症例は72歳, 女性. 1983年より空腹時に傾眠や意識障害が出現するも飲食にて軽快. 1988年10月に意識消失, 低血糖で当科入院. FBS36mg/d
l, 血中IRI13μU/m
l, CPR2.6ng/m
lで, IRI/FBSO.36, CPR/FBSO.072と高値を示した. 画像診断では膵腫瘍を検出できず, PTPCによるIRI測定は膵尾部で249μU/m
lと高く, 同部のインスリノーマと診断低血糖頻発のためにソマトスタチン・アナログSMS201-995を使用 (50-150μg/day, 4週間) したところ, FBSは使用前43.2±6.1から97.9±3.3mg/d
l, IRIは18.0±7.1から4.3±1.3μU/m
lと著効を呈した. 1989年7月, 膵体尾部切除術を施行 (膵尾部に径8mmのラ氏島腫瘍). 術後, 低血糖は消失し, FBSも100mg/d
l前後である. 治療前のブドウ糖グルカゴン, アルギニン負荷試験では, IRI・CPRは低反応であったが, 治療中 (開始後2-3週) の各負荷試験では, 過剰反応を認めた. 本例では, SMS201-995治療により十分に低血糖が抑制され, 外来刺激に対する反応性が変化した.
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