糖尿病
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49 巻, 3 号
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原著
  • —Semmes-Weinstein monofilamentsによる圧触覚検査の有用性—
    笹本 牧子, 久保木 幸司, 亀山 正明
    2006 年 49 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病性足潰瘍・壊疽のハイリスク患者を診断するためのスクリーニングとして有用なSemmes-Weinstein monofilaments (SWM)の種類と検査部位を明らかにするため,2型糖尿病患者59例を対象とし,神経障害に起因する糖尿病性足潰瘍・壊疽を有したハイリスク患者19例,潰瘍・壊疽を有さない患者40例の2群に分類し,足底7カ所の検査部位に4種類(3.61/0.4 g, 4.31/2 g, 4.56/4 g, 5.07/10 g)のSWMを用いた圧触覚検査を行い糖尿病性足潰瘍・壊疽を診断するための診断感度,特異度の比較検討を行った.4.56/4 gのSWMでは5.07/10 gに比し特異度は軽度低下したが,感度は有意に上昇した.検査部位では,単独で最も感度ならびに特異度が高値を示した拇趾底部に比し,拇趾底部および第一中足骨骨頭の組み合わせでは,特異度は100%から90%へと低下したが,感度は73.6%から78.9%へと上昇した.以上より,糖尿病性足潰瘍・壊疽のハイリスク患者を診断するためのスクリーニングには,4.56/4 gのSWMによる拇趾底部および第一中足骨骨頭の組み合わせが有用である可能性が示唆された.
  • 横山 宏樹, 蔵光 雅恵, 横田 友紀, 多田 純子, 上川 二代, 菅野 咲子, 松島 雅人
    2006 年 49 巻 3 号 p. 197-204
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    ピオグリタゾン(P)とアカルボース(A)の併用が,頸動脈内膜中膜複合体(IMT)および脈波伝播速度(PWV)へ及ぼす効果を,上記内服歴がない2型糖尿病で検討した.対象は平均でHbA1c 6.5%, 血圧130/70 mmHg, 罹病10年の130例で,介入(I)群77例へP30 mgとA300 mgを1年間投与した.I群のIMT変化は-0.002±0.037 mmで対照(C)群0.043±0.080 mmに比べ有意に抑制され,この効果は食事,経口薬,インスリン療法共に認められた.介入は,HDL-C, 中性脂肪,アルブミン尿,高感度CRPの改善を伴い,アルブミン尿と高感度CRPの変化率は有意に関連した.IMT変化はHbA1c変化と有意に相関し,HbA1c悪化例でもI群はIMT肥厚抑制を認めた.PWVはI群で左側のみ低下した.P, A介入の抗動脈硬化効果が示唆されたが,その機序は未だ十分に説明されなかった.
症例報告
  • 櫛山 暁史, 林 道夫, 肥塚 直美, 門脇 孝
    2006 年 49 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    52歳,男性.主訴:意識消失.現病歴:1983年11月頭蓋内のhemangiopericytomaが発見され,以後腹腔内,縦隔,下肢に度々再発し,計7回にわたり腫瘍摘出術を施行された.1996年の時点で根治不能とされた.2002年6月9日意識消失し他院に緊急入院.血糖25 mg/dlであった.2002年6月17日低血糖症の精査目的に当科紹介入院.現症:身長175 cm体重61.0 kg,腹部に15×20 cmの腫瘤を触れる.経過:絶食試験で他の低血糖症が除外され,血清からBig insulin-like growth factor-IIが証明され,非ラ氏島腫瘍性低血糖(NICTH)と診断された.prednisolone 10 mg投与開始し低血糖がいったん改善したが,徐々に増悪,glucagon持続皮下注射は奏効せず,経管栄養で低血糖が回避された.報告上最長の経過19年で発症したNICTHの1例として報告する.
  • 比嘉 眞理子, 最上 小津江, 廣井 直樹
    2006 年 49 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性.40歳より2型糖尿病にてインスリン療法を受けていたが,血糖コントロールは不良であった.2002年10月初旬より腹部膨満感が出現し,10月20日より38°Cの発熱と著明な腹部膨隆による呼吸困難のため入院となった.腹部CT scanでは多量の腹水貯留を認め,腹水検査ではリンパ球優位の細胞増多とADA, CA 125, IL-2R, ヒアルロン酸の著明な高値がみられたが,結核菌は検出されなかった.確定診断のため施行した腹腔鏡検査では,腸管の著しい癒着と臓側腹膜と肝表面に多数の小結節,クモの巣状の線維性構造物を認めた.腹膜生検よりラングハンス型巨細胞を伴う肉芽腫を認め結核性腹膜炎と診断した.抗結核剤にて発熱は徐々に改善し,治療後30日目に行った腹部超音波検査にて腹水は消失した.糖尿病患者に肺結核の合併は多いが,結核性腹膜炎は全結核患者の0.3%と稀であり貴重な症例と考え報告する.
