糖尿病
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49 巻 , 9 号
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原著
  • 山本 仁至, 泉田 太郎, 井上 郁夫, 柴崎 智美, 片山 茂裕
    2006 年 49 巻 9 号 p. 699-707
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    平成17年4月に,日本動脈硬化学会や日本糖尿病学会などの7学会と日本内科学会からなるメタボリックシンドローム(MetS)診断基準検討委員会によりわが国のメタボリックシンドロームの定義と診断基準が策定されたが,MetSを総合的に表すマーカーの存在はまだ明らかではない.今回,当科外来通院中の121名の患者を対象として,MetSと関連があると考えられる血清adiponectin, 血清ApoB48, 糖・脂質濃度の生化学的指標を測定し,診断基準との関係を検討した.男性MetS群でadiponectinは有意に低値を示し(5.9±2.8 vs 7.6±3.8 μg/ml,p=0.036),ApoB48は有意に高値を示した(6.1±7.3 vs 2.3±2.1 μg/ml, p=0.0014).MetS診断基準との関係では,男性でadiponectinはウエスト周囲径(r=-0.31, p=0.0075),中性脂肪(r=-0.27, p=0.023)と負の相関を示しHDLコレステロール(r=0.54, p<0.0001)と正の相関を示した.男性でlogApoB48はウエスト周囲径(r=0.25, p=0.031),中性脂肪(r=0.67, p<0.0001)と正の相関を,HDLコレステロール(r=-0.25, p=0.035)と負の相関を示した.MetSの有無を目的変数としてstepwise regression analysisを行ったところ,性別・ウエスト周囲径・収縮期血圧・logApoB48・HbA1C・HDL-コレステロールが説明変数として採択された(R2=0.52).なお,女性では症例数が少なかったためか,MetS診断基準とadiponectinとの間で相関関係を認めた項目は,ウエスト周囲径のみであり,ApoB48と相関関係を認めた項目は中性脂肪のみであった.以上より,adiponectinのみならず,食事摂取由来の外因性リポ蛋白の指標であるApoB48が,内臓脂肪蓄積やMetSの有無と強く関連していることが明らかになった.
  • 島 健二, 川原 和彦, 小松 まち子, 川島 周
    2006 年 49 巻 9 号 p. 709-715
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    腎の血糖調節にはたす役割を解明すべく,1型糖尿病透析患者(HD)の血糖変動を腎機能正常1型糖尿病患者(non-HD)のそれと比較した.
    HD 4例とnon-HD 13例を対象に1カ月間の早朝空腹時最低血糖値,血糖不安定性,腎実質容量などについて両群間で比較した.また,HD 1例について,透析導入前26カ月間,導入直後12カ月間およびその後26カ月間にわたり,上記項目および“重症”低血糖症(BS≤20 mg/dl)の発症頻度を各期間で比較した.HD, non-HD群間の比較において,平均最低血糖値,インスリン投与量は前者で有意に低値であった.血糖不安定性はHD群で大である傾向を示した.HD群の腎実質容量は正常者の28.5%と著しく縮小していた.透析導入前・後の比較で,導入12カ月間を経た後の期間において,平均最低血糖値,インスリン投与量は有意に低く,“重症”低血糖症の発症頻度は有意に大であった.また,血糖不安定性は大である傾向を示した.
    1型糖尿病透析患者における低血糖,血糖不安定性に一部腎の糖代謝機能障害の関与の可能性が推定された.
症例報告
  • 楡木 恵実子, 長坂 昌一郎, 富澤 裕子, 稲葉 利敬, 六角 久美子, 藤田 延也, 岡田 耕治, 石橋 俊
    2006 年 49 巻 9 号 p. 717-721
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は24歳の女性.22歳で高血糖を指摘され,抗GAD抗体強陽性(3.854 U/ml),インスリン分泌能の低下から1型糖尿病と診断された.インスリン療法を開始後3カ月で自己中断したが,歯性上顎洞炎を契機に再開するまで約1年3カ月の間,急性合併症を起こさなかった.2年後,妊娠を契機に精査したところ,抗GAD抗体は陰性で,インスリン非依存状態であった.分娩後も同様の結果であった.本症例のHLAハプロタイプは,DRB1*1502-DQB1*0601ホモと疾患抵抗性であり,このことが特異な経過に関連すると考えられた.糖尿病の病型診断を考える上でも興味深い症例と考え,報告する.
  • 小川 典子, 田中 順子, 山根 雄幸, 垣羽 寿昭, 西木 正照, 山口 徹, 杉本 利嗣
    2006 年 49 巻 9 号 p. 723-729
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.1996年頃から住民検診で高血糖を指摘され,2002年6月初めて医療機関を受診した.食事療法,グリメピリド内服にて加療されたが,血糖コントロールが悪化し,12月に前医へ教育目的で入院した.抗GAD抗体陽性であり,緩徐進行1型糖尿病と診断され,強化インスリン療法が開始された.2003年8月,慢性甲状腺炎,悪性貧血を認め,多腺性自己免疫症候群III型と診断された.貧血は,メコバラミンの筋注にて改善したが,2004年6月頃から徐々に血小板数が減少しはじめたため,当院へ精査目的で入院した.本例は緩徐進行1型糖尿病に慢性甲状腺炎,悪性貧血,特発性血小板減少性紫斑病を合併した稀な症例であった.また,本例のHLAが通常1型糖尿病では疾患抵抗性と考えられているDQA1 0102, 0103, DQB1 0602, 0601である点も興味深かった.
