糖尿病
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40 巻, 12 号
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  • 重回帰分析による解析
    野田 勝己, 梅田 文夫, 名和田 新
    1997 年 40 巻 12 号 p. 769-776
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者 (NIDDM) を対象にして, ベラプロストナトリウム (BPS) の血清総レステロール (TCH) 値低下に対する効果を検討した. 23名のNIDDM患者に, BPS (120μg/日) を12週間経口投与した. BPS投与後の血清TCH値の変動は, 重回帰分析を用いて解析した. BPS投与12週後のTCH, HDLコレステロール (HDL-CH), 中性脂肪 (TG) 値は, 有意な変動を示さなかった. BPS投与12週後のTCH値の変動と有意な相関を示したのは, 投与前のTCH値 (partial r=-0.51826, p<0.025) とHDL-CH値 (partial r=0.60082, p<0.005), およびBPS投与12週後のHDL-CH値の変動 (partial r=0.69876, p<0.005) であった.TCH値の変動は, 空腹時血糖, HbA1c値, およびこれらの変動とは有意な関連を示さなかった. BPS投与による血清TCH値は, 投与前のTCH値およびHDL-CH値と関連して変動することが示された. すなわち, BPS投与前のTCH値が高くHDL-CH値の低い患者は, BPS投与後TCH値がより低下することが示された. BPS投与後に血清TCH値が増加した患者は, 投与前TCH値がむしろ低い患者に認められ, HDL-CH値も増加した. BPSは, 糖尿病患者, とくに高TCHや低HDL-CH血症の患者に有用であった.
  • 荒木 勉, 東福 要平
    1997 年 40 巻 12 号 p. 777-782
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    血液透析患者における心房性ナトリウム利尿ペプチド (atrial natriuretic peptide: ANP), 脳性ナトリウム利尿ペプチド (brain natriuretic peptide: BNP) の臨床的意義を明らかにするために, 透析前後でANP, BNPを測定し, 臨床パラメーター, 心電図・胸部X線・心エコー図所見との関連について, 糖尿病 (DM) 群, 非糖尿病 (non-DM) 群に分けて比較検討した. その結果, (1) DM群, non-DM群ともにANP変化率は体重変化率と有意に相関したが, BNP変化率は体重変化率と相関しなかった.(2) DM群ではnon-DM群に比し, BNP値が高く, QTc時間と有意に相関した (すなわちQTc時間が延長している症例ほどBNP値が高い). 今後糖尿病性腎不全血液透析患者を管理していく上で, 循環体液量を反映するANPだけではなく, 心室負荷状態を反映するBNPも同時に測定し, 総合的に評価していく必要があると思われた.
  • 高血糖持続期間および培養時間との関連
    川野 貴弘, 金内 雅夫, 土肥 祥子, 土肥 和紘
    1997 年 40 巻 12 号 p. 783-789
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    正常ラット (C群) およびストレプトゾトシン (STZ) 糖尿病ラットの腹腔マクロファージ (Mφ) を用い, 無処理LDL (N-LDL) と糖化LDL (G-LDL) のMφ内蓄積量およびMφによる分解量を高血糖持続期間および培養時間を変化させて検討した. G-LDLのMφ内蓄積量およびMφによる分解量は, C群, STZ投与5週のラット (DM-5W群), 投与10週 (DM-10W群), および投与15週 (DM-15W群) の4群で, N-LDLに比して有意に高かった. しかし, N-LDLのMφ内蓄積量およびMφによる分解量は4群間に差がなく, G-LDLのMφ内蓄積量およびMφによる分解量も4群間に差がなかった. 一方, DM-5W群でのMφ内蓄積量およびMφによる分解量は, 3時間の培養ではG-LDLとN-LDLに差がなかったが, 6時間以上の培養ではG-LDLがNLDLに比して有意に多かった. 以上より, MφでのG-LDL取り込み活性は, 高血糖の持続期間に影響されず, 培養時間に依存することが示唆される.
  • 郵便検診®への適応検討
    三宅 智恵子, 植田 美津江, 通木 俊逸, 春日井 達造, 坂本 信夫
    1997 年 40 巻 12 号 p. 791-794
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乾燥ろ紙血を使用し, HbA1cの測定を行い, 糖尿病郵便検診への適応を検討した. 乾燥ろ紙血を溶血剤にて抽出し, HbA1cはラテックス凝集法で, Hbはアルカリヘマチン法で測定した. 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法とラテックス凝集法との相関はr=0.978, 全血検体と乾燥ろ紙血検体との相関はr=0.980と良好な相関関係が認められた. 乾燥ろ紙血検体の再現性は, 変動係数 (CV) 1.88~4.48%とろ紙を使用することによる, データのバラツキはなく同時再現性が確認できた. 乾燥ろ紙血を郵便で送付することによる温度変化と経日による影響を考慮し,-20℃, 5℃, 25℃, 50℃の4条件に保存し安定性を確認した. いずれの条件でも免疫活性は保持されており郵便検診への適応が示唆された.
