糖尿病
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34 巻, 8 号
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  • 今井 龍幸, 松田 雅文
    1991 年 34 巻 8 号 p. 671-676
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血糖低下時に視力低下を認めることがあるが, その頻度・血糖値との関係についての報告は少ない.血糖低下に伴い一過性の遠視化 (最大屈折変化 (以下△Dと略す) は+2.25) による視力低下を認めその改善に数ヵ月を要した1例を経験し, 以後の例でコントロール前後での屈折状態を検討し, △Dと血糖低下幅 (以下△PGと略す)・血糖低下速度との関係を検討した.10例中9例で屈折異常 (全て遠視化で△Dは+0.25-+2.75) を認め, △Dと△PG間では両眼 (右眼: n=10, r=0.888, 左眼: n=10, r=0.863, 共にp<0.01), △Dと血糖低下速度間では右眼 (右眼: n=10, r=0.722, p<0.05, 左眼: n=10, r=0.613, ns) で有意の相関関係を認めた.血糖改善時には多くの例で屈折異常を認め, うち約3割に視力低下を認めた.△PGが100mg/dl以上で屈折異常を生じ, それが大きい程症状として自覚されると考えられた.また, 血糖改善時には網膜症以外に屈折異常を考える必要性が示唆された.
  • 副腎摘除ラットにおける検討
    上原 豊, 清水 弘行, 根岸 真由美, 深津 章, 高橋 正樹, 下村 洋之助, 小林 節雄, 小林 功
    1991 年 34 巻 8 号 p. 677-683
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    副腎摘除ラット (Adx) を用いてInterleukin 1 (IL-1) によるインスリン (IRI) 分泌抑制における副腎ステロイドホルモンの重要性について検討した.1) IL-1 (1μg/kg) 腹腔内投与後において偽手術群 (Sham)(n=6), Adx群 (n=6) において血糖値 (PG) が低下し, Adx群においては0.1, 1μg/kg IL-1投与によるIRIの減少が認められた.2) IL-1前投与後ブドウ糖経静脈負荷を行うと, Adx群ではPGは対照より増加したが, IRI反応は有意に減弱していた.糖負荷2分後の△IRI/△PG比はIL-1投与によりIL-1;0.016±0.002, 対照;0.037±0.005と明らかに減少していた (p<0.01).一方, Sham群ではIL-1投与による有意なIRI反応の変化は認められなかった.3) デキサメサゾン (DEX) 補充Adx群におけるIL-1の影響を分析すると, DEX 0.1mg/kgの補充ではIL-1によるIRI濃度減少は解消された.副腎グルココルチコイド欠乏状態においてはIL-1投与によるインスリン分泌抑制が発現する可能性が示唆された.
  • 三浦 順子, 横山 淳一, 三村 明, 森 豊, 伊藤 景樹, 池田 義雄
    1991 年 34 巻 8 号 p. 685-691
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    膵性糖尿病ではインスリン治療に際して血糖の動揺が大きく, 低血糖の頻度やその遷延化が問題となっている.そこで私達はインスリン治療中の膵性糖尿病症例16例 (慢性石灰化膵炎例12例, 膵切除例4例) のうち11例に人工膵島を用いフィードバックコントロールを行いインスリン注入量と注入パターンを調べた。さらに夜間インスリン注入量が1.0 U/hr以下あるいは尿中Cペプチド排泄量が30μg/day以上の症例は速効型インスリン各食前1日3回注射 (Bolus法) へ, また夜間インスリン注入量が1.0 U/hrより多い症例あるいは尿中Cペプチド排泄量が30μg/day未満の症例ではBolus法に遅効型インスリンを加えたBasal-Bolus法へ変更した.治療変更後HbA1値, 血糖日内変動のM値およびMAGEは有意に低下し, 低血糖発作の頻度も減少した.以上より膵性糖尿病では膵B細胞機能残存例にはBolus法が, 残存しない例ではBasal-Bolus法がより良好な血糖コントロールを保つうえで有効であると考えられた.