  • 金沢 一平, 山根 雄幸, 西木 正照, 山口 徹, 杉本 利嗣
    2006 年 49 巻 9 号 p. 731-735
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性.1994年から糖尿病と診断され,グリメピリド1 mgにてHbA1C 6%台で推移.2004年から気分の沈みや食欲低下などの抑うつ徴候を認め,同時にHbA1C 7.2%と血糖コントロールが増悪した.検査所見ではFPG(146→237 mg/dl)と可溶性インターロイキン2受容体(soluble interleukin 2 receptor: sIL-2R) (377→1,580 U/ml)の上昇を認めた.強化インスリン療法で血糖コントロールを行い,一日インスリン必要量は最大22単位であった.抗不安薬,抗うつ薬の投与に伴い,うつ症状とsIL-2R (360 U/ml)の改善を認め,インスリン皮下注射は中止可能となり,食事療法のみにて血糖コントロールは良好となった.抑うつ症状が糖尿病の発症や経過に影響を及ぼすことは臨床的に経験するが,本症例では糖尿病増悪に大うつ病が関与し,その機序の一部としてsIL-2R, すなわちT細胞の活性化を介した機序が考えられた.
  • 豊永 雅恵, 佐藤 雄一, 布井 清秀, 岩瀬 正典, 飯田 三雄, 秋葉 純, 横倉 義武, 八木橋 操六
    2006 年 49 巻 9 号 p. 737-742
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は35歳男性.18歳時にうつ病にて入院.半年前より自室にひきこもっていた.今回,家人に苦悶状態で発見され,腹痛,排尿困難で近医に入院.翌朝,意識レベルが低下し,血糖2,380 mg/dl, pH 7.27が判明し,当科に転院.昏睡状態で,HbA1C 11.1%, 著明な脱水を呈していた.すぐにショックに陥り,大量輸液,インスリン,エンドトキシン吸着療法等を施行するも,病態は悪化し発見後27.5時間で永眠した.臨床的には高浸透圧性非ケトン性昏睡を発症した肥満2型糖尿病と考えられたが,病態的には,血中Cペプチド<0.1 ng/ml, 抗GAD抗体陰性,病理組織にて膵島炎を伴わない膵島細胞の減少・萎縮を認めた.慢性1B型糖尿病の可能性やglucose toxicityによる酸化ストレスの過剩発生が膵B細胞を破壊した可能性など,その発症機序が興味深い症例であった.また,若年者のひきこもりが増加しており,肥満や発病の発見が遅れる症例の増加が懸念される.
コメディカルコーナー・原著
  • 林 誠, 鈴木 節子, 山家 由子, 加藤 泰久, 新実 光朗
    2006 年 49 巻 9 号 p. 743-747
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病の薬物療法において,低血糖の出現は患者のコンプライアンスを低下させるだけでなく治療の妨げとなる.低血糖発生頻度を知ることは患者指導において重要であるため,薬剤疫学的に検討した.糖尿病の薬物療法を行っている患者の1年間での来院時および入院中の採血検査で,血糖値60 mg/dl以下を1回以上示したものを低血糖症例とし,低血糖の発生頻度を求めた.薬物療法が行われた患者1,829人のうち128人(7.0%)が低血糖を示していた.内訳は経口血糖降下薬(以下OHA)服用患者22人(1.7%),インスリン治療患者88人(19.6%),インスリンOHA併用患者18人(15.3%)であった.薬物療法ごとの低血糖発生頻度に有意な差は認められなかった.腎機能の悪い患者,自律神経障害を有する患者は特に低血糖の注意が必要であることが示された.
  • 畑中 由香子, 飯盛 惠美子, 池田 和人, 小谷 宏行
    2006 年 49 巻 9 号 p. 749-754
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    生理的なインスリン分泌に近い薬物動態を示す,超速効型インスリンが広く使用されるようになった.本剤の特徴は,食直前施注が可能なことである.当院においても多くの患者が食事前30分施注の速効型インスリン・中間型混合インスリンから,超速効型インスリン・二相性インスリンアナログに変更された.それらの患者を対象にインスリン変更前後を比較したアンケート調査を実施した.インスリン注入器の操作性,施注実態の把握,そしてquality of life (QOL)の改善度の11項目を無職者群と有職者群に区分し集計を行った.食直前投与の製剤への切り替えにより,無職者群では施注遵守,QOLの項目で改善傾向がみられた.有職者群では全ての項目で有意な改善がみられた.以上の結果より,食直前投与の製剤は施注遵守とQOLの改善の面からの有用であることが示された.患者一人ひとりに応じた製剤の選択と療養指導の必要性が感じられる.
委員会報告
  • 清水 一紀, 牧野 英一, 今川 彰久, 岩橋 博見, 内潟 安子, 金塚 東, 川崎 英二, 小林 哲郎, 島田 朗, 丸山 太郎, 花房 ...
    2006 年 49 巻 9 号 p. 755-760
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    目的:妊娠関連発症劇症1型糖尿病(PF)の臨床的および免疫学的特徴を明らかにする.
    対象:2000~2004年に登録されたPF22例と妊娠可能年齢女性の非妊娠関連発症劇症1型糖尿病(NPF)48例.結果:PF22例のうち妊娠中に発症例は18例(平均26.3週),4例は分娩後まもなく(平均10.5日)発症.動脈血pHはPFがNPFに比べ有意に低く(p=0.0366),PFの67%にあたる12例が死産であった.PFのHLAハプロタイプDR9はNPF(p=0.0244)およびコントロール(p=0.0001)に比べ有意に高頻度,一方NPFのDR4はPF(p=0.0162)およびコントロール(p<0.0001)に比べ有意に高頻度であった.結論:PFはNPFに比べより重篤で児予後もきわめて不良であった.また,妊娠の有無によりHLAクラスIIの関与が異なることが示唆された.
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