重篤な神経障害を有する糖尿病患者においてオメプラゾール内服が引き金となって, 麻痺性イレウスを繰り返した1例を経験した. 症例は, 52歳男性. 2年前より両下肢のしびれ, 立ちくらみ, 陰萎, 残尿感, 胸やけ, 心窩部痛, 下痢が続き糖尿病性神経障害によるものと診断した. その後, 逆流性食道炎に対しオメプラゾール20mg投与翌日には嘔吐, 腹痛が出現した. 腹部の蠕動音は消失しており腹部X線にて小腸内ガス像を認め, 麻痺性イレウスと診断した. 8カ月後, 近医でオメプラゾールを処方され, 翌日, 腹痛が出現し再び, 麻痺性イレウスを起こした. 上部消化管造影検査で胃拡張所見以外に異常は認められず, 小腸造影検査, 大腸造影検査, 腹部エコー, 腹部CT像では異常所見は認められなかった. 神経障害の高度な糖尿病患者に, 消化管運動に影響を及ぼすと考えられる薬剤を投与する際注意を要すると思われた.
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