糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
38 巻, 11 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 朝長 修, 馬場園 哲也, 高橋 千恵子, 寺岡 慧, 太田 和夫, 大森 安恵
    1995 年 38 巻 11 号 p. 839-846
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    インスリン依存型糖尿病 (IDDM) における糖拮抗調節の障害は, 糖尿病性自律神経障害や, インスリン治療に伴う頻回の低血糖との関連が示唆されている. 膵移植がこの障害に対していかなる影響を与えるかを検討するために, 膵腎移植患者 (PK群) 6名, 腎移植患者 (K群) 4名, 血液透析中のIDDM患者 (H群) 5名および健常者 (N群) 10名に対しインスリン低血糖試験を行い, 血糖, 血中グルカゴンおよびエピネフリンを測定した. また自律神経機能の評価のため起立負荷試験, 深呼吸負荷試験を施行した. PK群では, K群, H群に比しグルカゴン, エピネフリンの反応は良好であり, その結果低血糖から上記2群より速やかに回復した. 自律神経機能に関しても, PK群がK群, H群に比較しその障害は軽度であった. 以上の結果から, 膵移植はIDDMにおける糖拮抗調節障害を改善する可能性が示唆され, その要因として自律神経障害の改善, および低血糖のない正常血糖の維持が推察された.
  • 川口 美喜子, 谷川 敬一郎, 加藤 譲
    1995 年 38 巻 11 号 p. 847-852
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    器官形成期のラット胎仔の神経管の細胞増殖に及ぼす母体糖尿病の影響について検討した. Wistar系雌ラットの妊娠0日にストレプトゾトシン (45mg/kg BW, iv) を投与し, 糖尿病妊娠ラットを作成した. 対照ラットにはクエン酸緩衝液を同様に投与した. 妊娠10.54日 (13: 00), 11.54日 (13: 00) の母体に5-bromo-2-deoxy uridine (Brd U, 50mg/kg BW) を腹腔内に投与した. 1時間後 (妊娠10.6, 11.6日) に帝王切開で胎仔を摘出し, Brd U免疫染色を施行した. 胎仔のproteinとDNA含量は妊娠10.6日では両群間に差を認めなかったが, 妊娠11.6日の糖尿病ラットの胎仔ではいずれも対照群に比較して有意に (p<0.0001) 低値であった (protein: 377.2±7.0 vs. 474.3±10.5μg, DNA: 25.3±0.6 vs. 32.3±0.8μg). 神経管のBrd U陽性細胞の比率は, 妊娠10.6日は対照群と糖尿群と差を認めなかったが, 妊娠11.6日の糖尿病妊娠ラットの胎仔では対照ラットの胎仔に比較して高値であった (56.9±1.6 vs. 45.4±1.9%, p<0.0001). 以上の成績は, 糖尿病妊娠ラットの胎仔の成長の遅延は, 妊娠10.6日以降に顕著になることを示唆している.
  • 鎌田 哲郎
    1995 年 38 巻 11 号 p. 853-860
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    高脂血症を呈する糖尿病患者における低比重リポ蛋白 (LDL) の表層流動性を, 異なる深さでの流動性を反映する3つのステアリン酸ラベル剤 (5-, 12-, 16-SAL) を用い, スピンラベル法により測定した. 表面近くの流動性を反映する5-SALでは, 両群での差はみられなかった. しかし, より深い部分の流動性を反映する12-および16-SALでは, 糖尿病患者LDLでは健常者LDLに比べ流動性の有意の低下がみられた. 流動性低下はLDL脂質組成の変化と有意に相関しており, 12-SALでは遊離コレステロール/リン脂質比の高いほど, いっぽう16-SALではリン脂質アシル鎖の不飽和度の低いほど, 流動性は低かった. さらに, 流動性低下と高血糖 (HbA1cおよび空腹時血糖) との関連も示唆された. LDL表層流動性は, LDL代謝に様々な影響を与えることが知られており, その低下は糖尿病におけるLDL代謝異常の一因である可能性が考えられる.
  • Dahl食塩感受性高血圧ラットにおける高インスリン血症の影響
    村川 祐一, 森 豊, 横山 淳一, 畑 章一, 加藤 秀一, 田嶼 尚子, 磯貝 行秀, 池田 義雄
    1995 年 38 巻 11 号 p. 861-868
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    生後8週齢Dahl食塩感受性 (S) ラットと対照Dahl食塩抵抗性 (R) ラットを各々高蔗糖食 (HS) 群, 高繊維食 (HF) 群の2群に分け, 8週間経過観察を行った. さらに, Dahl Sラットについては, インスリン抵抗性改善薬トログリタゾン投与HS群をもうけた. Dahl SラットのHS群, トログリタゾン投与HS群, 並びDahl RラットのHS群はHF群と比較して有意な体重増加を認めた. Dahl SラットのHS群では体重増加, 高インスリン血症に伴い血圧の上昇が観察されたが, トログリタゾンはこの高インスリン血症を是正し血圧の上昇を抑制した. また, Dahl SラットのHF群では高インスリン血症も血圧の上昇も認められなかった. 一方, Dahl RラットではHSにより体重増加, 高インスリン血症が観察されたにもかかわらず, 血圧の上昇は認められなかった. 以上, 高インスリン血症は全ての状態で昇圧因子として働くのではなく, 食塩感受性規定因子などと関連して昇圧因子として働くのではないかと推察された.
