糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) で急性発症し, 血中膵酵素の遷延性高値を示したインスリン依存型糖尿病 (IDDM) の1成人例を報告する.症例は47歳, 女性.急激に口渇, 多飲多尿と意識障害をきたし, 血糖850mg/d
l, 尿ケトン体強陽性, 動脈血pH6.90のためDKAと診断, 治療により12時間後軽快し, 以後IDDMとして治療中である.本症例は入院時, 腹痛や圧痛など膵炎を思わせる所見はなかったが, 血清アミラーゼ, リパーゼ, エラスターゼ1, トリプシン, PSTIが高値を示し, 30日以上異常値を持続した.過去5年間に経験したDKA25症例において, DKAで初発したIDDM5例では, 全例に1週間にわたる高アミラービ血症 (HA) を認めた.しかし治療中のIDDMあるいはNIDDMの経過中に併発したDKAでは, HAの頻度はそれぞれ2/10例 (20%), 3/7例 (42.9%) と低値であり, またHAはDKAのいかなる代謝パラメーターとも有意の相関を示さなかった.従って, DKAに随伴する膵酵素異常はIDDM初発時の膵外分泌障害を反映する可能性が示唆される.
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