症例は50歳男性で, 42歳時糖尿病を指摘されたが放置していた.50歳時胃十二指腸潰瘍の手術後, 口渇が出現し, 徐々に意識レベルが低下してきたため入院となった.入院時血糖は836mg/dl, 白血球10,800mm
3, BUNは77mg/dl, Crは2.0mg/dl, 血漿pHは7.29, 血漿浸透圧は449mOsm/l, 血清Naは176mEq/l, Kは2.8mEq/l, GOTは39K.U, GPTは32K.U, CPKは946IU (MM型100%), 尿ケトン体は陰性であったため, 高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡と診断した.治療後3日目には意識清明となったが, 両下肢痛とCPKの異常高値 (52,000IU), GOT, LDHの上昇, さらに大腿四頭筋からの筋生検の結果, 横紋筋融解症と診断した.その後3日目には各酵素とも低下傾向を示したが, 四肢筋の萎縮, 筋力低下は著しく, 歩行可能となるまで約1カ月を要し, 前脛骨筋の融解は特に強かったため, その後もsteppage gaitを残した.本症例の横紋筋融解症の原因は, 高度の脱水による末梢循環不全およびその後の輸液が主たるものと考えられた.
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