糖尿病
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49 巻 , 5 号
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原著
  • 金沢 裕一
    2006 年 49 巻 5 号 p. 319-323
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病および心血管イベントのリスクと考えられる食後高血糖(postprandial hyperglycemia: PPHG)を示す人々をスクリーニングすることは,予防医学上極めて重要である.今回われわれは,1,5-AGの男女別カットオフ値を設定し,1,5-AGが境界域の場合に空腹時血糖値(fasting plasma glucose: FPG)と組み合わせるスクリーニングを考案した(以下,KKC法).KKC法によってPPHGの検出感度が83.3%で,陽性反応的中度: Positive Predictive Value(以下,PPV)が71.4%という結果を得た.FPG(カットオフ値95 mg/dl)によるスクリーニング法も同様の感度であったが,PPVが大きく低下していた.以上により,KKC法は空腹時1回採血のみで,食後高血糖を効率よくスクリーニングする方法と考えられた.現在KKC法を使用したスクリーニングにより,1,500人規模の事業所で毎年新たに10~20名のPPHGを効率的に発見している.
  • 加来 浩平, 田嶼 尚子, 河盛 隆造
    2006 年 49 巻 5 号 p. 325-331
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    日本人2型糖尿病における日常のメトホルミン治療の有用性を検討するため,全国74施設で2002年にメトホルミンを新たに投与開始した1,197症例を対象に観察研究(Melbin Observational Research study: MORE study)を行い,その有効性および有害事象の発現状況について解析した.その結果,開始時,3, 6, 12カ月後のグリコヘモグロビン(HbA1C)の平均値は8.2, 7.3, 7.3, 7.3%, 空腹時血糖は168.9, 146.6, 150.4, 145.2 mg/dlと,いずれも開始時に対して有意に低下した.体重は有意に減少し,脂質代謝の異常変動は認められなかった.メトホルミン単剤投与症例においても同様の結果が得られた.メトホルミンの1日用量を500 mgから750 mgまで増量した40例において,増量後のHbA1Cに有意な改善が認められた.副作用発現症例率は118/1,175例(10.0%)であり,乳酸アシドーシスの発現は認めなかった.メトホルミンは日本人2型糖尿病治療において有用であり,血糖コントロールの十分な改善が得られていない症例に対しては,増量によってより良い血糖コントロールが得られる可能性が示唆された.
症例報告
  • 山本 純子, 川野 貴弘, 槇野 香奈子, 山下 和邦, 京田 有輔, 丸山 直樹, 前川 勝英, 酢谷 俊夫, 西浦 公章
    2006 年 49 巻 5 号 p. 333-336
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.2003年3月20日頃から食欲不振が出現し,3月23日に意識障害が認められたので当科に入院した.入院時の尿ケトン体は陽性で,血糖値は875 mg/dlであり,動脈血ガス分析では代謝性アシドーシスであった.糖尿病性ケトアシドーシスと診断してインスリン治療を開始し,症状は軽快した.第9病日のHbA1Cは8.7%の上昇にとどまっており,インスリン分泌能は枯渇していた.膵島関連抗体は陰性であった.なお,これまでに糖尿病を指摘されたことはなかった.以上から本例は劇症1型糖尿病であると考えられた.本邦で報告されている劇症1型糖尿病の最高齢は87歳であり,本例は検索した範囲では本邦で2番目の高齢であった.劇症1型糖尿病は初発症状が口渇,多尿,体重減少などの糖尿病の典型症状ではなく,全身倦怠感や上気道炎症状が主な症状であることがあり,発症予測が困難な症例も報告されている.本例も高齢者が日常の生活で比較的よく訴える食欲不振が初発症状であり,今後,診療にあたるうえで本症の存在を認識する必要があると考えられた.
  • 金井 明子, 手納 信一, 大屋 純子, 石井 晶子, 菅野 宙子, 中神 朋子, 竹内 恵, 岩本 安彦
    2006 年 49 巻 5 号 p. 337-341
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    腓骨神経麻痺は,比較的短期の経過で自然軽快する糖尿病性単神経障害として知られている.今回われわれは,同麻痺が持続し筋萎縮をきたした症例を経験した.症例は55歳,男性.1994年に糖尿病と診断されたが放置し,1998年から経口血糖降下薬を開始されたがHbA1C 9%台と血糖コントロールは不良であった.2003年1月,右大腿部のしびれと鈍痛に続き右下腿のしびれと歩行時のつまずきが出現したため,2004年5月当科を初診し,同年6月精査目的で入院した.入院時HbA1C 5.4%であった.深部腱反射低下,四肢末梢のしびれに加え,腓骨神経領域のTinnel徴候陽性,筋力低下,神経伝導速度の著明な低下,前脛骨筋萎縮を認めた.退院後もHbA1Cは5~6%であったが,腓骨神経麻痺はわずかな改善にとどまった.過去の大量飲酒による神経障害や糖尿病性筋萎縮症の合併も疑われ,それらにより腓骨神経麻痺が遷延した可能性が推察された.
