眞由実, 平田 幸正
    1988 年 31 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    正常妊娠における母体血清α-フェトプロテイン (Maternal Serum α-fetoprotein: 以下MSAFPと略す) は神経管奇形の出生前診断に用いられている.糖尿病妊婦においてMSAFPの動態と胎児異常との関連について検討した.糖尿病57単胎妊娠例を対象とし, 正常単胎妊娠136例を対照とした.糖尿病妊婦は分娩時年齢28.8±4.2歳, 罹病期間7.0±4.6年, IDDM24例, NIDDM33例, 自然流産2例, 子宮内胎児死亡1例, 早期産9例, 正期産45例であった.
    糖尿病妊婦におけるMSAFPは正常妊婦と同様, 妊娠12~15週より上昇し (12~15週の平均18.9±10.1ng/ml) 妊娠32~35週に最高値 (272.8±78.3ng/ml) となる.MSAFPの値は12週未満, 20週以降では正常と差がないが, 12~19週では有意に低値であった.胎児異常および妊娠中の平均血糖とMSAFPとは無関係であった.神経管奇形例はなかったのでMSAFPの値と神経管奇形例との関係を示すことはできなかった.
  • いわゆるFructosamine測定について
    増田 章吾, 中道 恒雄, 前田 裕一郎, 秦 文彦, 北村 嘉章, 松本 真一郎, 畑中 裕司, 老籾 宗忠, 馬場 茂明
    1988 年 31 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    蛋白と糖が非酵素的に結合しAmadori転位して生成されるketoamine (いわゆるfructosamine) はアルカリ条件で還元作用を有するため, nitroblue tetrazoriumを還元発色させ比色測定することが可能である.本法を利用し, 血清蛋白glycation測定を行い, その臨床応用を試みた.血清のfructosamine値は血漿より約0.4mmol/l高値を示し, 糖尿病患者のfructosamine値は同じAmadori化合物の測定指標であるfurosine値との間にr=0.78と有意の相関がみられた.さらに, 過去の空腹時血糖との相関をみると2週前の空腹時血糖との間に最も良好な相関がみられた.また, 糖尿病患者の血清fructosamine値は3.83±0.78mmol/lで, 健常者の血清fructosamine値2.56±0.30mmol/lに対し有意に高値を示した.血清fructasamineは自動測定された場合, 糖尿病患者の血糖コントロールの指標の一つとして臨床的に有用と考えられた.
  • 飯塚 孝
    1988 年 31 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン使用中の糖尿病患者89名 (男53名, 女36名) において入院前後における血清脂質, アポリポ蛋白, lecithin: cholesterol acyltransferase (LCAT) 活性の変動を検討し, 以下の結論を得た. (1) 体重, 空腹時血糖, 中性脂肪, 総コレステロール, インスリン必要量は有意に低下した. (2) アポリポ蛋白A-I, A-II, B, C-II, C-III, Eは有意に低下し, アポリポ蛋白A-I/A-II比は有意に上昇した. (3) HDL 2-コレステロールは不変であったがHDL 3-コレステロールは有意に低下し, HDL 2-コレステロール/HDL 3-コレステロール比は平均0.9から1.4へと有意 (p<0.001) に上昇した. (4) HDL 2, 3-トリグリセライドは不変であった. (5) LCAT活性は平均790から637 (nmoles/ml.hour) へと有意 (p<0.05) に低下した.
    以上, インスリン治療では, HDL組成の変化-アポ蛋白A-I, A-II比とHDL2/HDL3比の上昇-が起こり, LCAT活性は低下した。
  • 谷川 敬一郎, 野手 信哉, 秦 幸吉, 北尾 学
    1988 年 31 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    著者らは, 単一臍帯動脈 (SUA) の児は様々な心奇形を合併し死の転帰をたどることを既に報告した.最近, 超音波断層法により出生前にSUAを診断しえた1例を経験したので報告する.
    母親は肥満があり, 前回妊娠時に尿糖を指摘されている.今回妊娠第12週での75g経口糖負荷テスト (OGTT) では, 妊娠糖尿病型であったが, 指示された食事療法は守れずにいた.妊娠35週で超音波断層法によりSUAが診断された。当院に入院し施行した75gOGTTは糖尿病型であった.患者の体重は+45%の肥満であったので, 1,200kcalの食事療法が指示された.血糖の日内変動は, ほぼ正常であったが, ケトン体のそれはやや高値で, 興味あることに食後に高値であった.
    出産は予定日より1ヵ月早かったが, 児の合併症や奇形は認められず, 肉眼的, 組織学的にSUAが確認された.分娩1ヵ月後のOGTTでは, 母親が糖尿病であることは明らかであった.
    本症例は, 妊娠糖尿病の母親の児の出生前診断が必要であること, および肥満のある妊婦では妊娠中も出産後も注意深い観察が必要であることを示唆している.
  • 藤田 芳邦, 重井 博文, 野々村 弥生, 金森 晃, 的場 清和, 矢島 義忠, 岡部 治弥, 大野 司, 佐藤 友昭, 亀谷 徹, 西川 ...
    1988 年 31 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女性.71歳時にインスリノーマ (イ) で膵体尾部切除を施行.72歳時より再び低血糖症状が出現したが放置, 79歳時に低血糖性昏睡で入院した.インスリン/ブドウ糖比 (μU/mg) は3.0, 腹腔動脈造影で肝に米粒大の腫瘍陰影を多数認め, 悪性 (イ) の肝転移と診断した.ジアゾキサイド (DAX) 75mg/日の経口投与でI/G比は0.2となり血糖調節は可能となった.しかし, DAXの中断で低血糖を起こした.83歳時, 発熱を契機に全身状態が悪化.DAXを減量したが非ケトン性高浸透圧性昏睡 (NKHC) を起こし, 死亡した.病理解剖では残存膵に腫瘍はなく, 肝臓に多数の小転移巣を取り囲む限局性脂肪化巣を認めた.
    低血糖は肝転移巣からのインスリン過剰分泌によるものと考えられた.DAXは血糖調節に有効であったがNKHCの誘因となった可能性もあり, 高齢者への投与は特に注意を要する.限局性脂肪化巣の報告は皆無であった.
  • 森 豊, 西村 正彦, 芹沢 治, 蔵田 英明, 横山 淳一, 池田 義雄
    1988 年 31 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Nonobese dibetic (NOD) mice aged 10 weeks were intravenously treated with choleratoxin at a dose of 1.0 μg every two weeks until 24 weeks of age. At the age of 25 weeks, diabetes developed in 13 of 18 saline-treated control NOD mice. These mice showed partial or complete destruction of islets of Langerhans associated with marked lymphocytic infiltration. In contrast, diabetes was observed in 4 of 16 choleratoxin-treated NOD mice and the pancreatic islets showed only mild insulitis. Moreover, two-color flow cytometry analysis of T-cell subsets in peripheral blood revealed significant decreases in the percent of L3T4+ cells and Lyt 2+ cells in choleratoxin-treated NOD mice compared with saline-treated control NOD mice.
    These results clearly indicate that choleratoxin prevents diabetes mellitus in NOD mice by inhibiting the development of insulitis by interfering with T-cell proliferation.
  • 1988 年 31 巻 1 号 p. 65-83
    発行日: 1988/01/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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