糖尿病
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51 巻, 7 号
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原著
  • 友常 健, 小川 吉司, 長谷川 範幸, 工藤 貴徳, 奈良岡 真紀, 玉澤 直樹, 須田 俊宏
    2008 年 51 巻 7 号 p. 587-591
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における“うつ”と血糖コントロールの関係をSelf-Rating Questionnaire for Depression(以下SRQ-D)を用いて当科通院中の糖尿病患者174名で検討した.対象者をそのHbA1cの値から診療ガイドラインに従って5群に分けたところHbA1cが5.8%以上6.5%未満と6.5%以上7.0%未満の2群でSRQ-Dの値が低い傾向が見られたため,HbA1cが5.8%以上7.0%未満の群をmoderately control group(以下mod. group)と定義し,HbA1cが5.8%未満の群と7.0%以上の群をextremely control group (ext. group)と定義して両群を比較したところext. groupで有意にSRQ-Dの値が高かった.今回の検討では,他に“うつ”に影響を与える因子として性別,年齢,糖尿病型,インスリン使用,肥満,一日の服用薬剤数を評価項目とし,これらでステップワイズ式多重回帰分析を施行したところ,性別,年齢,肥満と服用薬剤数そしてext. groupが独立した“うつ”の危険因子だった.以上から,女性,若年,肥満,一日の服用薬剤数が多い患者,HbA1cが5.8%未満または7.0%以上の患者を診察する際には“うつ”の合併に注意が必要と考えられる.
  • 石井 均, 古家 美幸, 飯降 直男, 山上 啓子, 石橋 里江子, 辻井 悟
    2008 年 51 巻 7 号 p. 593-600
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    インスリン治療患者の眠前から起床時までのQOLに着目し,インスリン治療が患者QOLに与える影響を測定するための質問表の開発を目的とする研究を行った.インスリン治療に関する夜間QOL質問表(ITR-QOLN: Insulin Therapy Related QOL at Night)は,21項目の質問から構成され,因子分析の結果から,就寝/早朝低血糖障害,就寝前低血糖不安,ウェルビーイングおよび朝食前血糖コントロールのサブスケールから構成されていることが確認された.テスト-リテスト間の相関性および重みつきκ係数を用いた検討結果から,内部一貫性および再現性とも良好であった.併存妥当性に関しては,ウェルビーイング尺度との間に高い相関関係が示された.以上よりITR-QOLNは,インスリン治療患者の眠前から起床時までのインスリン治療に関するQOL測定法として,臨床的に有用な質問表であることが証明された.
  • 石井 均, 古家 美幸, 飯降 直男, 山上 啓子, 石橋 里江子, 辻井 悟
    2008 年 51 巻 7 号 p. 601-608
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    新たに開発したインスリン治療に関連する夜間QOLを測定する質問表(ITR-QOLN)を用いて,インスリン治療が患者QOLに与える影響および糖尿病治療の臨床的指標との関連について検討した.糖尿病型では,1型糖尿病患者は2型糖尿病患者に比してQOLが低値であった.血糖コントロールに関しては,HbA1cが良好であるほど,また朝食前血糖値平均値が低いほどQOLは高かった.さらに,朝食前および眠前血糖値の変動が少ないほどQOLは高値であった.低血糖を発現している患者のQOLは低値であったが,低血糖が発現しても患者自身で対処できる自信がある患者ではQOLは高値であった.結論として,インスリン治療においてより高いQOLを達成するためには,低血糖の発現をできるだけ少なくし,望ましい血糖コントロールを達成することが必要であることが証明された.
症例報告
  • 岩田 実, 山崎 勝也, 宇野 立人, 薄井 勲, 石木 学, 小橋 親晃, 浦風 雅春, 小林 正, 戸邉 一之
    2008 年 51 巻 7 号 p. 609-614
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性.1975年より2型糖尿病を指摘され,2001年よりインスリン治療を開始,合併症については2期腎症,単純性網膜症,神経障害を指摘されていた.2004年3月末より,全身倦怠感,発熱が出現し当科入院.白血球尿および顕微鏡的血尿を認め,当初尿路感染症を疑い抗生物質を投与したが,次第に腎機能が悪化し,尿所見も改善しないため急速進行性糸球体腎炎を疑い精査を行った.MPO-ANCA (myeloperoxidase antineutrophil cytoplasmic autoantibody)高値や,腎生検にて細胞性半月体を認めMPO-ANCA関連腎炎と診断,プレドニン40 mg/日より開始し,腎機能障害,尿所見の異常,MPO-ANCA高値は速やかに改善した.ANCA関連血管炎は高齢者に好発するため,罹病歴の長い高齢糖尿病患者であっても,急速な腎機能の悪化や尿所見に異常を認めた場合は,急速進行性糸球体腎炎の合併も疑い,速やかに対処する必要があると考えられた.
  • 齋藤 幸枝, 土持 若葉, 上野 浩晶, 野間 健之, 秋山 寛, 水田 雅也, 石川 眞理, 松倉 茂, 福田 冬季子, 杉江 秀夫, 中 ...
