NIDDMの血管内皮細胞機能低下をより早期に知る目的で, venostasis testにて軽度の虚血状態とし (Study I), 次に, より強い虚血となるhand grip stress test (Study II) を行ない, 種々の内皮細胞機能のマーカーの変化と糖尿病腎症 (腎症) の進展度との関連を調べた.Study IではNIDDM37例, 健常者10例に早朝空腹時にマンシェットにて上腕を平均血圧で5分間圧迫し, 血漿フイブリノーゲン (Fbg), 可溶性フイブリンモノマー複合体 (SFMC), 第VIII因子関連抗原 (VIII Rag), IV型コラーゲン (IVC) 濃度の変化をみた. Study IIではNIDDM36例, 健常者13例に上腕の圧迫に加え手掌開閉運動を行い同様に測定した.腎症を早朝尿のアルブミン排泄指数 (UAEI)<20mg/g・Cr (1群), 20≦UAEI<200mg/g・Cr (2群), UAEI≧200mg/g・Cr (3群) に分け比較した. Study Iでは腎症が最も進展した3群でのみSFMC, VIII-Rag, IV-Cが上昇したが, Fbgは不変であった. Study IIでは3群に加え新たに2群でもSFMC, VIII-Rag, IV-Cの増加を認めた.
以上より, 腎症が未だ早期の病期でも高度な虚血により血管内皮細胞や内皮下は障害を受け易いことが示唆された. したがって, NIDDMにおける血管内皮細胞障害の進展を予知するのにhand grip stress testが有用と考えられた.
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