糖尿病
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50 巻, 11 号
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原著
  • —肝生検施行1例も含めて—
    山辺 瑞穂, 宇賀 公宣, 山根 公則
    2007 年 50 巻 11 号 p. 771-775
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病患者におけるピオグリタゾンの投与による肝機能改善効果を検討した.腹部エコー上内臓肥満や脂肪肝を有する2型糖尿病患者31例にピオグリタゾンを投与し,ヘモグロビンA1c (HbA1c)は,投与前8.39±1.34%, 3カ月後7.21±1.27%, 6カ月後6.83±0.88% (p<0.001)と有意な低下を示した.GPT前38.7±30.1 IU/l, 3カ月後26.4±16.0 IU/l (p<0.01), 6カ月後30.2±21.5 IU/l, γ-GTP前60.8±57.4 IU/l, 3カ月後34.2±25.1 IU/l (p<0.01)と有意に改善した.経過中有意な体重増加は認めなかった.また,肝機能改善群で経過中body mass index (BMI)は有意に高値であった.さらに対象症例中1例(66歳,女性)にピオグリタゾン投与前後で肝生検を施行した.投与前では肝組織の目立った脂肪細胞の増加が投与後6カ月にはほとんど消失していたことから,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD), NASH (nonalcoholic steatohepatitis)への有用性や治療薬としての可能性が示唆された.
  • 宇佐美 勝, 井田 健一, 佐久間 智子, 清水 祐介, 小松 隆之, 児玉 光顕, 吉崎 祐子, 池田 正毅
    2007 年 50 巻 11 号 p. 777-784
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    高齢糖尿病者のインスリン治療の特徴を調べる目的で,朝夕2回のインスリン注射で治療中の2型糖尿病者を年齢別に観察した.1日のインスリン必要量は年齢による差を認めないが,朝のインスリン量は年齢が高いほど多くなり,逆に夕のインスリン量は減少する傾向にあった.そこで,1日のインスリン必要量に対する朝のインスリン量の比率を算出すると高齢者では明らかに高値を示し,夕の比率は低値を示した.次に,これらの変化が腎機能,インスリンの分泌能や代謝と関連するか否かについて調べた.全症例を年齢別に分類し,さらに腎機能の程度により分類して,1日のインスリン必要量に対する朝の必要量の比率を比較したが,明らかな関係はなかった.尿中CPR排泄量は加齢とともに漸減したが,血中CPR反応は年齢による差を認めなかった.次に,インスリン治療時の血中インスリンの変動を調べると,高齢者では一日を通じて高値を示し,インスリン代謝の遅延が示唆された.以上の成績は,高齢者では朝のインスリン必要量に比較して夕のインスリン量が少なくても良好な血糖コントロールが得られることを示しており,壮年者と同じ比率で夕のインスリン量が決定された場合には夜間低血糖の危険性が増大すると考えられる.
  • 飯野 研三, 岩瀬 正典, 野原 栄, 藤井 裕樹, 森本 昌子, 飯田 三雄
    2007 年 50 巻 11 号 p. 785-790
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病症例はストレスやうつ症状を呈することが多いために禁煙できない可能性がある.今回,喫煙状況と心理状態との関連,ならびに禁煙による心理状態の変化を検討した.69歳以下の糖尿病133例を喫煙群,禁煙群,非喫煙群の3群に分け,心理状態や生活習慣を調査した(断面研究).心理的負担をPAID (the Problem Areas in Diabetes), うつ状態の評価にZungの自己評価抑うつ尺度を用いたが,3群間でPAID, Zungに差を認めなかった.しかしながら喫煙群では禁煙群,非喫煙群に比しHbA1cが高値であり運動を行っている例が少なかったため,糖尿病入院例で禁煙教室受講12例をフォローし,禁煙の成否と心理状態の変化および生活習慣の影響を検討した(介入研究).12例中6例が半年後も禁煙していた.禁煙成功例ではPAIDが43点から31点に改善し,全例運動を継続していた.禁煙することが糖尿病の治療の心理的負担の軽減にもつながると考えられ,その実践には運動が重要であると考えられた.
