糖尿病
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34 巻, 2 号
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  • 蔵田 英明, 宇都宮 一典, 佐々木 敬, 吉沢 祥子, 野村 幸史, 横山 淳一, 池田 義雄
    1991 年 34 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    HMG-CoA還元酵素阻害剤 (pravastatin) の糖尿病性腎症に対する効果を動物実験モデルを用いて検討した.雄性ウイスターラットをstreptozotocin 40mg/kgにて糖尿病とし, DM群 (N=6): 未治療糖尿病ラット, P-DM群 (N=6): pravastatin 250mg/l飲水投与糖尿病ラット, NC群 (N=8): 正常雄性ウイスターラットの3群に分け, 血清脂質, 血糖値および尿中NAG, アルブミン排泄量, 腎ソルビトール含量および透過電顕標本を作成し糸球体基底膜厚の測定を行った.pravastatinにてSTZ糖尿病ラットの脂質代謝異常は改善されなかったが, 尿中NAG (DM群: 0.8±0.1vs P-DM群: 0.4±0.2U/day, P<0.01), 尿中アルブミン排泄 (DMl群: 5.1±1.3vsP-DM群: 2.5±0.9mg/day, p<0.01) および, 腎糸球体基底膜の肥厚 (DM群: 205±18.0vs P-DM群: 150±6.0nm, p<0.01) は有意に抑制された.Pravastatinは腎症進展予防効果を有することが示された.
  • インスリンとヘパリンの効果
    最上 康生
    1991 年 34 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ストレプトゾトシン糖尿病ラット (STZラット) の腎障害の進展をインスリンあるいはヘパリンが防止するか否かを明らかにする目的で, STZラット作製後, 直ちにインスリン (インスリン群) あるいはヘパリン (ヘパリン群) を連日, 8週間投与し, 尿アルブミン排泄率 (UAE) と8週後の腎糸球体基底膜 (GBM) 外透明層のanionic sites (AS) の数を測定した.UAEは, STZラットで経時的に上昇したがインスリン群では高血糖が制御されたと同時に, その上昇は抑制 (p<0.01) された.ヘパリン群では高血糖が持続したが, インスリン群と同様にUAEの上昇が抑制された.GBMのASの数はSTZラットでは著明に減少したが, インスリン群ではその減少が抑制 (P<0.01) された.ヘパリン群もインスリン群と同程度にASの数の減少が抑制された.
    以上より, ヘパリンはインスリンと同様にSTZラット腎障害進展防止効果があると思われた.その作用機序は互いに異なる面が多いと思われる.
  • 杉林 正章, 小林 正, 繁田 幸男
    1991 年 34 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    これまでにインスリン受容体のcleavage site 4番目のアミノ酸が点突然変異のためにArgからSerに変換され, そのためにインスリン結合の低下した異常インスリンプロレセプターが発現機能し, インスリン抵抗性を招来したと思われる症例を経験した.今回, この症例の染色体DNAよりPCR法によりcleavagesiteを含む断片を増幅し, direct sequence法により解析し, この異常が患者染色体DNA上にhomo接合体の状態で存在することを示した.さらに, インスリン受容体の正常cDNA, および症例と同様の点突然変異を持った異常cDNAを作成し, これらをCOS7細胞にtransfectionを行った.その解析より発現レセプターが患者細胞のものと同様の特性を持つことを示し, この点突然変異が異常プロレセプターの原因であることを証明した.
