超速効型ヒトインスリンアナログであるインスリンアスパルト (IAsp) の臨床試験として, インスリンの頻回注射療法 (Basal-Bolus療法) を実施中の1型糖尿病 (IDDM) 患者を対象に, 速効型ヒトインスリン (HI) を対照薬として, IAspを24週間投与した際の有効性および安全性を検討した. 本治験においては, 食事前の追加インスリンとして, IAspまたはHIを各々毎食直前または食事30分前に必要量投与し, 基礎インスリンの1日1回または2回投与を併用する治療法を採用した.
205例 (IAsp投与群: 143例, HI投与群: 62例) を対象として検討した結果, 有効性の主要評価項目であるHbA1cについて, 変化量の差および差の95%信頼区間は, それぞれ-0.18%および (-0.41, 0.05) であり, 信頼区間の上限は非劣性の許容限界 (06%) 未満であった, すなわち, 24週間の治療を行った場合, 血糖コントロールの指標であるHbA
1cについて, IAspは従来の速効型ヒトインスリンと比較して劣っていないことが確認された. また, 副次的評価項目である食後90分血糖値については, 変化量の差および差の95%信頼区間は, それぞれ-38.9mg/dlおよび (-70.0, -7.8) であり, IAsp投与群で有意な低下が示された (Wiboxon検定: p=0.0092).
安全性に関しては, 低血糖に代表される有害事象, 臨床検査項目, インスリン抗体, 血圧などを評価項目として検討した結果, いずれも既存の速効型ヒトインスリンと同様の成績が得られた.
以上のように, IAspは糖尿病患者におけるインスリンの頻回注射療法において, 食直前投与により適用できる有用なインスリン製剤であると考えられる.
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