糖尿病
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49 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 勝又 一夫, 大磯 ユタカ, 中村 二郎, 清水 学, 加藤 活大, 大野 恒夫, 河村 孝彦, 今村 修治, 米田 正弘, 佐々木 洋光, ...
    2006 年 49 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    2002年9月1日~2003年2月28日の半年間に愛知県内309病院に50 mg/dl以下の血糖値で他人の援助により緊急治療を要した重症低血糖の患者背景,病態,予後などを後向きにアンケート調査し87の病院の回答から以下の結果を得た.重症低血糖は182例で,その内訳は糖尿病患者が160例で,74歳以下112例,75歳以上の後期高齢者は48例,インスリンによるもの94例,経口血糖降下薬によるもの66例であった.非糖尿病患者は22例で,75歳以上は11例であった.糖尿病患者では,スルホニル尿素(SU)薬使用者で後遺障害例3例と死亡1例があり,ほかにナテグリニドで治療された73歳の腎不全の死亡1例があった.インスリンによる後遺障害,死亡例はなかった.非糖尿病患者の死亡例は7例で68歳の1例を除き6例が77歳以上で腎不全,癌など重篤な疾病患者であった.糖尿病とともに非糖尿病の高齢者低血糖の早期発見に努め,重症化をきたさないpre-hospital対策を含めた早期治療と予防体制の確立が重大な課題であることが示唆された.
  • 棚橋 弘成, 安田 圭吾, 林 慎, 橋本 健一, 杉山 千世, 朝川 英範, 石原 慎一郎, 吉田 健一郎, 佐野 明江, 赤井 昭文, ...
    2006 年 49 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    本邦での糖尿病ケトアシドーシス(DKA)における混合性酸・塩基障害(mixed acid-base disorder, MABD)の実態は不明である.自験18例,21回の入院におけるMABDに関し検討した.DKAに合併している代謝性酸・塩基障害の診断には,(1)補正HCO3-: <22 mEq/lまたは>26 mEq/l, (2) Δanion gap (AG)/ΔHCO3-: <0.8または>1.2, (3) (AG-10)/ΔHCO3-: <1.0または>1.6, の3基準,呼吸性酸・塩基障害の診断には,(4) pCO2=1.5×HCO3-+8±2以上,(5) ΔHCO3-x(1~1.3)以上の増,減,の2基準を用い,各3および2基準のすべてを満たす場合酸・塩基障害が共存していると診断.21例中単純ケトアシドーシス9例43%, MABD12例57%であった.MABDの内訳は代謝性アルカローシス(alk)6例,呼吸性alk3例,triple acid-base disorder 3例であった.本邦DKAにおいてもMABDは稀ではなく,DKA診療に際しては酸・塩基平衡異常の病態解析が重要である.
症例報告
  • 垣屋 聡, 稲垣 朱実, 三浦 奈穂子, 伊佐治 美穂, 近藤 正樹, 本美 善英, 板津 武晴
    2006 年 49 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    中枢神経系の後遺症を残した低血糖昏睡3症例を報告する.症例1は79歳,女性.一過性脳虚血発作の既往と4期の腎症を認めていた.グリベンクラミド3.75 mg, アカルボース300 mg内服.入院時血糖値32 mg/dl, 約8時間の昏睡.頭部MRIの拡散強調像で右放線冠に高信号領域を認めた.血糖回復するも痴呆の進行を認め,肺炎,腎不全を併発し永眠された.症例2は61歳,男性.狭心症の既往がある.グリメピリド6 mg, アカルボース300 mg内服.入院時血糖値17 mg/dl, 約5時間の昏睡.頭部MRIはラクナ梗塞のみであった.血糖回復後も意欲の低下および記銘力の障害を残した.症例3は71歳,男性.パーキンソン病を合併.グリベンクラミド5 mg内服.入院時血糖値38 mg/dl, 約4時間の昏睡.頭部MRIは両側の放線冠,頭頂葉の大脳皮質に拡散強調像にて高信号領域を認め,血糖回復後も構音障害,見当識障害を残した.高齢者で動脈硬化性疾患や神経変性疾患を合併する場合,比較的短時間の低血糖昏睡でも中枢神経系の後遺症を残す可能性があり,スルホニル尿素薬の治療には注意が必要であると考えられた.また,低血糖脳症の診断に,頭部MRI拡散強調像は有用であると考えられた.
  • 永尾 麻紀, 佐中 眞由実, 手納 信一, 野村 馨, 肥塚 直美, 岩本 安彦
    2006 年 49 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.8歳発症の1型糖尿病患者で妊娠5週に当センターを紹介され初診.HbA1c 7.7%でありコントロールのため入院.糖尿病合併症は認められず,血糖コントロール改善したため退院.妊娠11週頃からHbA1c 5%台にもかかわらず,口渇,1日4~5lの多飲および多尿が出現.ADH-アルギニンバソプレシン(以下,AVP)0.15 pg/mlと低値であったため,尿崩症の合併が疑われ,妊娠15週に精査のため入院.DDAVP(デスモプレシン)10 μgの試験的投与にて中枢性尿崩症と診断.DDAVP開始後,自覚症状は改善し尿量も約2l/日に減少した.妊娠38週2日,自然分娩にて3,440 gの女児を出産.児は新生児低血糖を認めたが,他の合併症は認めなかった.授乳終了後に行った頭部MRIでは,下垂体後葉のhigh intensity areaの消失が認められた.妊娠中に尿崩症を発症した1型糖尿病合併妊婦の稀有な症例を試験したので報告する.