  • 鈴木 誠司, 奥田 諭吉, 朝倉 由加利, 香取 登久江, 坂内 千恵子, 川上 康, 小田原 雅人, 松島 照彦, 川井 紘一, 山下 亀 ...
    1995 年 38 巻 11 号 p. 869-874
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    プロラクチノーマに糖尿病を合併した症例を経験し, ブロモクリプチン投与前後における耐糖能の変化を検討した. 症例は22歳の男性. 1992年5月, プロラクチノーマのため下垂体腺腫摘出術を施行. 同年7月上旬より易疲労感, 多飲, 多尿が出現し, 糖尿病と診断し入院. 入院後, 糖尿病は食事療法と経口剤にて治療を開始し, その後食事療法と運動療法のみにて良好な血糖コントロールが得られた. 下垂体には2×1cmの腺腫が残存し, 血漿プロラクチン値は110.1ng/mlと高値であった. ブロモクリプチン投与を開始し, 血漿プロラクチン値は9.7ng/mlへ低下した. ブロモクリプチン投与前後で75g OGTTと20g IVGTTを行った. 75g OGTTではブロモクリプチン投与中で, 血糖値は改善し, 血漿インスリンの反応は増加した. 以上より高プロラクチン血症がインスリン分泌に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 坂本 賢哉, 下永田 剛, 南都 伸介, 飯田 基之, 内海 恭子, 竈門 敬二
    1995 年 38 巻 11 号 p. 875-880
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 20年来の糖尿病, 高血圧の既往があり, 今回心電図にて冠動脈疾患が疑われ精査目的で当院へ入院となった. ジピリダモール負荷201TlCl心筋シンチでは左室下後壁に一過性欠損像を示し, 同領域に冠動脈病変の存在が示唆された. しかし, 冠動脈造影にて左右冠動脈に狭窄病変は認められないにもかかわらず, 左室造影検査にて下後壁に壁運動低下を認めた. さらに, 201TlClおよびI-123β-methyl-p-iodophenyl pentadecanoic acid (BMIPP) を用いた二核種同時収集心筋シンチグラフィーにて同領域にI-123 BMIPPの集積低下を認め, 心筋脂肪酸代謝障害の存在が示された. 以上より, 本症例は糖尿病もしくは糖尿病と高血圧症の合併に起因する細小血管障害および心筋エネルギー代謝障害によって左室壁運動異常を生じたものと考えられた.
  • 伊藤 裕之, 西山 充, 松田 勇蔵, 細木 秀美, 松下 耕太郎, 熊沢 秀雄, 今村 京子, 橋口 義久
    1995 年 38 巻 11 号 p. 881-886
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    糖尿病にアメーバ性肝膿瘍を合併し, 死亡に至った1例を経験したので報告する. 症例は51歳, 男性. 平成6年3月17日より食思不振, 21日より38℃以上の発熱が出現し30日入院. 海外渡航歴なく, 同性愛歴は不明. 便潜血 (2+), 赤沈50mm/時, 白血球数17600/μl, GOT 19, GPT25, γ-GTP 127IU/l, CRP (2+), 血糖243mg/dl, HbA1c 7.7%. 腹部超音波では, 肝右葉に内部の不均一な円形低エコー域があり, 同部はCTで7.5×6.5×10cmの低吸収域を呈した.Cefotaximeの経静脈的投与にて効果なく, 経皮経肝膿瘍ドレナージを施行. 新鮮膿の鏡検にて多数の栄養型赤痢アメーバの虫体を認めた. 持続ドレナージに加え, Metronidazoleを投与したが4月4日死亡. 糖尿病による易感染性が本例の発症と経過に関係したものと考えられた. 赤痢アメーバ症と糖尿病がともに増加しつつある現在, 同様の症例が今後みられる可能性もあり, 臨床上注意を要する.
