糖尿病性神経障害の発症機序に, Na
+/K
+輸送活性の低下が関与していると推察されている. 今回, ラット坐骨神経の単一有髄神経線維からワセリンギャップーVoltage Clamp法を用いて膜電流を記録し, 高濃度グルコース溶液中での膜電流変化の過程におけるNa
+/K
+ポンプの関与について検討した. 細胞外に高濃度D-グルコースを加えると, 一過性に活動電位は低下し, 内向きNa
+電流は減少した. その後徐々にNa
+電流は増大し, コントロール値を越えた後, 緩やかに元の値にまで低下した. L-グルコースやSucroseなどの膜非透過性の浸透圧物質では活動電位および膜電流の変化はより大きくなった. 一方, Ouabain (0.1mM) の存在下では, 高濃度グルコース添加により, 活動電位の低下とともにNa
+電流は減少したが, その後一過性の増大を示すことなく, 減少し続けた. この成績は, 急激な高血糖により浸透圧に起因する神経伝導機能異常が惹起されること, さらにNa
+/K
+ポンプがこの神経電気活動の異常の回復に重要な役割を果たすことを示唆している.
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