糖尿病
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48 巻, 11 号
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原著
  • 永井 成美, 坂根 直樹, 森谷 敏夫
    2005 年 48 巻 11 号 p. 761-770
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 朝食欠食や食事中の三大栄養素の比率が食後の血糖値, 満腹感, エネルギー消費量, および自律神経活動に及ぼす影響を肥満関連遺伝子多型とともに比較検討したものである. 若年健常者8名に, 各被験者の体重1kgあたり22kcalに調整した総摂取エネルギーが等しい4試行の朝食と昼食の組み合わせ (CC : ご飯を主食とする高糖質食+高糖質食, SC : 欠食+高糖質食2食, FF : パンを主食とする高脂肪食+高脂肪食, SF : 欠食+高脂肪食2食) を4日間でランダムな順序で負荷し, 朝食前および朝食後6時間まで30分間隔で, 血糖値, Visual analog scaleによる満腹感, 呼気ガス, 心拍変動解析による自律神経活動を測定した. CC試行ではFF試行よりも朝食後3時間の血糖値, 満腹感, エネルギー消費量が有意に高く, 6時間の熱産生も4試行中最も高値であった. 高い満腹感や熱産生には有意差はなかったが自律神経系の関与が推察された. 朝食欠食 (SC, SF) 試行では熱産生が低く, 昼食後に心拍数の著増を認めた. また, UCP 1遺伝子のhomo変異 (GG) を有する者では熱産生が低い傾向が認められた. 以上の結果は, 耐糖能正常者において糖質を主体とする朝食の摂取が肥満予防に寄与する可能性とともに, 遺伝的背景へ配慮した予防の必要性を示唆するものである.
  • ―グルコースクランプ法を用いた検討―
    勝木 顕, 住田 安弘, 末松 三奈, 村嶋 秀市, 松本 和隆, 北川 良子, 赤塚 元, 堀 恭子, 中谷 中, 矢野 裕, 足立 幸彦
    2005 年 48 巻 11 号 p. 771-775
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    日本人メタボリックシンドローム症例のインスリン抵抗性をグルコースクランプ法[クランプ中の平均ブドウ糖注入率 (GIR)]を用いて検討し, 腹部CTにて評価した内臓脂肪蓄積との関連を検討することを目的とした. 対象は薬物療法を受けていないメタボリックシンドローム症例19名とした. メタボリックシンドロームの診断は診断基準に基き, 腹部CTにて評価した内臓脂肪断面積が100cm2以上に加え, 中性脂肪150mg/dl 以上, かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl 未満, 収縮期血圧130mmHg, かつ/または拡張期血圧85mmHg以上, 空腹時血糖値110mg/dl 以上のうち2項目以上の集積を満たすものとした. 対照として内臓脂肪蓄積, 高中性脂肪血症, 低HDLコレステロール血症, 血圧高値, 空腹時高血糖のいずれも持たない20名の正常者を選択した. メタボリックシンドローム群のGIRは正常者に比し有意に低下 (p<0.01) しており, 内臓脂肪断面積と有意な負の相関を示した (r=−0.565, p<0.02). 日本人メタボリックシンドローム患者では内臓脂肪過剰蓄積と増悪したインスリン抵抗性が関連していた.
  • 永田 裕章, 村田 和也, 古田 雅彦, 財田 至啓, 杉浦 伸一, 住田 安弘
    2005 年 48 巻 11 号 p. 777-781
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    山田赤十字病院では1998年6月よりクリティカルパスを利用した2週間の教育入院を行っている. 退院後の長期的な血糖コントロールを評価するため, 2週間の教育入院終了患者のうち, 退院後3年以上経過している患者259例中, 経過観察可能であった126例に関して, 経過中のすべてのHbA1cの平均値にて効果を判定し, 7%以上のコントロール不良群と未満の良好群に分けた. コントロール良好群は60名, 7%以上のコントロール不良群は66名であった. 良好群は男性に多く (p<0.02), 入院前HbA1cが低く (p<0.001), 推定罹病期間が短い傾向にあった (p=0.057). 不良群は2年目よりコントロールが悪化し (p<0.001), 体重も増加が見られた (p<0.02).
症例報告
  • 山本 昌弘, 宗宮 基, 三上 千恵, 山根 雄幸, 西木 正照, 村上 宜男, 加藤 讓
    2005 年 48 巻 11 号 p. 783-787
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 46歳時に糖尿病と診断され, 54歳時にGAD抗体陽性とインスリン分泌能低下から緩徐進行1型糖尿病と診断された. 強化インスリン療法によりHbA1c 7%以下に管理されていた. 3カ月前に肺炎球菌による急性中耳炎と診断された. 抗菌薬投与により軽快したが, 1カ月後に再び右耳痛, 腰痛ならびに発熱が出現した. 急性中耳炎と診断され抗菌薬投与を受けたが, 著しい腰痛のため入院した. CTとMRIにより化膿性脊椎炎と診断し, 耳漏培養の結果から起炎菌は肺炎球菌と考えられた. 抗菌薬投与とともに, 外科的病巣掻爬および後方脊椎固定術を施行し軽快退院した. 肺炎球菌は時に浸潤性感染をきたし, 化膿性脊椎炎の起炎菌となることが知られている. 糖尿病は肺炎球菌の浸潤性感染の危険因子であることから, 本症例では肺炎球菌による中耳炎から化膿性脊椎炎への進展に, 糖尿病が寄与した可能性が考えられる.
