糖尿病
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40 巻, 9 号
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  • 突然死例と非突然死例の比較
    阿部 信行, 牧野 直樹, 矢野 健一
    1997 年 40 巻 9 号 p. 575-581
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    1978年より1996年までの18年間における本院にて診療した糖尿病患者を観察し, その経過中に死亡した症例 (94名) を解析し, 突然死例 (21名) と非突然死例 (74名) について臨床的に比較検討した. 突然死は発症から24時間以内の予期せぬ内因性死亡と定義した. 突然死群と非突然死群の間には年齢, 罹病年数, 死亡までの最終観察期間や死亡前の治療内容には両群間に差を認めなかった. 死亡前に行った臨床検査 (HbA1c, 血清脂質) や安静時心電図, 心臓断層超音波検査においても両群間に差を認めなかったが, 網膜症の合併率は突然死群が有意に高かった. さらに, 突然死群と非突然死群の中から腎症または網膜症を合併した症例に分けて臨床的特徴 (罹病年数, CV値, HbA1c, 各種脂質, QTc時間, 左室駆出率) を分析したところ, 腎症合併例では上記のいずれの指標とも両群間に有意差を認めなかった. 一方, 網膜症を合併した突然死群は左室収縮期径が非突然死群のそれより有意に大であり, 左室駆出率が非突然死群より有意に低下を認めた. しかし, 他の指標は両群間に差は認めなかった. 以上の結果より, 糖尿病患者の突然死例では網膜症を合併し, しかも心機能低下例が多くみられた. このことは糖尿病診療を行う上で参考になると思われる. 一般に突然死例の死因は不明な例が多く, この中には不整脈死がかなり多く含まれていると推測される. 今後, 糖尿病患者の突然死の病態が解明されその予防対策が確立することが望まれる.
  • 高橋 良当, 高山 真一郎, 伊藤 威之, 大森 安恵
    1997 年 40 巻 9 号 p. 583-587
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病性単腓骨神経障害は糖尿病性神経障害の中でも稀で特異な合併症である. 過去13年間に当センターで経験した糖尿病性単腓骨神経障害15例の発症機序を臨床的, 電気生理学的に検討した. 神経伝導検査から, 患側の腓骨神経MCVは健側より有意に低下しており, 症状軽快とともに改善した. 腓骨神経刺激時のM波振幅比 (遠位刺激/近位刺激) は, 患側が健側より有意に大きく (4.36±3.3 vs 1.5±0.62), 遠位刺激時のM波振幅は患側と健側とで有意差がみられず, 患側のM波持続時間も遠位刺激と近位刺激で有意差がなかった. 患者はやせた男性に多く, 血糖コントロールは不良で, 神経症状は垂れ足や歩行障害などの運動麻痺症状が主であった. 以上より, 糖尿病性単腓骨神経障害の主な機序として, 総腓骨神経伝導ブロックが考えられた.
  • F-SCANシステムの有用性
    金森 晃, 青木 主税, 梅澤 慎一, 神 康之, 矢島 義忠
    1997 年 40 巻 9 号 p. 589-598
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病性壊疽による足変形および趾切断患者2例を対象にF-SCANシステムを用いて足底圧分布を測定し, 得られたデータに基づいて壊疽再発予防を目的として整形外科的矯正靴を作製した. 2例いずれも市販靴歩行では健常者 (12例) と異なる部位に過剰圧を認めた. 患者用に作製した整形外科的矯正靴では左右および部位間の圧格差是正, 過剰圧の軽減・分散効果が認められ, とくに靴着用時間の長い足変形患者では壊疽再発予防やQOL向上に有用であった. 一方, 趾切断患者では整形外科的矯正靴使用後も壊疽再発を来したため, 室内用スリッパを作製し胼胝形成抑制効果が認められた. また各種クッションの素材により減圧効果に差があることが明らかとなった. FSCANによる足底圧分布測定に基づく整形外科的矯正靴の作製, 使用は糖尿病性足変形患者の壊疽再発予防に有用である. また, 日本においては患者の職業や生活内容に則した室内用履き物の作製, 着用が重要である.
