症例は50歳, 男性, 1992年糖尿病と診断され, インスリン治療を開始されたが, 1995年12月より自己判断で治療を中止していたところ, 1996年9月発熱を認め入院した, 空腹時血糖244mg/d
l, HbA
1c17.7%, 体温39.2℃, 白血球11, 200/μ
l, CRP強陽性, 腹部CT検査で肝左葉内側区に内部が低吸収域で, 周囲がリング上に造影される類円形の径2cmの腫瘤がみられ, 右腎外側にも境界不明瞭で, 内部が不均-に造影される5×4cmの楔状の低吸収域が認められた. 胸部CT検査で左上葉, 両側下葉に多発性結節影, 肺血流シンチで左上葉の結節に一致して欠損像を認めた. 静脈血, 喀痰, 尿および肝左葉内側区の腫瘤穿刺液から
Klebsiella pneumoniaeが同定されたことから, 急性限局性細菌性腎炎 (AFBN), 敗血症性肺塞栓症 (SPE) および化膿性肝膿瘍と診断した. 血糖のコントロールおよび抗生物質投与により発熱, 炎症所見, 膿瘍およびSPEは消失した. AFBN, 化膿性肝膿瘍, SPEの合併は稀であるが, 糖尿病患者では易感染性により稀な感染症が惹起されることが多い. 厳格な血糖コントロールが糖尿病に合併する感染症の発症阻止および治療に重要である.
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