症例は72歳, 男性. 1993年肝硬変の診断, 1996年糖尿病の診断にて混合型インスリン1日2回投与し (朝22, 夕10単位), 血糖コントロール良好に経過した. 2001年10月から体重減少, 口渇, 倦怠感出現し, 血糖値554mg/d
lと増悪し, インスリン増量後も改善ないため当科を紹介され入院した. ヒトインスリン1日4回投与に変更し1日量190単位まで増量するも, 400mg/d
l以上の高血糖が持続した. 経過中に血中インスリン濃度異常高値, インスリン抗体価96%と著明な上昇が判明し, 速効型インスリンを超速効型インスリンアナログ (インスリンリスプロ) に変更したところ, 開始3日目には血糖値100mg/d
l台に低下し, 更に早朝の低血糖のため中間型インスリン中止と寝前の補食追加が必要になった. 退院時にはインスリンリスプロ3回, 計120単位で食前血糖120mg/d
l以下になった. 特異的抗体測定により, インスリンリスプロのアミノ酸配列変換部位への結合に関与した抗体の存在が考えられた.
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