症例は62歳男性. 18歳の時, 健診で尿糖を指摘される. 40歳代後半より, 薬物療法を開始し, 他院通院していた. 2004 (平成16) 年2月23日, A型インフルエンザ罹患後, 肺炎を併発したとのことで, 当院紹介入院となる. 随時血糖537mg/d
l, HbA
1c 9.9%, BUN 39mg/d
l, 血清クレアチニン (CRE) 0.9mg/d
l, CRP 40.2mg/d
l, 尿蛋白 (2+), 尿潜血 (2+). 胸部レントゲン, CT上両肺野に浸潤影を認める. 喀痰より
Staphylococcus aureus×10
7検出. 抗菌薬治療によりいったん軽快傾向であったが, その後, 両側胸水が多量に貯留. 非定型抗酸菌症が疑われたため, 3月12日, 呼吸器専門医が常勤する他院へ転院 (転院時BUN 11mg/d
l, CRE 0.6mg/d
l ). 転院先にて腎機能悪化が急速に進行. 4月7日, 透析施設のある当院に再転院. 再入院時, BUN 96mg/d
l, CRE 4.3mg/d
l. 両側胸水の貯留による呼吸不全の進行もあったため, 4月9日透析導入. 4月11日人工呼吸器管理となる. 4月12日, 再入院時に提出した検体で抗糸球体基底膜〔glomerular basement membrane (GBM)〕抗体が陽性と判明. 抗GBM抗体型急速進行性糸球体腎炎の合併を考え, ステロイドパルス療法をしたところ, 胸水の消退, 呼吸状態の改善を認め, 人工呼吸器からの離脱, 腎機能の改善をみた. 順調な回復をみせていたが, 5月14日, 脳梗塞を発症し, 5月17日, 永眠された. 糖尿病患者での急速な腎機能低下の進行は, 糖尿病腎症の悪化ばかりではなく, 糸球体腎炎の合併を念頭におく必要があると考えられた. 特に抗GBM抗体陽性例は稀であり, 示唆に富む症例であると考えられた.
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