  • 東山 みのり, 長坂 昌一郎, 上野 修市, 中村 友厚, 斎藤 孝子, 六角 久美子, 林 廣子, 藤田 延也, 藤沢 元郎, 福田 修一 ...
    1997 年 40 巻 12 号 p. 795-800
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は父方に糖尿病の家族歴を有する22歳の男性. 発症前体重92kg, BMI 32.6と肥満歴を認める. 1996年3月に検診で初めて尿糖を指摘され, 4月より口渇・体重減少・全身倦怠感等が出現した. 近医受診の際糖尿病と診断され入院した. 同院入院時, 血糖928mg/dl. 翌日より乏尿・血圧低下・意識障害を来し, 当院へ転院となった. 当院転院時, 血糖1127mg/dl, 血清Na171mmol/l, クレアチニン5.6mg/dl, CK16723mU/mlであり, 高浸透圧性昏睡・急性腎不全・横紋筋融解症と診断した. 経過中DICを併発したが, 輸液・インスリン持続静注等の保存的治療により軽快した. ケトアシドーシス発症の若年肥満NIDDMの報告が多いが, 本症例の様に若年者でありながら脱水・高浸透圧を主徴とし, 重篤な合併症を併発しうる症例もあり, 臨床上注意を要すると考え報告した.
  • 早川 哲雄, 野村 岳而
    1997 年 40 巻 12 号 p. 801-806
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性で, 18年のインスリン非依存型糖尿病の罹病歴を有していた. 平成7年12月頃より, 両下肢のしびれが出現し, 平成8年10月, 糖尿病性胃腸障害が疑われ入院となった. その後, 両下肢のしびれは徐々に増強し, 平成9年1月, 便秘, 腹痛, 下痢を認め再入院となった. 腹部単純X線と腹部CTで, 小腸に含気性嚢腫を認め, 絶食にて嚢腫は消失し, 画像検査と臨床経過より腸管嚢胞様気腫と診断された. 発症前後で網膜症と腎症の程度は変化なかったが, 微小神経電図法を用いた検討では, 糖尿病性神経障害が悪化していた. 本例は, 機械的腸管閉塞の原因となるものは認められず, 糖尿病性神経障害が, 腸管嚢胞様気腫の発症に関与した可能性が考えられた. 糖尿病性胃腸障害に類似した症状を呈するもので, 腸管嚢胞様気腫を発症する症例も存在すると思われ, 腸管嚢胞様気腫は糖尿病性胃腸障害との鑑別疾患として重要と考えられた.
  • 多田 薫子, 浅野 道子, 鈴木 誠司, 川上 康, 坂内 千恵子, 小田原 雅人, 松島 照彦, 奥田 諭吉, 山下 亀次郎
    1997 年 40 巻 12 号 p. 807-812
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性. 72歳時に乳癌にて左乳房切除また20年来の糖尿病を有し, そのコントロールは不良であった. 1994年突然, 左足部の疼痛が出現し他院受診. 単純X線で異常ないため経過観察されていたが改善なく, 翌年MRI施行したところ左距骨の壊死を認め本院入院となった. 骨壊死の原因としては骨髄炎や乳癌骨転移が考えられたが, 炎症所見や他の転移巣等はなくいずれも否定的であったため, 無腐性距骨壊死と診断された. 一般に本症は骨折や外傷などに引き続いて発症することが知られているが, 症例では先行する外傷等は認めなかった. 一方, 糖尿病の骨病変ではCharcot関節が有名であり, その発症は無症状に緩慢に経過するとされていたが, 近年画像検査の発達により初期より様々な骨変化をきたすことが知られてきた: 症例もこの一亜型と考え, 免荷装具使用したところ症状の改善を認め, 糖尿病患者の骨関節病変をみるうえで留意すべき症例と考えられた.
  • 八十 新治, 西岡 千晴, 細岡 哲也, 日野 泰久
    1997 年 40 巻 12 号 p. 813-815
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) にみられる高血糖は, 糖代謝異常をますます悪化させる重要な病因の一つと考えられている.そこで, 耐糖能異常 (IGT) とNIDDMにおける空腹時および食後血糖とインスリン分泌との関係を検討した. インスリン基礎分泌は, 空腹時血糖120mg/dlで, 追加分泌は, 食後2時間血糖160mg/dlで頂値となり, 血糖の上昇に伴い低下した.したがって, インスリン分泌の抑制を阻止するには, 上記の値以下に血糖コントロールする必要性が示唆された.
  • 森 豊, 村川 祐一, 横山 淳一, 田嶼 尚子, 池田 義雄
    1997 年 40 巻 12 号 p. 817-820
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    インスリン非分泌系血糖降下薬の長期服用がNIDDM患者の内因性インスリン分泌能に及ぼす影響を検討した. 12カ月間のアカルボーズやメトフォルミン治療は, 75g0GTTにおけるIRI/血糖面積比を有意に増加させ, メトフォルミン治療は初期インスリン分泌反応を増加させた. インスリン非分泌系血糖降下薬の血糖降下作用には, Glucose Toxicityの解消による膵β細胞機能の回復が関与している可能性も考えられた.
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