  • 死因の推移とその特性
    結城 千草, 伊藤 芳樹, 久保田 奉幸, 岩下 早苗, 井合 文子
    1991 年 34 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    全国的規模の中小病院, 診療所等の医療機関の連合体, 民主医療機関連合会 (民医連) を受診している糖尿病患者の死因の実態を知る目的で, 1970年より15年間, 3回に分けてアンケートによる糖尿病患者の死因調査を行なった.回答施設は全国にわたり, 規模もさまざまであった.第一回調査は資料保存不十分のため, 第二, 三回調査を主体にその推移の解析を行なったが, その結果, 1) 糖尿病患者の死亡年齢および発症年齢の高齢化, とくに女性でのそれがみられた.2) 死因では, 心疾患の著しい増加, 脳血管障害, 胃疾患の減少, さらに肝癌, 肝硬変の増加がみられた.3) 地域別では関東以西で心疾患の増加が大で, 脳血管障害の減少率も大であった.4) いずれの期間も女性の血管障害が男性に比し高かったが, 心疾患はとくに高齢の女性に高率であった.肝硬変は41~50歳男性に著しく高く, アルコールとの関連も示唆された.5) 高血圧は各血管障害に大きな影響があった.以上今回の死因統計の結果は, 死亡患者の高齢化に強く影響されたものと考える.
  • 猪股 茂樹, 正宗 研
    1991 年 34 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    潜在性腎症を示すインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 14例 (年齢52.1±6.1 (mean±SD) 歳, 罹病期間13.1±4.2年) の腎サイズ (renal ratio: RR) と尿中アルブミン排出率 (AER) の推移 (平均45±8ヵ月) から腎肥大が潜在性腎症の進展に関与する可能性を検討した.腎サイズはSimonの方法で測定した.追跡開始時と終了時の各12ヵ月間のAER, HbA1, 収縮期血圧 (SBP), Ccrの平均値はそれぞれ48.5,157.1μg/min; 9.1, 8.4%; 127,122mmHg; 94.7, 84.4ml/minであった.血糖, 血圧は良好に管理されておりAERへの影響は少ないといえた.RRは終了時AERとのみ有意な正相関を示した (r=0.675, p<0.02).AER悪化5例と非悪化9例のRR及び追跡終了時HbA1, SBP, Ccrを比較すると悪化群のRRとSBPは有意な高値を示した (3.74±0.14vs3.30±0.11, P<0.001)(127±5vs119±7mmHg, p<0.05).以上よりNIDDMでは腎肥大が潜在性腎症の進展に関与するといえ, 進展予知の有用な指標である.
  • 池澤 嘉弘, 阿部 隆三, 藤沼 宏彰, 太田 節, 堀 三郎, 菊池 宏明, 池田 敏春
    1991 年 34 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性網膜症の発症・進展と成長ホルモンの関連性をprospectiveに明らかにするために検討した.糖尿病性網膜症を認めないか, 有していても極軽度なインスリン非依存性糖尿病患者48名を対象として運動負荷試験を施行し, その直後の成長ホルモンの分泌反応より, 5ng/ml未満の群 (1群) 27名と5ng/ml以上の群 (II群) 21名とに分類した.両群では罹病期間, 空腹時血糖, HbA1, 血圧に有意差を認めなかった.それぞれの群について1年間ごとに5年間網膜症の発症・進展について追跡調査した.その結果, 追跡調査5年後では網膜症の進展した例はI群で1例 (3.7%) であったが, II群では8例 (38.1%) であった (P<0.01).両群では5年間, 空腹時血糖HbA1, 血圧, 総コレステロールに有意差を認めなかった.
    本研究は両群の糖尿病性網膜症の発症・進展の差には運動後の成長ホルモンの過分泌傾向が強く関連していることを示唆している.
  • 橋本 敏博, 桝永 秀彦, 奥山 牧夫
    1991 年 34 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    胃内発酵によりアルコール性低血糖をおこした血液透析患者の1例を報告する.症例は72歳男性で, 慢性血液透析を施行していたが, 幽門部胃潰瘍を合併し, 固形物は食べ難い状態であった.昭和63年9月10日, 意識障害にて入院, 著明な低血糖を呈し, ブドウ糖の静注にても血糖維持が困難であった.呼気にアルコール臭がするため, 胃内発酵によるアルコール性低血糖を疑い胃管を挿入したところ, アルコール臭のする多量の食物残渣が吸引された.それととともに, 低血糖症状は消失した.胃管挿入前の血漿エタノール濃度は0.2mg/mlであったが, 胃吸引後は測定限界以下となった。胃液培養からはCandida alubicansおよびTorulopsis glablataが検出され, in vivoでそのアルコール発酵能が証明された.