  • 長屋 憲
    1991 年 34 巻 8 号 p. 693-699
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    当施設1年間の1144分娩例について初診時の随時血糖値を基にその分布を検討し, 100mg/dlを精検のための血糖閾値として耐糖能異常のスクリーニングを試みた.通常の妊婦健診のみで管理し, 尿糖陽性を主とした日本産科婦人科学会 (日産婦) の指針による適応例196例に759糖負荷試験 (GTT) を施行したところ僅かにGDM3例, 耐糖能異常全体で16例しか検出し得ず, 検出時期も27.5±7.5週 [MEAN±SD] と遅かった.一方, 初診時の随時血糖によるスクリーニングを併用したところ, 49例がGTTの対象に附加されたが, その結果GDM8例, 耐糖能異常全体で26例と検出数が著増し, しかも, 検出時期が14.5±8.0週と有意に早期となった.簡易で安価な随時血糖値によるスクリーニングは有益で, 糖負荷試験によるスクリーニングが困難な施設では特に価値が高く, 早期からの耐糖能異常管理を容易にし得る.
  • 1980年以前と以後の比較
    穴沢 園子, 岡崎 怜子, 加藤 清恵, 松岡 健平, 北村 信一, 堀内 光, 落合 寛, 鴨下 泉
    1991 年 34 巻 8 号 p. 701-709
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1980年頃から進歩を遂げたインスリン治療法がIDDM妊婦管理において妊娠中の糖尿病病態特に血糖コントロールと分娩成績にどのような効果をもたらしたかを知る目的で, 1979年以前の24分娩 (A群) と1980年以後の18分娩 (B群) について比較検討した. A群に対しB群に差異が認められた事項は1) 妊娠中のインスリン最高必要量の増加 (A群, 0.53±0.28U/kg/day, B群0.83±0.20, P<0.01), 2) 妊娠中の1日尿糖排泄量20g以下例の増加傾向 (A群, 5/24, B群, 8/18), 3) 在胎週数38週以上例の増加 (A群, 2/24, B群, 7/18, P<0.05), 4) 生下時比体重の低下 (A群, 1.28±0.37, B群1.16±0.20, P<0.05) であった. 以上の結果はインスリンの積極的な使用がIDDM妊婦の糖尿病病態, 分娩成績によい結果をもたらしたことを示しているが, 更に良い結果を得るためには積極的なインスリン治療や食事療法を妊婦が受容できるよう妊娠前から, 充実した患者教育を行い患者の意識を高めておくことが重要であると考える.
  • 瀬戸口 純子, 中埜 幸治, 金井塚 敏弘, 沢田 学, 中村 直登, 近藤 元治, 金綱 隆弘, 宇野 賀津子
    1991 年 34 巻 8 号 p. 711-716
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    型糖尿病のモデルであるnon obese diabetic (NOD) マウスでは, Cyclophosphamide (CY) 投与により糖尿病・膵島炎の発症進展を促進することが報告されている. 我々はこの発症促進に内因性TNFα 及び膵細血管透過性 (PVL) の果たす役割について検討した. その結果, CYは低下しているTNFα 産生能に対して影響しなかったが, PVLを亢進させた. また, ヒトhTNFαの投与はNODマウスの膵島炎やPVLを抑制し, さらにPVLの抑制が膵島炎の抑制につながることが示唆された. そこで, CY処理NODマウスにhTNFα 投与を行った. hTNFα はCYの膵島炎発症促進作用を抑制したが, PVLの亢進は抑制しなかった. 以上, NODマウスにおけるCY処理は内因性TNFα 産生能に影響を与えず, PVLを充進させたことからCYの膵島炎および糖尿病促進作用の一因として, PVLの亢進作用が関与することが示唆された.
