糖尿病
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44 巻, 3 号
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  • 腸管灌流での検討
    石原 領子, 宇佐 美勝, 三浦 俊宏, 谷川 敬一郎
    2001 年 44 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    腸からのグルコース吸収に及ぼす糖尿病の影響について, 自然発症2型糖尿病モデル動物のGKラットを用いて検討した. 10~13週齢のWistarラット及びGKラットを24時間絶食後, Levinらの方法で小腸灌流標本を作製した.緩衝液のグルコース濃度を60, 140, 及び300mg/dlに調整し, 上腸管膜動脈より20分間灌流後, 十二指腸から396グルコースを30分間灌流した. 門脈より流出した灌流液のグルコース濃度を測定し, 前灌流からの増力口分を小腸から吸収されたグルコース量として算出した. Wistarラットでは, 動脈側のグルコース濃度を増加させると門脈灌流液中のグルコース濃度の上昇度は明らかに減少した. 一方, GKラット門脈中のグルコース濃度は, 動脈側のグルコース濃度を増加させても全く変化を認めず, Wistarラットの門脈内のグルコース濃度より大であった. これらの成績より自然発症糖尿病のGKラットでは, 血糖上昇の原因の一部は小腸からのグルコース吸収の増力口によることが示唆された.
  • 長谷川 承, 荷見 澄子, 勝盛 弘三, 苅部 幸代, 左向 敏紀, 岩本 安彦, 大森 安恵
    2001 年 44 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    人と同様に犬にも食生活の変化が見られ肥満が問題となっている. そこで高脂肪高力ロリー食 (HFCD) を犬に長期投与し, 糖代謝の変化を検討した. ビーグル犬6頭に対し1日最低必要力ロリーと同力ロリーのラードを混合したHFCDを3カ月間投与し (平均体重増加率41.2%), 投与前後で静脈内糖負荷試験 (IVGTT) およびグルコースクランプ試験 (GCT) を行った. 空腹時インスリン値およびIVGTTにおける血糖半減期に変化はなかったものの, 血漿インスリンの最高値および総分泌量は有意に増力口した. またGCTでは2段階のインスリン注入量 (2.5および5.0mU/kg/min) で定常グルコース注入量はいずれも有意に減少した (2.5: 15.8±5.0 vs 10.4±3.7mg/kg/min, 5.0: 20.9±3.2 vs 13.8±3.9mg/kg/min). 以上からHFCDの3カ月間投与により, 内因性インスリンの過剰分泌反応と共に, 末梢の糖取り込み抑制が主体となるインスリン抵抗性が誘起された.
  • 清水 孝郎, 笹隈 富治子, 長谷川 恭一, 佐々木 陽
    2001 年 44 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    インスリノーマ診断において5種のインスリン測定キットを検討した上キットE, S, Lはポリクローナル抗体を用いるキットであり, キットR, ENはモノクローナル抗体を用いるキットである. プロインスリンによる干渉はキットLで最も強く, ついでキットE, Sであり, キットR, ENにはほとんど干渉しなかった. 非インスリノーマ患者のIRIはキットENで5-15%低く測定されたが, キット間の差は小さかった. これに対しインスリノーマ患者のIRIはキット間で大きく異なった. キットR, EN間では近似したIRI値を示したが, キットE, S, LによるIRIはキットR, ENの平均値の3.7, 3.5, 5.1倍と高く測定された. Fajans指数陽性率もキットL>キットE, S>>キットR, ENの順であった. このFajans指数陽性率の差はカットオフ値の変更では補正できなかった. インスリノーマ診断にキットR, ENを用いるときはプロインスリンを別個に測定することが勧められる.
  • 神 康之, 金森 晃, 藤田 芳邦
    2001 年 44 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病患者150例を対象に, Semmes-Weinstein Monofilaments (4.17/1g, 5.07/10g, 6.10/100g) を用いて拇趾底部の触覚閾値 (TPT) を半定量し, アキレス腱反射, 振動覚閾値, 神経伝導速度, 電流知覚閾値, 起立性低血圧および神経障害自覚症状との整合性について検討した. また, 健常者52例のTPTについて検討した. 健常者のTPTは51例 (98%) で4.17/1g以下であった. 糖尿病患者のTPTは4.17/1g 87例, 507/10g52例, 6.10/100g11例で, 上記すべての神経学的検査所見および神経障害自覚症状とTPTは有意な相関を示した. TPTが高値であるほど他の神経学的検査所見の異常は高度であり, 糖尿病足病変の既往も多く, 特に触覚閾値6.10/100g例では90.9%と高頻度に糖尿病足病変を認めた. TPTは他の神経学的検査と高い整合性を示し, 糖尿病性神経障害の重症度判定に有用であると考えられた.
