1980年頃から進歩を遂げたインスリン治療法がIDDM妊婦管理において妊娠中の糖尿病病態特に血糖コントロールと分娩成績にどのような効果をもたらしたかを知る目的で, 1979年以前の24分娩 (A群) と1980年以後の18分娩 (B群) について比較検討した. A群に対しB群に差異が認められた事項は1) 妊娠中のインスリン最高必要量の増加 (A群, 0.53±0.28U/kg/day, B群0.83±0.20, P<0.01), 2) 妊娠中の1日尿糖排泄量20g以下例の増加傾向 (A群, 5/24, B群, 8/18), 3) 在胎週数38週以上例の増加 (A群, 2/24, B群, 7/18, P<0.05), 4) 生下時比体重の低下 (A群, 1.28±0.37, B群1.16±0.20, P<0.05) であった. 以上の結果はインスリンの積極的な使用がIDDM妊婦の糖尿病病態, 分娩成績によい結果をもたらしたことを示しているが, 更に良い結果を得るためには積極的なインスリン治療や食事療法を妊婦が受容できるよう妊娠前から, 充実した患者教育を行い患者の意識を高めておくことが重要であると考える.
抄録全体を表示