【目的】わが国で発見・確立された新しい臨床病型「劇症1型糖尿病」における,HLAと細小血管合併症の進展について明らかにする.【方法】日本全国の施設から委員会に登録された,劇症1型糖尿病診断基準を満たす患者を対象とした.HLAについての調査(調査1)では,劇症1型糖尿病患者115名,自己免疫性1 (1A)型糖尿病患者98名,健常者190名において,HLA-A, DR, DQの血清型を検討した.合併症についての調査(調査2)では,劇症1型糖尿病患者41名,自己免疫性1 (1A)型糖尿病患者76名において,5年間にわたり,血糖値,HbA
1c値,血中Cペプチド値,重症低血糖頻度などの臨床指標と合併症の状態を調査した.【結果】調査1の結果,劇症1型糖尿病と対照を比較して,DR4, DQ4, ハプロタイプではDR4-DQ4が有意に高頻度であった.DR4-DQ4をホモで有する場合に13.3ときわめて高いオッズ比を示した.これに対し,有意に低頻度であったのはDR1, DR2, DR5, DR8, DQ1, ハプロタイプではDR2-DQ1, DR8-DQ1であった.調査2の結果,発症5年後において細小血管合併症を発症したのは,劇症1型糖尿病24.4%(網膜症9.8%, 腎症12.2%, 神経障害12.2%),自己免疫性1 (1A)型糖尿病2.4%であり,劇症1型糖尿病では有意に高頻度に細小血管症の合併を認めた.血糖日内変動M値と重症低血糖の頻度は劇症1型糖尿病群で有意に高値,血中Cペプチド値は劇症1型糖尿病群で有意に低値であったが,平均HbA
1cは両群間で有意な差を認めなかった.【結論】劇症1型糖尿病調査研究委員会の全国調査により,(1) HLA DR4, DQ4が劇症1型糖尿病に高頻度に認められ,これらのclass II HLAが発症に関与している可能性があること,(2) 劇症1型糖尿病は細小血管合併症が進行しやすいハイリスクグループであること,が新たに明らかにされた.
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