  • 林 多喜王, 高橋 秀房, 三澤 利博, 笈田 耕治, 中井 継彦, 宮保 進
    1991 年 34 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    低血糖はインスリン治療における重大な副作用であるが症状が明確で自己対応も比較的容易なことより, 重篤な症候を呈することは稀である.しかし, 我々は17年の罹病歴を有する37歳の糖尿病患者でインスリンによる低血糖から痙攣と昏睡をきたし, さらに心呼吸停止を起こした症例を経験した.本例は最大血圧が約80mmHg下降する起立性低血圧を有しValsalva試験, 過呼吸, 寒冷刺激やアトロピンによる血圧心拍変化が消失しており心臓は脱神経状態にあると考えられた.グルコースクランプ法により血糖値を50mg/dlに低下させると前駆症状無しに意識混濁を認め同時に急性の抗低血糖ホルモンであるアドレナリンおよびグルカゴンは増加しなかった.本例は低血糖により心呼吸停止発作を起こした本邦第2例目の症例であるが, 自律神経障害を有しさらに抗低血糖ホルモン反応の欠如した糖尿病患者は低血糖により容易に心呼吸停止を来たす可能性があると考えられた.
  • 原田 秀子, 桜井 淳, 田島 茂, 尾形 悦郎, 戸塚 康男
    1991 年 34 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1, 5-Anhydroglucitol (AG) is decreased in the serum of poorly controlled diabetic patients. Although the metabolism of AG is largely unknown, the low serum AG concentration of the patients has been attributed to the increased urinary excretion of AG in association with glycosuria. In order to clarify the effects of impaired renal function on the metabolism of AG, we measured both serum and urinary AG concentrations in 28 non-diabetic patients with renal disease (RD group) who had no glycosuria in association with various degrees of decreased glomerular filtration rate (GFR).
    Serum AG concentrations were decreased in the RD group even in the absence of glycosuria. The degree of decrease in serum AG level was correlated with the reduction in GFR. No correlation was observed in diabetic patients with glycosuria. Urinary excretion of AG appeared to be increased in the RD group based on their low serum AG level.
    These results suggest that the low serum concentrations of AG in patients with chronic renal failure may be caused, at least partly, by an increase in the urinary excretion of AG.
  • 前田 憲吾, 安田 斎, 川端 徹, 園部 正信, 佐々木 智子, 久永 卓, 寺田 雅彦, 吉川 隆一, 繁田 幸男
    1991 年 34 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    We have reported that the vasotropic agent, prostaglandin E1 analogue OP1206·α-CD (OP) ameliorates the decrease in sciatic motor nerve conduction velocity (MCV) and Na+/K+-ATPase activity of rats with streptozocin-induced diabetes without normalizing abnormal nerve sorbitol or myo-inositol content. This observation suggests that nerve Na+/K+-ATP-ase activity may be regulated by unknown metabolites other than myo-inositol. In order to examine this possibility, the effect of OP on Na+/K+-ATPase activity was examined in vitro.
    Twenty-seven 8-week-old Sprague-Dawley rats were used in the experiment. Diabetes mellitus was induced by intravenous injection of streptozocin 45 mg/kg. Six weeks after the injection, the diabetic rats had significantly higher levels of plasma glucose, lower body weights and slower sciatic motor nerve conduction velocities than the control rats (all p<0.001). Sciatic nerves isolated six weeks after treatment were incubated with various concentrations of OP: the decreased Na+/K+-ATPase activity was ameliorated in a dose-dependent manner, and the improvement was significant at concentrations higher than 0.5ng/ml in the diabetic rats. Nerve cAMP concentrations were also increased in a dose-dependent manner in the diabetic rats.
    These rasults suggest that OP has a direct effect on diabetic nerve tissue via a mechanism which might be associated with an increase in nerve cAMP levels rather than a vasotropic action.
  • 1991 年 34 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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