症例は60歳, 女性. 1991年の春より口渇, 全身倦怠感を自覚. 自覚症状が増強するため1992年1月, 近医を受診. この時, 初めて糖尿病の診断を受け, 経口血糖降下薬の投与を受ける. しかしながら, 自覚症状の改善が得られないため, 同年3月16日当科外来を受診. 身長155cm, 体重35.5kg (BMI14.8), 尿ケトン体3+, FPG366mg/d
l, HbA
1c 14.3%. 強化インスリン療法施行し, インスリン量30単位/日で血糖コントロールが得られ, その後インスリン需要量は減少. 約1カ月で完全寛解に導入できた. 24時間蓄尿中CPR値は19.5μgから43μgまで回復しかしながら, その後, 高血糖により5回の入退院を繰り返し, この間インスリン内分泌能は徐々に低下. これに伴いインスリン必要量も, 4単位/日, 6単位/日, 12単位/日, 18単位/日, 24単位/日と徐々に増加した. 1996年に検査した24時間蓄尿中CPR値は7.6μg. グルカゴン1mg静注負荷試験△CPR6分値は0.1ng/m
lであった. ICAは陰性であったが, 1996年に検査した抗GAD65抗体は45U/m
l (正常値5U/m
l未満) と陽性であった. また, HLAではDR4が認められた. 本例は, 高齢者のIDDMで, 3回の寛解を経験し得た興味深い症例と考え報告する.
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