  • 新生 忠司, 岡田 洋右, 廣瀬 暁子, 神田 加壽子, 森田 恵美子, 田中 良哉
    2006 年 49 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.40歳時に2型糖尿病と診断され食事療法と経口血糖降下剤にて加療開始.2002年9月,血糖コントロール不良のためイソフェンインスリンを開始.2003年2月頃よりインスリン注射部位に発赤,掻痒感を認めたため,インスリンリスプロへ変更し皮膚症状は軽快.冠動脈造影にて2枝病変を認め3月CABGを施行.術後にジゴキシン,クエン酸第一鉄ナトリウム,アスピリン,フロセミド,スピロノラクトンの投与を開始された.7月下旬より急に全身浮腫が出現し増悪したためフロセミドを増量したが,掻痒感を伴う紅色皮疹が全身に出現したため当科紹介入院.この時点で,浸潤のある紅斑,丘疹が全身に散在,融合しており,下腿と前腕に硬性浮腫,右胸水,少量の腹水を認めた.末梢血中好酸球1,716/μl, IgE 345 U/mlと増加していたため薬剤アレルギーを疑い,入院時点でインスリンリスプロのみ継続としその他の薬剤を中止したが,好酸球増多と硬性浮腫,胸水は全く改善しなかった.8月15日よりインスリンリスプロをインスリンアスパルトに変更したところ,好酸球は急速に低下し(8/25 576/μl, 9/1 456/μl), 硬性浮腫,胸水は改善,8月29日よりアゾセミド60 mg投与開始にてさらに改善傾向を示した.ヒト中性インスリン,インスリンリスプロ,インスリンアスパルトについてDLSTを行い,インスリンリスプロのみが陽性反応を示したことから,本例はインスリンリスプロに対するアレルギーにより好酸球増多,硬性浮腫,胸水をきたしたと考えられたが,硬性浮腫,胸水については心不全の関与も考えられた.インスリンアナログによるインスリンアレルギーの報告は少なく,そのなかでも胸水まできたした重症例の報告はなく,稀な症例と考え報告する.
  • 田中 正巳, 岡村 ゆか里, 中村 博志, 大村 豪, 宮崎 康
    2006 年 49 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.59歳時に2型糖尿病の診断を受け,経口血糖降下薬,その後インスリン治療が行われたが,HbA1cは10%程度を推移していた.今回当院にて胸腺腫を指摘され,血中CPRは0.76 ng/mlと低値,抗GAD抗体陽性より,胸腺腫合併緩徐進行1型糖尿病と診断した.抗GAD抗体は32,300 U/mlと強陽性であった.重症筋無力症の所見はみられなかった.胸腺腫摘出後も1型糖尿病の明らかな病態変化を捉えられなかった.また,本邦の1型糖尿病と胸腺腫(重症筋無力症)合併例の臨床的特徴を検討した.合併例では,本例のように抗GAD抗体が強陽性で,1型糖尿病は緩徐発症型が多い傾向がみられた.合併例のHLAでは,本例でみられたDR 4の他に,DR 9とA 24が多く認められた.本例では胸腺腫の発症時期は不明だが,合併例の検討では胸腺腫(重症筋無力症)が1型糖尿病より先に発症する傾向を認めた.
コメディカルコーナー・原著
  • 野村 卓生, 池田 幸雄, 末廣 正, 西上 智彦, 中尾 聡志, 石田 健司
    2006 年 49 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病患者におけるバランス障害の成因を明らかにするために,閉眼片脚立位時間と定量的な膝伸展筋力の関連を検討した.糖尿病患者では片脚立位時間の減少と膝伸展筋力の低下が認められ,単変量および多変量解析の結果,いずれにおいても片脚立位時間と膝伸展筋力との間に有意な関連が認められた.糖尿病患者のバランス障害の原因として,多発性神経障害による感覚障害の関与が強調されるが,今回の検討より,下肢筋力低下も関与することが明らかとなった.糖尿病患者のバランス障害に適切な対応をするためには,感覚検査に加え,筋力を定量的に捉えることが必要と考えられた.
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