糖尿病患者 (NIDDM) を対象にして, ベラプロストナトリウム (BPS) の血清総レステロール (TCH) 値低下に対する効果を検討した. 23名のNIDDM患者に, BPS (120μg/日) を12週間経口投与した. BPS投与後の血清TCH値の変動は, 重回帰分析を用いて解析した. BPS投与12週後のTCH, HDLコレステロール (HDL-CH), 中性脂肪 (TG) 値は, 有意な変動を示さなかった. BPS投与12週後のTCH値の変動と有意な相関を示したのは, 投与前のTCH値 (partial r=-0.51826, p<0.025) とHDL-CH値 (partial r=0.60082, p<0.005), およびBPS投与12週後のHDL-CH値の変動 (partial r=0.69876, p<0.005) であった.TCH値の変動は, 空腹時血糖, HbA1c値, およびこれらの変動とは有意な関連を示さなかった. BPS投与による血清TCH値は, 投与前のTCH値およびHDL-CH値と関連して変動することが示された. すなわち, BPS投与前のTCH値が高くHDL-CH値の低い患者は, BPS投与後TCH値がより低下することが示された. BPS投与後に血清TCH値が増加した患者は, 投与前TCH値がむしろ低い患者に認められ, HDL-CH値も増加した. BPSは, 糖尿病患者, とくに高TCHや低HDL-CH血症の患者に有用であった.
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