  • 三浦 順之助, 水谷 扶美, 中神 朋子, 朝長 修, 宇治原 典子, 内潟 安子, 高橋 千恵子, 大森 安恵, 清水 美奈, 川島 眞
    1997 年 40 巻 9 号 p. 599-605
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Acquired reactive perforating collagenosis (ARPC) は糖尿病や慢性腎不全を伴う成人に特有の丘疹が多発する疾患で, 皮膚表皮から真皮内の変性した膠原線維を排除するための免疫反応と考えられている. われわれは透析導入後に軽快したARPCの1症例を経験した. 症例は糖尿病と慢性腎不全を合併した31歳男性で透析導入目的に入院した. 入院約1年前より中心臍窩を有する癌痒感の強い丘疹が全身に多発していた. 皮膚生検では, 表皮の一部は破壊され陥凹部には角栓形成がみられた. 角栓内には好塩基性の変性物質を認め, 変性物質内への膠原線維の貫入像を認めた.
    また, 真皮上層では, 血管周囲性にリンパ球を主体とする炎症細胞の浸潤を認め, これらの所見よりARPCと診断した. 興味あることに, 本症例では透析開始後より徐々に皮疹が軽快した. 透析療法により尿毒症物質が除去され, 膠原線維の変性が減少したためと推察された.
  • 鈴木 吉彦, 森永 正二郎, 渥美 義仁, 細川 和広, 島田 朗, 朝比奈 崇介, 松岡 健平
    1997 年 40 巻 9 号 p. 607-612
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. 48歳時糖尿病発病後放置していた. 過飲酒をし夜間に下肢こむらがえりが持続し, その後下腿前面に腫張と発赤が出現し脛骨神経麻痺を呈した. 入院後GOT, CPKが上昇し, 体温血沈の上昇を認めた. CTでは前脛骨部に低吸収像を, 超音波検査Bモードでは同部の腫張と高いエコーレベルを認めた. ドプラーでは同部位への主還流動脈血流は保たれ, 還流静脈血流低下および側副路血流増加を認めた. 手術では前脛骨筋, 長趾伸筋, 長母指伸筋に変色を, 病理所見にて同筋の虚血性壊死像を認めた. こむらがえりが発症した背景には, 過飲酒, 高血糖, 肝障害, 神経障害など多数の誘因があり, 異常な筋収縮が持続した結果, 筋肉内圧上昇から筋虚血, 筋腫張をきたし前脛骨区画症候群を起こしたと考えた. こむらがえりを原因とし前脛骨区画症候群を示した糖尿病例は報告がなく貴重な症例である. また画像所見は本症の診断と病態解明にとり重要な示唆を与える.
  • 勝盛 弘三, 兼村 俊範
    1997 年 40 巻 9 号 p. 613-618
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    症例は22歳, 女性. Basedow病, IDDM加療中に, Sick day時インスリン注射を中止したため, 血糖995mg/dl, PH6.78, HCO3 4.5mmol/l, 総ケトン体3325μmol/lとケトアシドーシスを発症, 緊急入院となった. 補液と, 持続的経静脈的インスリン注入により翌日には血糖200mg/dl前後まで改善した. が, 急激に血小板減少を認め, 同時に溶血性貧血も急激に進行した. PAIgG 216.0ng/107cellsと高値, 骨髄は正常であり, 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断した. 連日プレドニン40mg投与したが低反応なため, 2日間パルス療法 (メチルプレドニゾロン1000mg/日) 施行後改善傾向であった. DICも合併したがITP, 溶血性貧血改善とともに軽快した. 本症例はGAD抗体, TSH receptor抗体, PAIgGと高値を示し, 自己免疫破綻による多疾患合併例であり, 興味深く一報する.