  • 寺井 秀樹, 廣井 直樹, 金子 幸代, 比嘉 眞理子
    2006 年 49 巻 5 号 p. 343-348
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病性昏睡の既往のある大量飲酒家の64歳の男性.アルコール摂取量の増加に引き続く,アルコール摂取の急激な減少と食事量の減少がみられた.その後出現した意識障害と間代性痙攣を主訴に受診.既往歴から当初糖尿病性ケトアシドーシスを疑ったが,補液とわずかなインスリン投与のみにて重炭酸塩の投与なく速やかにアシドーシスは補正されたこと,血糖やHbA1C, 尿ケトンは軽度な増加であり,β-ヒドロキシ酪酸優位のケトン体の増加(ケトン体比: 3.88)がみられたことから,2型糖尿病に合併したアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis: AKA)と診断した.AKAはアルコール常用者で栄養不良と脱水が契機となり発症する病態である.アルコール多飲によるNADの欠乏とグリコーゲンの枯渇や糖新生の抑制によるインスリン分泌低下,その結果生じるβ酸化の亢進によりケトン体が蓄積し代謝性アシドーシスが進行していくと考えられている.糖質の投与と脱水補正で速やかに軽快するが,治療の遅延や著明な代謝性アシドーシスを呈する場合死の転帰をとることが多い.アルコール大量摂取の嗜好のある糖尿病患者ではAKAを念頭に診察する必要があると思われる.
  • 狐野 一葉, 中埜 幸治
    2006 年 49 巻 5 号 p. 349-353
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は2型糖尿病の58歳,女性.5年前から治療を中断していた.耳掻きによる右外耳道損傷後に緑膿菌による悪性外耳道炎,および中耳炎を起こし,約1カ月の入院治療にて軽快した.約4ヵ月後に約半月かけて右第II・III・IV・V1枝・VI・VII・IX・X脳神経障害が完成した.広範な一側脳神経障害でGarcin症候群と診断した.耳漏の培養で緑膿菌が検出された.造影したT1強調脂肪抑制画像で中耳炎から波及した頭蓋底の広範な化膿性骨髄炎であることが判明した.病初期は第III・VI麻痺のみを認め,糖尿病性脳神経障害と考えた.頭蓋底骨髄炎の診断に脂肪抑制の造影MRI検査が有用であると考える.糖尿病の易感染性により,時に稀な病態をきたしうることを示唆する症例と考え報告する.
コメディカルコーナー・原著
  • 秋山 有代, 元島 洋子, 竹内 恭子, 徳永 貢, 土田 温子, 保阪 大也, 矢澤 麻佐子, 松田 彰, 大村 栄治, 今井 康雄, 河 ...
    2006 年 49 巻 5 号 p. 355-360
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病患者の食事選択肢を拡げられるか否かを知る目的で,蔗糖含有量の異なる食事が食後血糖値に及ぼす効果について検討を試みた.HbA1C 8%以下でインスリン治療やα-グルコシダーゼ阻害薬(α-Gl薬)の服用がない2型糖尿病患者18名(男性9名,女性9名)を対象とした.試験食(朝食)は,等量のエネルギー,炭水化物,食物繊維を含み蔗糖含有量が異なる食事で,主食として食パンとあんパン(各々の蔗糖含有量は0.2 g, 20.3 g)を採用し比較した.同一患者に各々の食事を別の日に提供し,2種類の試験食摂取の順序はランダムに割り付けた.各負荷試験では,0, 30, 60, 120分に採血し,血糖,インスリン,インタクトプロインスリン,Cペプチド,中性脂肪,遊離脂肪酸を測定した.その結果,2種類の試験食間で各時間における全測定項目に有意差はみられなかった.以上の結果から,比較的血糖コントロール良好な2型糖尿病患者の食事療法において,食事摂取時の蔗糖の厳格な制限は再検討してもよいと考えられた.ただし,蔗糖含有量の多い甘い食品は食べ過ぎる傾向がありエネルギーが過剰となりやすいこと,また長期使用時の効果を検討する必要があろうと思われること,など十分な注意が必要であると考える.
委員会報告
  • 芳野 原, 富永 真琴, 平野 勉, 柴 輝男, 柏木 厚典, 田中 明, 多田 紀夫, 小沼 富男, 江草 玄士, 桑島 正道, 三家 登 ...
    2006 年 49 巻 5 号 p. 361-371
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    食後高血糖のみならず,食後高脂血症も動脈硬化進展に寄与することが報告されている.すでに海外国内ともに,Impaired Glucose Tolerance (IGT),あるいは糖負荷後の血糖上昇が冠動脈疾患のリスクであることが報告されている.一方,食後高脂血症,特に食後に増加するレムナント粒子は動脈硬化惹起性であるとされている.そこで,食後高血糖と食後高脂血症を同時に評価できるような国際標準となるテストミールの開発が必要となった.このような考えのもとに,日本糖尿病学会において糖尿病関連検査の標準化に関する委員会が立ち上げられ,同委員会から召集されたテストミール開発ワーキンググループは,どのような医療施設においてもテスト可能な食事負荷試験のテストミールのパイロットモデルを開発した.本テストミールの総エネルギ量は450kcalとし,エネルギー比率は炭水化物51.4%,脂質33.3%,蛋白質15.3%とした.被験者としてテストミール負荷試験の1週間後に糖負荷試験を実施できたのは糖尿病症例18例,IGT例12例,正常耐糖能(NGT)者29例で合計59例である.テストミール負荷試験後と糖負荷試験後いずれの血糖値も各対応する採血時点で両群間に正相関を認め,糖負荷後2時間値が200 mg/dlの場合,テストミール負荷後の同値はほぼ150 mg/dlに相当し,糖負荷後2時間値が140 mg/dlの場合,テストミール負荷後はほぼ110 mg/dlに相当した.一方,空腹時の血中トリグリセリド値で,高トリグリセリド血症群(16例)と正常トリグリセリド血症群(51例)に分類し,それぞれの血中トリグリセリド変動曲線を観察すると,空腹時正常トリグリセリド血症群でのみ食後に血中トリグリセリド値が軽微ではあるが有意に上昇した.以上,本テストミールは食後の血糖値,血清トリグリセリド値上昇を検討する食事負荷試験のパイロットモデルとなるものと思われた.
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