本研究の目的は, 糖尿病における腎糸球体の活性酸素消去能の変化を明らかにすることである. ストレプトゾトシン (STZ) 投与8週後の糖尿病ラットの腎から糸球体を単離し, 糸球体の過酸化水素 (H
2O
2) 消去能およびグルタチオンレドックスサイクルを測定し, 健常対照ラットのそれらと比較検討した.糖尿病ラットでは, 糸球体の総H
2O
2消去能が対照ラットのそれより低下しており, H
2O
2が低濃度 (10μM) の条件下ではグルタチオン依存性消去能が, 高濃度 (20μMおよび80μM) の際は, カタラーゼ依存性消去能が低下していた.さらに, 糖尿病ラットの糸球体ではグルタチオンペルオキシダーゼ活性の上昇, 酸化型グルタチオン含量の増加, グルタチオンリダクターゼ活性の低下などの変化が認められた.以上より, 糖尿病ラットの糸球体のH
2O
2消去能は低下しており, その機序としてカタラーゼ活性の低下とグルタチオンレドックスサイクルの異常の両者が考えられた.
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