  • —当院入院糖尿病患者2,884名での検討—
    馬場 泰人, 梶川 道子, 岩田 暢子, 森本 一平
    2007 年 50 巻 11 号 p. 791-797
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病合併症の頻度,および易罹患性を明らかにする目的で,糖尿病2,884名,非糖尿病21,480名の当院入院患者(1998.1.1∼2004.3.31, 40歳以上)を調査した.退院要約の全病名を患者ごとに集計し,IDに基づき,国際疾病分類の病名コード4桁で重複を除き,1患者,1レコードとした.疾患ごとに両患者群で罹患割合;頻度(%)を出し,その%比を易罹患性とした.代表的な疾患別に糖尿病患者の頻度と易罹患性を示す.結核1.8%(1.7倍),肝癌5.7%(2.2倍),高血圧性疾患45.4%(3.2倍),急性心筋梗塞6.0%(3.4倍),虚血性心疾患35.0%(4.3倍),脳梗塞21.5%(3.1倍),肺炎8.3%(1.4倍),腎不全14.1%(3.8倍)であった.今回用いた入院患者の全疾患別集計による分析は,死因調査では見逃されている多くの糖尿病患者合併症の実態を明らかにし,患者のQOL改善に役立つ有力な方法と考える.
  • —東北地方15,000人の実態調査—
    佐藤 譲, 馬場 正之, 八木橋 操六, 須田 俊宏, 富永 真琴, 大門 真, 渡辺 毅, 岡 芳知, 豊田 隆謙
    2007 年 50 巻 11 号 p. 799-806
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病末梢神経障害の実態と臨床診断におけるアキレス腱反射の有用性を明らかにするために,東北6県448医療機関と共同で入院・通院中の糖尿病患者を対象とした調査を行った.調査に当たっては独自に作成した「糖尿病患者調査票」を用い,自覚症状とアキレス腱反射検査は必須,振動覚検査は適宜実施とした.2003年2∼9月の期間に,総計14,744症例(年齢:64.2±11.9歳,罹病期間:9.7±7.7年,HbA1c: 7.4±2.5%, いずれも平均±標準偏差)のデータを得た.自覚症状,アキレス腱反射の低下あるいは消失,振動覚低下の発現率はそれぞれ18.8%, 40.3%, 52.0%であった.糖尿病神経障害の発現頻度は,主治医の総合的判断では27.6%, 「簡易診断基準」を適用した場合では35.8%であった.アキレス腱反射の低下・消失は自覚症状に比べて糖尿病発症早期から発現し,また,その発現率は自他覚所見「なし」群に比べて「あり」群において,有意に高率であった.アキレス腱反射は外来で手軽にできる簡便な検査であるが,糖尿病神経障害診断における有用性が示唆された.
症例報告
  • 蔵野 信, 藤田 利枝, 浅野 徹, 牧野 維斗映, 池澤 和人, 山下 亀次郎, 松島 照彦
    2007 年 50 巻 11 号 p. 807-810
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,男性.潰瘍性大腸炎で通院中であったが,2006年11月23日より全身倦怠感,口渇,嘔吐,下痢の増加があり,12月1日外来受診し即日入院.入院時随時血糖1,172 mg/dl, 尿ケトン体強陽性,HbA1c 6.1%, 膵外分泌酵素の上昇,血清CPR低下,GAD抗体弱陽性とICA陰性で劇症1型糖尿病によるケトアシドーシスと診断し,インスリン療法を開始した.劇症1型糖尿病に腹部症状が多いことは知られているが,潰瘍性大腸炎の合併は稀で病因論を考える際にも興味深い症例と考え報告する.
  • 広瀬 正和, 川村 智行, 東出 崇, 木村 佳代, 稲田 浩, 青野 繁雄, 新平 鎮博, 山野 恒一
    2007 年 50 巻 11 号 p. 811-817
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    乳幼児期発症の糖尿病患者に対してCSII療法とカーボカウント法によって自立哺乳が可能となり良好な経過をとった3症例を経験した.症例は3カ月男児,1歳男児,3カ月女児.それぞれ発症後初期治療を終え当科へ紹介入院となった.3例とも10倍希釈の超速効型インスリンを使用し,ポンプはMinimed 508®を用い,注入セットはシルエット®を用いた.基礎インスリン量は1日インスリン量の半量を均等に分けて注入した.追加インスリンはカーボカウント法に従い,自立哺乳とし,哺乳量に従い追加インスリン量を決定し良好な血糖コントロールを得た.それぞれ入院13日目,8日目,6日目で退院することができた.CSII療法とカーボカウント法を組み合わせることで,自立哺乳が可能となり,血糖コントロールを行いやすく,低血糖のリスクも軽減できるため,乳幼児期発症の糖尿病患者に対して最良の治療法であると考える.