  • 井上 篤, 小泉 茂樹, 入宇田 能弥, 伊古田 明美, 小杉 尚, 松谷 久美子, 真尾 泰生
    2006 年 49 巻 4 号 p. 279-285
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    58歳,男性.他院にて35歳で2型糖尿病を指摘され,食事療法,運動療法に加え経口血糖降下剤が処方されていた.2000年より血糖コントロール不良のため同院にてインスリン治療(ペンフィル®30R)が導入された.インスリン開始約1週間後より注射部位に掻痒を伴う発赤を自覚していたが軽微なため放置.2003年5月頃より同症状が悪化したため精査加療目的に当院紹介された.インスリンの局所アレルギー反応が疑われたため,入院後は1日1回の超速効型インスリンアナログ製剤を昼食直前に追加して皮膚の反応を観察した.開始後,約1週間で注射部位に同様の症状が出現したため中止した.インスリン製剤とその溶媒のみの皮内テストでは,ヒトインスリンとインスリンアナログのみが陽性を示した.本症例はヒトインスリンおよびインスリンアナログに対して局所の即時型アレルギーが存在すると考えられた.
  • 渡邊 浩之, 魚住 信泰, 川崎 三紀子, 反町 千里, 村田 英紀, 高雄 泰行, 上野 秀之, 藤澤 和彦, 笠原 成彦, 浜 英永, ...
    2006 年 49 巻 4 号 p. 287-289
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.5年前に血糖の軽度高値を指摘されたが放置していた.入院2週間前より口渇感が強くなり,1週間前には含糖清涼飲料水を約5,000 ml飲むようになっていた.食欲不良と倦怠感が増悪し,意識混濁状態が出現したため入院となった.血糖2,531 mg/dl, HbA1c 12.4%, 血清ナトリウム98 mEq/l, K 7.1 mEq/l, Cl 60 mEq/l, 血清クレアチニン1.56 mg/dl, 尿素窒素40.9 mg/dl, 尿ケトン体(-), 動脈血pH 7.349, HCO3-21.1 mmol/l, 血漿浸透圧407 mOsm/kgH2O(計算値346 mOsm/kgH2O)より高浸透圧性非ケトン状態と診断した.生理食塩水とインスリン静脈内投与により高血糖,低ナトリウム血症が是正され入院翌日には意識清明となった.本症例は著しい高血糖,低ナトリウム血症および浸透圧ギャップが認められた興味ある症例と考えられた.
  • 川崎 英二, 福島 慶子, 森内 昭江, 古林 正和, 福島 徹也, 桑原 宏永, 喜多 篤志, 阿比留 教生, 魚谷 茂雄, 山崎 浩則, ...
    2006 年 49 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性.1994年(18歳時)に健康診断でFPG 111 mg/dlを指摘されたが放置していた.1996年2月(20歳時),FPG 165 mg/dl, HbA1c 7.8%にて糖尿病と診断され,精査・加療目的にて当科受診した.初診時,身長177 cm, 体重69 kgと肥満はなく,HbA1c 6.9%, GAD抗体63.7 U/ml, 尿中CPR 34.8 μg/日,75 gOGTT時のΣ CPR(0~180分)23.3 ng/mlと内因性インスリン分泌の保たれたGAD抗体陽性インスリン非依存状態糖尿病(NIDDM)と診断された.IA-2抗体,インスリン自己抗体,TPO抗体はいずれも陰性で,HLA-DRB1*0405/*1502-DQB1*0401/*0601と日本人1型糖尿病の疾患感受性および抵抗性ハプロタイプを有していた.膵β細胞機能を保持させる目的でNPHインスリン4単位/日を開始,その後8年間にわたり内因性インスリン分泌能を追跡した.その結果,75 gOGTTにおけるΣCPR(0~180分)は,2年後33.4 ng/ml, 4年後25.4 ng/ml, 6年後14.2 ng/ml, 8年後4.7 ng/mlと4年目以降に低下し,インスリン必要量は26単位/日まで増加した.GAD抗体は8年後も9.7 U/mlと陽性である.GAD抗体陽性NIDDMにおける少量インスリン治療の有効性を考えるうえで貴重な症例と考えられる.
コメディカルコーナー・原著
  • —2002年度全国アンケート調査より—
    鈴木 和枝, 福島 恭子, 藤田 弘美, 西牟田 守, 本吉 光隆, 藤波 襄二, 池田 義雄
    2006 年 49 巻 4 号 p. 295-298
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    日本糖尿病協会分会(友の会)の実態を把握するべく,1972年から10年間隔で合計4回実施したアンケート調査成績を比較した結果,友の会の数は1972年に比べて2002年は14.6倍の1,476施設と著しく増加した.平均患者会員数は1972年の185名から2002年には64名と減少し,会員数の少ない友の会の増加が目立った.また,過去30年間に実施頻度が低下している会活動も見られ,こうした問題点の解決が今後の日本糖尿病協会の課題として示唆された.
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