  • 渋谷 雄平
    1997 年 40 巻 9 号 p. 619-623
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 男性. 26歳時に健診で糖尿病を指摘されるも放置していた. 30歳時に口渇, 多飲多尿出現し, 近医でインスリン治療が開始されたが, 平成6年8月HbA1c13.6%と血糖コントロール不良となり来院した. 下腿に静脈瘤や潰瘍瘢痕を認め, 体毛は薄く, 腋毛・恥毛は粗であった. 女性化乳房あり. 外性器の発育は不良で, 睾丸は硬く小指頭大. 前腕は回内・回外不能 (橈骨・尺骨癒合症) であった. 増殖性網膜症, 腎症, 末梢神経障害を認めた. 一日尿中Cペプチド排泄量の低下とグルカゴン負荷で血中Cペプチドの反応低下を認めた. 抗GAD抗体とICAは陰性. 血中テストステロンの低値とゴナドトロピンの上昇を認め, 原発性性腺機能低下症と診断した. 染色体分析は48, XXYYであった. Klinefelter症候群では糖尿病を合併する頻度が高いとされており, 本邦でも両疾患の合併例の報告は散見されるが, それらの核型のほとんどが47, XXYあるいはそのモザイクであり, 48, XXYY症候群に糖尿病を合併した本例は貴重な症例と思われる.
  • 鈴木 竜司, 丸山 太郎, 春日 明, 小澤 ゆか子, 岩崎 良二, 鈴木 裕也
    1997 年 40 巻 9 号 p. 625-630
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    われわれは, はじめインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) と考えられたが, GAD65抗体が陽性で徐々にインスリン分泌が低下しslowly progressive IDDM (SPIDDM) と考えられた2症例を経験した. 症例1は, 48歳の女性で, 体重減少にて発症し, 当初は食事療法でコントロールできたが, 初診時よりGAD65抗体, インスリン自己抗体 (IAA), 膵島細胞抗体 (ICA) がいずれも陽性で, 3年後にインスリン治療が必要になった. 症例2は, 63歳の男性で, 口渇と体重減少で発症し, GAD65抗体, IAAが陽性で, ICAは陰性であった. 食事療法のみでコントロールできたが, 4年後にインスリン治療が必要になった. 2例とも経過とともに進行性のC-ペプチドの低下と体重減少が認められた. 最近簡便に測定できるようになったGAD65抗体が, NIDDMにおけるインスリン依存性の予知に有用であることを示唆する貴重な症例と考えられた.
  • 西山 裕之, 梅野 美一, 富桝 りか, 小柳 孝太郎, 吉田 昌人, 藤田 尚宏, 太田 善郎
    1997 年 40 巻 9 号 p. 631-638
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 女性. 1993年, 糖尿病と診断され, 食事療法と経口血糖降下薬にて治療を受けていた. しかしながら, 1995年10月より治療を中断1996年11月4日より感冒様症状を自覚するも放置同年11月8日, 長女の出産に立ち会い, 帰宅後に飲酒. その後, 悪心, 嘔吐, 頭痛を自覚するため近医を受診しかしながら, 自覚症状の改善が得られず, 意識混濁も出現したため当院に転院となった. 血糖567mg/dl, 動脈血ガス分析では, pH 6.750, HCO3-1.9mmol/lと代謝性アシドーシスを呈し, 尿中, 血中にケトン体の増加が認められたことから糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) と診断した. 治療開始後, 呼吸困難感が増強. 治療開始6時間後の胸部X線写真では肺水腫様の所見が認められ, 低酸素血症が急速に進行したため, 呼吸管理を行った. また, 経過中, CPK2, 668IU/l, 血清ミオグロビン3, 200ng/ml, 血清アルドラーゼ23.8IU/lと高値を示し, rhabdomyolysisを合併していると考えられた. さらに, DIC, 脳梗塞も併発したが, 補液, インスリン持続注入, ステロイドパルス療法, 蛋白分解酵素阻害薬, ヘパリン, 抗生物質等の投与により改善した. DKAにARDSが合併することは稀であるが, その死亡率は高く, 早期診断と適切な治療が必要であると考えられた.
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