[目的] 年齢でマッチされた未治療, 未介入下にある男性の耐糖能境界型 (IGT;n=22, 49±12歳), 軽症2型糖尿病 (NIDDM;n=36, 50±7歳), IGT+NIDDM (n=58, 49±9歳), および健常コントロール群 (C;n=167, 46±9歳) 各4群の性ホルモンおよび脂質代謝特性を比較検討するとともに, 4群の脂質代謝指標に及ぼす体力 (推定最大酸素摂取量;VO
2max), CT検査による腹部脂肪蓄積 (コントロール群は未測定), インスリン抵抗性スコアー (HOMAモデル), 性ホルモン, および性ホルモン結合蛋白 (SHBG) の独立した関与を検討する.
[成績] IGTとNIDDM群のBMIおよびWHRはC群に比べ有意に高値であった. IGTおよびNIDDM両群の高比重リポ蛋白コレステロール (HDL-c) と遊離テストステロン水準はC群に比べ有意に低値であった. NIDDM群のSHBG水準はC群に比較し有意に低値であった, インスリン抵抗性スコアーはNlDDM>IGT>C群の順に高値であった. IGT+NIDDM群では, C群に比較しHDL-c, 遊離テストステロン, およびSHBGは有意に低値, 一方総コレステロール/HDL-c比, 低比重リポ蛋白コレステロール/HDL-c比, 空腹時血糖, 空腹時インスリン, およびIRスコアーは有意に高値であった, 耐糖能異常者群の遊離テストステロンおよびSHBG水準の低値は, BMIとWHR双方の影響を統計的に調整した後でも認められた, 脂質代謝指標を従属変数とした重回帰分析を行った結果, C群における性ホルモンおよびSHBGは有意な独立変数ではなかった. 一方, 耐糖能異常者群, 特にIGT群における総テストステロン, DHEA-sとSHBGは脂質代謝指標の有意な独立変数であった.
[結論] 男性耐糖能異常者では, 生理的範囲内ではあるが, 相対的な性腺機能低下の存在に加え, IGT群の脂質代謝特性の調節機序の一部にテストステロン, DHEA-s, あるいはSHBGの独立した関与が示唆された.
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