  • 山本 勝輔, 松本 小百合, 島 雅昭, 山本 威久, 山岡 完次
    1995 年 38 巻 11 号 p. 887-892
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    経過中に尿糖陰性の状態で糖尿病を発症した腎性尿崩症の小児例を経験した.症例はインスリン非依存型糖尿病の家族歴を認める10歳の男児. 発熱, 痙攣を主訴として近医受診. 精査にて腎性尿崩症と診断した. 以後サイアザイド剤投与にて経過観察していたが, 7歳頃から肥満出現. 10歳時には著明な肥満を認めた. 空腹時血糖にて162mg/dlと高値であり, 精査にてインスリン非依存型糖尿病と診断した. 経過を通じて尿糖は陰性であった. 腎性尿崩症と糖尿病の合併は稀であり, 著者らの検索しえた1983年以降の84例の先天性腎性尿崩症の本邦での報告のうち, 糖尿病の合併は6例 (7.1%) であった. その機序は不明であり, 本症例の場合もサイアザイド剤の副作用の可能性も否定できない. 本症例においては経過を通じて尿糖は陰性であり, 糖尿病の危険因子を伴う尿崩症患者においては空腹時血糖の測定や負荷試験の施行が必要であると考えられた.
  • 梅澤 慎一, 金森 晃, 田中 啓司, 神 由加理, 野口 匡子, 的場 清和, 藤田 芳邦, 矢島 義忠
    1995 年 38 巻 11 号 p. 893-899
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男. 1989年, 頭蓋咽頭腫術後より高度肥満, 汎下垂体機能低下症 (ホルモン補充療法中), 中枢性高体温症を認めていた. 1990年以降, 感冒罹患と清涼飲料水の多飲を契機にした高血糖性高浸透圧性非ケトン性昏睡 (HHNC) により, 入院を3回反復した. 退院時におけるOGTTの血糖曲線およびIRI反応は正常であり, 退院後は高インスリン血症を伴うIGTで経過していた. また, RHNC改善時には血糖, HbA1cは正常であるが, 尿崩症と渇中枢障害のために血漿浸透圧, 血清Naは常に高値であった. 本症例におけるHHNC発症機序は高度の肥満による耐糖能障害を基盤とし, 感染によるストレスト清涼飲料水の多飲を誘因として惹起されたものと考えられたが, 尿崩症や渇中枢障害, 高体温症がHHNCに至る重要な基礎疾患となっていた可能性があり, 視床下部-下垂体障害患者の糖代謝異常を考える上で示唆に富む1例である.
  • 多田 久也, 川井 仁, 石井 宏幸, 磯貝 庄
    1995 年 38 巻 11 号 p. 901-904
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    High glucose concentrations cause increased synthesis of extracellular matrix proteins and prostaglandins in cultured mesangial cells. In order to determine whether D-α-tocopherol prevents glucose-induced mesangial malfunctions, we examined the effect of D-α-tocopherol on the production of fibronectin, type IV collagen and 6-keto prostaglandin F by cultured human mesangial cells exposed to normal and elevated glucose levels. The amount of fibronectin both secreted into the medium and accumulated with in the cells increased when glucose levels were raised from 5 to 33 mmol/l. The addition of 100μmol/l D-α-tocopherol prevented the glucose-stimulated increase in fibronectin production, and a similar was observed on mesangial cell secretion of type IV collagen. D-α-tocopherol also had an inhibitory effect on the glucose-induced increase in the release of 6-keto-prostaglandin F by mesangial cells. These findings suggest that D-α-tocopherol may mitigate diabetic glomerulosclerosis by ameliorating glucose-stimulated overproduction of extracellular matrix proteins and prostaglandin.
  • 鈴木 吉彦, 宮岡 等, 渥美 義仁, 細川 和広, 谷山 松雄, 田中 逸, 朝比奈 崇介, 村田 千里, 松岡 健平
    1995 年 38 巻 11 号 p. 905-908
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    To determine the basis of psychiatric disturbances in patients with “diabetes mellitus due to 3243 mitochondrial tRNA mutation (DM-Mt3243)”, 15 subjects with the mutation (14 patients with diabetes and one patient with impaired glucose tolerance) were examined with questionnaires. None had typical clinical pictures of MELAS.
    Result; Six patients consulted a psychiatrist. In clinical examinations using the DSM-III-R criteria, two patients were diagnosed as having phobic disorders, two major depressive disorders, one dysthymia, and one schizophrenia. Two had cryptogenic chest pain.
    The remaining 9 patients refused to consult a psychiatrist. Among them, diabetologists diagnosed one patient as having a depressive episode and two as having sleeping disorders.
    Thus, among the 15 subjects, nine patients suffered from mental disorders which were categorized into “functional psychosis”. In addition, five (33.3%) could not commute regularly to the hospital. Conclusion; While distinct encephalopathy was not observed, ambiguous psychiatric disorders possibly reflecting functional psychosis, were observed frequently in our DM-Mt3243 subjects. This observation suggests that psychiatric disturbances are associated with DM-Mt3243 and that mitochondrial dysfunction is important in the etiology of psychiatric disorders in diabetes.
  • 1995 年 38 巻 11 号 p. 909-917
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
feedback
Top