症例は28歳,男性.1994年(18歳時)に健康診断でFPG 111 mg/d
lを指摘されたが放置していた.1996年2月(20歳時),FPG 165 mg/d
l, HbA
1c 7.8%にて糖尿病と診断され,精査・加療目的にて当科受診した.初診時,身長177 cm, 体重69 kgと肥満はなく,HbA
1c 6.9%, GAD抗体63.7 U/m
l, 尿中CPR 34.8 μg/日,75 gOGTT時のΣ CPR(0~180分)23.3 ng/m
lと内因性インスリン分泌の保たれたGAD抗体陽性インスリン非依存状態糖尿病(NIDDM)と診断された.IA-2抗体,インスリン自己抗体,TPO抗体はいずれも陰性で,HLA-DRB1
*0405/
*1502-DQB1
*0401/
*0601と日本人1型糖尿病の疾患感受性および抵抗性ハプロタイプを有していた.膵β細胞機能を保持させる目的でNPHインスリン4単位/日を開始,その後8年間にわたり内因性インスリン分泌能を追跡した.その結果,75 gOGTTにおけるΣCPR(0~180分)は,2年後33.4 ng/m
l, 4年後25.4 ng/m
l, 6年後14.2 ng/m
l, 8年後4.7 ng/m
lと4年目以降に低下し,インスリン必要量は26単位/日まで増加した.GAD抗体は8年後も9.7 U/m
lと陽性である.GAD抗体陽性NIDDMにおける少量インスリン治療の有効性を考えるうえで貴重な症例と考えられる.
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