  • 岩田 実, 笹岡 利安, 佐藤 啓, 岸田 みか, 宇野 立人, 薄井 勲, 山崎 勝也, 浦風 雅春, 小林 正, 赤川 直次
    2005 年 48 巻 11 号 p. 789-795
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性. 以前より糖尿病, 高血圧にて近医に通院していたが, 両側副腎腫大を指摘され, Cushing症候群の精査目的に当科へ紹介入院した. 糖尿病は混合型インスリン30単位/日にてHbA1c 6%台, 高血圧は降圧剤内服下にて血圧120/80mmHgとコントロールされていた. 明らかなCushing徴候を認めず, ACTH, コルチゾールの日内変動は消失し, 少量デキサメサゾン抑制試験では抑制を認めず, 下垂体MRIで左側に径4mm大の微小腺腫を認めた. 以上よりSubclinical Cushing病と診断し, 経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術を行い, 術後, 高血圧については降圧剤不要となり, 糖尿病はグリメピリド0.5mgにてHbA1c 6%台と良好にコントロールされた. Subclinical Cushing病に2型糖尿病の合併例の報告は稀であり, また下垂体腺腫摘出により著明に糖尿病, 高血圧が改善した1例を経験したので報告する.
  • 野村 由夫, 山本 順一郎, 草田 典子, 川澄 正朗, 鈴木 満, 奥山 牧夫
    2005 年 48 巻 11 号 p. 797-802
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性. 18歳の時, 健診で尿糖を指摘される. 40歳代後半より, 薬物療法を開始し, 他院通院していた. 2004 (平成16) 年2月23日, A型インフルエンザ罹患後, 肺炎を併発したとのことで, 当院紹介入院となる. 随時血糖537mg/dl, HbA1c 9.9%, BUN 39mg/dl, 血清クレアチニン (CRE) 0.9mg/dl, CRP 40.2mg/dl, 尿蛋白 (2+), 尿潜血 (2+). 胸部レントゲン, CT上両肺野に浸潤影を認める. 喀痰よりStaphylococcus aureus×107検出. 抗菌薬治療によりいったん軽快傾向であったが, その後, 両側胸水が多量に貯留. 非定型抗酸菌症が疑われたため, 3月12日, 呼吸器専門医が常勤する他院へ転院 (転院時BUN 11mg/dl, CRE 0.6mg/dl ). 転院先にて腎機能悪化が急速に進行. 4月7日, 透析施設のある当院に再転院. 再入院時, BUN 96mg/dl, CRE 4.3mg/dl. 両側胸水の貯留による呼吸不全の進行もあったため, 4月9日透析導入. 4月11日人工呼吸器管理となる. 4月12日, 再入院時に提出した検体で抗糸球体基底膜〔glomerular basement membrane (GBM)〕抗体が陽性と判明. 抗GBM抗体型急速進行性糸球体腎炎の合併を考え, ステロイドパルス療法をしたところ, 胸水の消退, 呼吸状態の改善を認め, 人工呼吸器からの離脱, 腎機能の改善をみた. 順調な回復をみせていたが, 5月14日, 脳梗塞を発症し, 5月17日, 永眠された. 糖尿病患者での急速な腎機能低下の進行は, 糖尿病腎症の悪化ばかりではなく, 糸球体腎炎の合併を念頭におく必要があると考えられた. 特に抗GBM抗体陽性例は稀であり, 示唆に富む症例であると考えられた.
  • 山本 繁樹, 武原 英樹, 河島 隆士, 藤本 裕司
    2005 年 48 巻 11 号 p. 803-807
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 男性. 2001年12月頃から歩行困難が出現. 2002年10月以降は杖つき歩行となった. 2003年4月頃には自立歩行も困難となり, 同年5月に三菱化学病院を受診. 受診時, 著明な大腿筋の萎縮を認めたが, 各種筋逸脱酵素は正常であり, 大腿部MRIでは炎症を示唆する所見を認めず, 筋炎は否定的であった. 筋電図では萎縮を呈した大腿四頭筋では明らかな異常はなく, 神経伝達検査では両側大腿神経の遠位潜時が延長, 腓骨・脛骨神経所見は末梢神経障害を示したことから, 大腿筋の萎縮については神経原性変化によるものと思われた. 神経障害の原因として伝導障害の出現はなく, 萎縮が大腿四頭筋に限局していること, 受診時の血糖コントロールが不良であること (HbA1c 10%前後), および甲状腺機能は正常であることから糖尿病性筋萎縮症と診断した. 尿中CPR低値のためインスリン療法を開始し, 血糖コントロールが改善するに伴い, 杖つき歩行から自立歩行も可能となった.
    しかしながら, 2003年10月にはガワーズ徴候と動悸, 手指振戦が出現, 検査にてTSH 0.002mU/l 未満と低値, FT3 16.2pg/ml, FT4 5.7ng/dl, TRAb 42.0%, TSAb 518%と高値を認めたことから, バセドウ病と診断, 抗甲状腺薬の投与を開始した.
    糖尿病性筋萎縮症の原因を免疫異常とする報告が散見されるが, 本例においても自己免疫性甲状腺疾患をその経過中に発症したことから何らかの自己免疫異常の可能性を示唆する.
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