症例は52歳の男性. 罹病歴14年の2型糖尿病で, 合併症はなく, 5年前よりインスリン療法を開始, HbA1cは696前後だった. 倦怠感を主訴に受診, 高血糖, 性器腫脹, 下腹部と右臀部の発赤を認め, 胸下部から鼠径部に捻髪音を触知した. X線写真上陰嚢内に点状ガス像を認め, ガス産生性Fournier's Gangreneの診断の下, 即日, 壊死層除去術を行った. 右坐骨直腸窩に魚骨を認め, 今回の感染の誘因と考えられた. 血液培養からは
B. fragilis, 陰嚢液から
E. coli,
Cl. perfringensが検出された。術後は敗血症, DIC, 急性腎不全に対して抗生物質投与, 抗凝固療法, 高圧酸素療法, 持続的血液透析濾過を行った. 入院4日目, 病変部拡大のため更に壊死層除去術を行い, 一部分層植皮術を施行した. その後全身状態は改善し, 皮膚欠損部に網状植皮術を行い, 入院88日目に退院となった. 重篤なガス壊疽であったが, 積極的な広範囲壊死層除去術と集中治療が救命に繋がったものと考えられた.
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