  • 辻 みさ, 田中 剛史, 三崎 盛治
    2001 年 44 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は, 31歳の1回経産婦. 前回妊娠は37週で正常分娩. 今回の妊娠においても妊娠34週まで定期検診で尿糖は陰性で経過は順調であった. 平成10年7月19日 (妊娠36週) より急に口渇が出現しその翌日, 当院産科受診. 受診時, 随時血糖456mg/dlを示し, 緊急入院となった. non stress test (NST) にて胎児仮死と診断され, 緊急帝王切開術が施行された. 術中血糖値は600mg/dl, 尿ケトン体4+であったが, インスリン投与にて改善, 生児を得た. 本症例は妊娠後期に初めて発見された妊娠糖尿病であるが, ケトアシドーシスで急性発症し, 分娩後に測定した尿中CPRとグルカゴン負荷試験による血中CPRが低値であった. 著しいインスリン分泌低下は発症後1年以上持続し, 自己抗体は陰性であったことより, 膵酵素の上昇は認められなかったものの最近Imagawaらにより報告された非自己免疫性劇症1型糖尿病に類似の病態と考えられた.
  • 小杉 栄二郎, 比嘉 眞理子, 山室 渡, 浜谷 敏生, 中野 眞佐男, 佐藤 通洋
    2001 年 44 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性. 20年来の2型糖尿病にて加療中であったが, 血糖コントロールは不良であった. また, 1年前より帯下があるも放置しており, 最近悪臭を伴うようになってきた. 4日前から発熱, 右下腹部痛, 腰痛, 下痢および嘔吐があり当科入院となった. 入院後, インスリン頻回注射による血糖コントロール, 補液および抗生剤の投与にて第3病日には下痢, 嘔吐は消失したが, 下腹部痛, 腰痛および帯下は増強し, さらに炎症反応の増悪があり, 腹部超音波とCTスキャンにて卵管留膿腫と腸腰筋膿瘍が疑われた. 腸腰筋の超音波下経皮的吸引生検を行い, 膿性分泌物を採取した. また, 同膿瘍と卵管および子宮との交通を認め, 卵管留膿腫による腸腰筋膿瘍と診断した. 膿からはKlebsiell a ozanenaeを検出し, 膿瘍ドレナージと抗生剤投与を行い改善した. 近年, 腸腰筋膿瘍は画像診断の進歩や高齢化に伴い増力口しており, 中でも糖尿病を合併した例は30~60%と高率である. しかし, 本例のことく卵管留膿腫から上行性に感染し腸腰筋膿瘍を形成した例はわれわれが調べた限り本症例は2例目であった.
  • 五十嵐 雅彦, 吉野 真人, 斉藤 保, 山口 宏, 平田 昭彦, 大沼 寛, 大門 真, 富永 真琴, 加藤 丈夫
    2001 年 44 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性, 56歳より糖尿病と診断され, 食事療法のみで血糖コントロールは良好であった. しかし, 1999年12月より血糖コントロールが急速に悪化し, 2000年3月初旬には感冒様症状が出現したため当科外来受診した. その際に, 炎症症状と高LDH血症, 貧血があり不明熱として当科に入院したが, 表在性リンパ節腫脹などは認めなかった, 検査所見では, 貧血と血小板減少症, 低蛋白血症, 高LDH血症, 血清CRP及びフェリチンが高値であったが, 肝炎ウイルス抗体と腫瘍マーカー, 血液培養などは陰性であった. 骨髄穿刺で胞体が広く血球貧食像を示す組織球が増加しており, また可溶性IL-2レセプター (sIL-2R) も高値で血球貧食症候群と診断した. 初回のパルス療法で貧血と血小板減少症, 高LDH血症は一時軽快したが, 再燃後は各種治療に反応せず汎血球減少と多臓器不全で死亡した. 経過中, 血清フェリチンとsIL-2Rは持続的に高値を示し, マクロファージの活性化に伴う高サイトカイン血症が耐糖能の急速な悪化に影響を及ぼしたと考えられたので報告した.