  • 松沢 俊興, 櫻井 孝, 明嵜 太一, 芳野 弘, 高田 俊宏, 横野 浩一
    2007 年 50 巻 11 号 p. 819-823
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性.5∼6年前から記銘力障害がゆっくりと進行しており,78歳で糖尿病と診断された.高血圧・肥満を認め,HbA1c 8.7%, HOMA-R 5.08であった.ミニメンタルテスト(MMSE) 24点,長谷川式簡易知能スケール(HDS-R) 21点,記憶,見当識,遂行機能の低下を認め,National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Strokes-Alzheimer's Disease and Related Disorders Association (NINCDS-ADRDA)のprobable Alzheiemer's disease (AD)と診断された.塩酸メトホルミン,グリメピリド,塩酸ドネペジルにて加療を行ったが,18カ月後にはMMSE 19点,HDS-R 17点まで脳機能は低下した.そこで血糖改善目的にピオグリタゾンを投与追加したところ,5カ月後に血糖管理はHbA1c 7.9%から6.3%, HOMA-R 5.08(初診時)から2.89に是正された.また同時に介護者から認知機能の改善を示唆する情報があり,6カ月後に神経心理検査で改善が認められた(MMSE 24点,HDS-R 21点).ピオグリタゾンはperoxiosome proliferators-activated receptor γアゴニストであり,インスリン感受性を改善させるのみならず,抗炎症作用・神経保護作用を有する.本例はADを合併した高齢者糖尿病で,ピオグリタゾン投与により脳機能の改善が認められた1例と考えられた.
委員会報告
  • —HLAおよび細小血管合併症について—
    花房 俊昭, 今川 彰久, 岩橋 博見, 内潟 安子, 金塚 東, 川崎 英二, 小林 哲郎, 島田 朗, 清水 一紀, 丸山 太郎, 牧野 ...
    2007 年 50 巻 11 号 p. 825-833
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】わが国で発見・確立された新しい臨床病型「劇症1型糖尿病」における,HLAと細小血管合併症の進展について明らかにする.【方法】日本全国の施設から委員会に登録された,劇症1型糖尿病診断基準を満たす患者を対象とした.HLAについての調査(調査1)では,劇症1型糖尿病患者115名,自己免疫性1 (1A)型糖尿病患者98名,健常者190名において,HLA-A, DR, DQの血清型を検討した.合併症についての調査(調査2)では,劇症1型糖尿病患者41名,自己免疫性1 (1A)型糖尿病患者76名において,5年間にわたり,血糖値,HbA1c値,血中Cペプチド値,重症低血糖頻度などの臨床指標と合併症の状態を調査した.【結果】調査1の結果,劇症1型糖尿病と対照を比較して,DR4, DQ4, ハプロタイプではDR4-DQ4が有意に高頻度であった.DR4-DQ4をホモで有する場合に13.3ときわめて高いオッズ比を示した.これに対し,有意に低頻度であったのはDR1, DR2, DR5, DR8, DQ1, ハプロタイプではDR2-DQ1, DR8-DQ1であった.調査2の結果,発症5年後において細小血管合併症を発症したのは,劇症1型糖尿病24.4%(網膜症9.8%, 腎症12.2%, 神経障害12.2%),自己免疫性1 (1A)型糖尿病2.4%であり,劇症1型糖尿病では有意に高頻度に細小血管症の合併を認めた.血糖日内変動M値と重症低血糖の頻度は劇症1型糖尿病群で有意に高値,血中Cペプチド値は劇症1型糖尿病群で有意に低値であったが,平均HbA1cは両群間で有意な差を認めなかった.【結論】劇症1型糖尿病調査研究委員会の全国調査により,(1) HLA DR4, DQ4が劇症1型糖尿病に高頻度に認められ,これらのclass II HLAが発症に関与している可能性があること,(2) 劇症1型糖尿病は細小血管合併症が進行しやすいハイリスクグループであること,が新たに明らかにされた.
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