  • 垣田 秀治, 青木 真一郎, 堤 義信, 沢田 学, 長谷川 剛二, 高木 秀一, 中埜 幸治, 金綱 隆弘, 近藤 元治
    1991 年 34 巻 8 号 p. 717-723
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    今回, 著者らはストレプトゾシン (SZ) 糖尿病ラットを用いて, 尿中微量アルブミン排泄率 (AER) やGFRを測定すると共に, それらに対するアンギオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI) の効果とその作用機序について検討した.体重約200gのWistar ratにSZを60mg/kg尾静脈より投与して糖尿病ラットを作成して20週間観察しAER, GFR, 血圧 (BP) を測定した.治療群はCaptopril (三共株式会社) を経口飼料に混和 (0.05%) して同様に20週間観察すると共に, ACEI治療を前半および後半のそれぞれ10週間のみ施す群も作成してその効果を検討した.SZ投与後速やかにAERは増加し, GFRはSZ投与後1週から4週にかけて増加し8週後には前値に戻った.ACEI治療によりAERの増加およびGFRの増加は有意に抑制されBPも有意に低下した.前半のみACEI治療を施した群では後半の非治療期においてもAERは増加しなかったが, 後半のみACEI治療を施した群では前半に増加したAERは後半の治療期においても低下せずBPの変動はAERの増減とは相関しなかった.これらよりSZ糖尿病ラットでは早期よりAERやGFRが増加し, 初期のGFRの増加がAERの増加に深く関わっていること, またACEIは発症初期における降圧作用そしてHyperfunctionの是正作用によって効果を認めることが示唆された.
  • 丸山 太郎, 鈴木 裕也, 吉村 ゆかり
    1991 年 34 巻 8 号 p. 725-730
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は29歳, 男性.嘔気, 嘔吐, 発熱にて発症し, 高血糖 (800mg/dl), 高アミラーゼ血症 (5080IU/ml) を認め急性に死の転帰をとった.剖検にて膵臓は100gで膵島数の減少や膵島の萎縮は認めなかったが, 膵島に散在性のリンパ球浸潤 (膵島炎) が認められた.組織化学染色ではインスリンの染色性は消失していたがグルカゴン, ソマトスタチンの染色性は保たれており, これらの所見はEMCウイルス糖尿病株による糖尿病の発症直後の組織所見に類似していた.浸潤リンパ球はLeu 7陽性細胞が主でLeu M 1陽性細胞も認められた.また, 膵外分泌組織, 耳下腺にも軽度のリンパ球浸潤が認められた.本例は膵内, 外分泌組織に急激に変化をきたして発症したIDDMと考えられ, 日本人IDDMの病因解明に貴重な症例であり, また, IDDMの発症時にみられる高アミラーゼ血症の機序にも示唆を与えると考えられた.
  • 高橋 きよ子, 丸山 太郎, 武井 泉, 丸山 博, 石井 寿晴
    1991 年 34 巻 8 号 p. 731-737
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    アレルギー性肉芽腫性血管炎 (AGA) の寛解期に発症し, 生検で膵島炎を認めたIDDMの1例を経験した. 症例は71歳, 女性. 1977年よりAGAを発症し, predonisolone (PSL) により寛解して経過観察されていたが1989年12月に糖尿病を発症した. 発症時尿ケトン体陽性, 血糖504mg/dl, ICA陽性, HLA-DR9陽性であった. 入院第39病日に膵生検を施行し, 得られた5個の膵島に膵島炎を認めた. この膵島炎はNODマウスの所見に類似し, インスリン含有細胞の著明な萎縮像が認められGeptsの言う自己免疫の関与した膵島炎の像と考えられた. 浸潤リンパ球にはMT-1, UCHL-1陽性細胞 (T-細胞), MB-1, SL-26陽性細胞 (B-細胞), Leu-7陽性細胞 (NK細胞) が認められた. AGAにIDDMを合併した報告はなく, また本邦における5例目の膵島炎の報告であり, 非常に貴重な症例と考えられた
  • 1991 年 34 巻 8 号 p. 739-755
    発行日: 1991/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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