  • 児玉 桂一, 島田 朗, 清水 隆之, 篠田 啓, 丸山 博, 猿田 享男
    2001 年 44 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性, 14年前に糖尿病を指摘され, インスリン療法 (中間型: 朝14単位, 夕4単位) が導入された. 1999年1月14日, 突然, 腰痛と悪寒を伴った発熱を認め, 16日には右膝関節痛が出現した, 続いて, 23日には右眼痛と硝子体混濁による急激な視力低下を認めた. 関節液培養と血液培養より肺炎球菌が検出され, 腰椎MRIにて第23腰椎椎体の低信号域が確認され, 肺炎球菌による敗血症を伴った化膿性膝関節炎, 化膿性脊椎炎, 細菌性転移性眼内炎と診断された. 早期からの抗生剤 (FMOX) 投与と硝子体切除術等により当患者の病態は軽快した. いずれも比較的稀な疾患で, 背景因子は糖尿病が大半を占めるが, 早期発見, 早期治療が予後の好転に重要である. 糖尿病患者が発熱とともに腰痛, 関節痛, 眼痛, 急激な視力低下等を訴えた場合は上記疾患を念頭に診療を行う必要がある.
  • 井出 俊光, 丸山 太郎, 春日 明, 岩崎 良二, 鈴木 裕也
    2001 年 44 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の男性. 1994年刊月より口渇, 多飲, 多尿を自覚. 1995年1月より症状増悪し2週間で20kgの体重減少. 同年1月30日, 意識障害が出現し入院となった, 随時血糖1272mg/dl, HbA1C 13.2%の糖尿病性ケトアシドーシスと診断し輸液とインスリンにより軽快. 抗GAD65抗体0.999 (index), IAA 201.7nU/mlと高値であったが食事と運動療法にてインスリン必要量は徐々に低下, 内因性インスリン分泌の増加を認めた. 1995年4月より現在までコントロールは食事と運動療法で極めて良好で, 内因性インスリン分泌能も保たれている. ケトアシドーシスで発症し, 抗GAD65抗体, IAA陽性だが, 5年以上食事療法と運動療法で良好なコントロールを得ている極めて稀な1型糖尿病であり, 発症直後の適切なインスリン投与とその後の非常に良好な血糖コントロールが膵β細胞の破壊を抑制し, 長期間にわたってインスリン依存への進行を抑制したと考えられた.
  • 非糖尿病者との比較及び自己管理行動との関連
    中川 朋子, 矢田 眞美子, 谷口 洋
    2001 年 44 巻 3 号 p. 247-251
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    本研究では堀毛の日本版Health Locus of Control (以下JHLCと略す) 尺度と木下の糖尿病自己管理行動尺度を用いて自己記入式質問用紙を作成し, 大学病院通院中の糖尿病患者および非糖尿病の地域生活者を対象にアンケート調査を施行した, その結果糖尿病患者は非糖尿病者よりJHLCのInternalとProfessionalの得点が高かった. また, 糖尿病患者の中で自己管理行動の高得点群が低得点群よりJHLCのFamilyの得点が高かった. 従って, 糖尿病患者は非糖尿病者よりInternalとProfessionalのHealth Locus of Controlが強く, 自己管理行動している糖尿病患者はFamilyの恩恵を受けていると感じていると考えられた.
  • 浅岡 弘
    2001 年 44 巻 3 号 p. 253
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 藤沼 宏彰, 阿部 隆三
    2001 年 44 巻 3 号 p. 254
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 2001 年 44 巻 3 号 p. 255-282
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 富永 真琴, 小林 功, 桑 克彦, 武井 泉, 星野 忠夫, 芳野 原, 菅野 剛史, 片山 善章, 葛谷 英嗣, 桑島 正道, 田港 朝 ...
    2001 年 44 巻 3 号 p. 283-286
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    日本糖尿病学会の「糖尿病関連検査の標準化に関する委員会」は「グリコヘモグロビン」の標準化に関する委員会 (委員長: 島健二) の活動を引き継ぎ, 1999年9月に第6回グリコヘモグロビン精度管理調査を2077施設を対象に行った。その結果, JDS推奨法に従っている施設の変動係数 (CV) は低濃度と高濃度の2試料とも4.696であり, 施設間差は許容できる範囲にあると判断された。方法別ではHPLC法のCVは1.9~4.496であったが, 免疫法のCVは3.4~15.2% とやや大きかった。また, 基準範囲の上限を日本糖尿病が推奨する58%としている施設が1997年の77.6%であったのに対し, 今回の調査では88.9%と増えていた。これらの結果, 島委員会が提唱した標準化が定着していることを確認できたが, このことは本委員会が検討している分析化学的な裏付けのある新たな標準化体系へのスムーズな移行にとって有利な状況と思われた.
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