    2008 年 51 巻 7 号 p. 615-618
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の男性.2歳時に糖原病を指摘され,その後低血糖発作が度々出現していた.27歳時慢性膵炎による糖尿病と診断され,インスリンを導入された.2006年11月HbA1c 10%台と血糖コントロール不良であり,意識消失発作も頻回となったため,精査加療目的で当院に紹介入院した.強化インスリン療法を導入したが,血糖の日内変動が大きかった.Debranching enzymeの酵素活性低下を認め,糖原病IIIa型と診断した.意識消失発作の原因と考えられた低血糖予防にコーンスターチ摂取を開始したところ,血糖の日内変動もやや小さくなった.糖原病III型に慢性膵炎を合併した症例はわれわれが調べ得た限り報告はない.本患者は予後に関わる肝,心筋障害も合併しており,注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 早川 哲雄
    2008 年 51 巻 7 号 p. 619-622
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,女性.28歳で発症した劇症1型糖尿病でNPHインスリンとインスリンリスプロによる強化インスリン療法でHbA1c 5%台と血糖コントロールは良好であった.発症1年後も,内因性インスリン分泌を認めず糖尿病関連自己抗体も陰性であった.30歳よりグラルギンとインスリンリスプロによる強化インスリン療法に変更した.発症後2年で妊娠6週と判明しHbA1cは5.6%であったが血糖不安定でありインスリンリスプロによるcontinuous subcutaneous insulin infusion (CSII)を行った.妊娠の進行に伴い,基礎注入量,追加注入量が増加した.妊娠37週,胎児仮死を認めたため帝王切開を行い体重3,014 gの新生児を出産した.出産後の経過は母児とも良好であった.血糖コントロール困難な劇症1型糖尿病合併妊娠にはCSIIを積極的に使用すると胎児予後は良好であると思われた.
  • 牛腸 直樹, 木田 道也, 堀内 敏行, 平田 結喜緒
    2008 年 51 巻 7 号 p. 623-628
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,女性.右眼痛,羞明,結膜充血のため近医でぶどう膜炎と診断,加療されたが軽快しないため当院眼科受診.血糖444 mg/dl, HbA1c 15.8%と異常高値で糖尿病性ぶどう膜炎を疑われ当科に緊急入院.膵島関連自己抗体は陰性だがインスリン分泌は枯渇しており,特発性1型糖尿病と診断し強化インスリン療法を導入した.血糖コントロールに伴いぶどう膜炎は速やかに軽快,退院したが退院後に右眼の糖尿病網膜症の急速な進展と黄斑症による視力低下を来した.黄斑症に対し局所網膜光凝固を行ったが,その後に網膜前出血を合併した.糖尿病眼合併症としてのぶどう膜炎は比較的稀であり,その発症機転については不明な点が多い.視力予後については良好とされるが本症例のように網膜症の急速な進展を認める症例の報告もあり,糖尿病性ぶどう膜炎の発症機転や治療に関する考察を加えて報告する.
  • 古川 健亮, 谷口 悠, 奥野 陽子, 大原 毅, 小川 渉, 白神 敦久, 柴田 泰伸, 春日 雅人
    2008 年 51 巻 7 号 p. 629-634
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.2005年9月より全身倦怠感を認めるため同年10月に近医を受診したところ随時血糖値397 mg/dlでありimmunoreactive insulin (IRI)も500 μU/mlと著明高値であった.さらにインスリン受容体抗体陽性であったためインスリン受容体異常症B型と診断され,2006年1月当院へ紹介入院となった.入院時,HbA1c 11.1%, 血糖値443 mg/dl. 本症ではしばしば免疫学的異常を合併することが知られているが,本例でもシェーグレン症候群を合併し,それ以外にも多彩な免疫学的異常を認めた.高度なインスリン抵抗性を呈し,1日160単位までインスリンを増量しても血糖値は改善を認めなかったためinsulin-like growth factor-1 (IGF-1)による治療を行ったところ著明に血糖コントロールが改善した.比較的稀な疾患であるインスリン受容体異常症B型を経験しIGF-1が著効したので報告する.
  • 三崎 麻子, 鈴木 進, 山崎 俊朗, 手塚 崇文, 小川 智子
    2008 年 51 巻 7 号 p. 635-638
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    患者は47歳の女性で,31歳時鼻腔悪性腫瘍の手術の際に,Werner症候群と臨床診断され,同時に糖尿病も指摘され入院中投薬を受けるも,以後放置していた.42歳時に再び高血糖を指摘され当院へ入院した.入院時の検査では空腹時インスリン値(F-IRI) 11.1 μU/ml, 尿中Cペプタイド(U-CPR) 142 μg/日と高インスリン血症を認め,インスリン抵抗性の存在が示唆された.1,360 kcal/日の食事療法とmetformin 500 mg/日で良好なコントロールが得られ退院となったが,43歳時に左アキレス腱部に難治性の下腿潰瘍を発症した.下腿潰瘍発症後はインスリン治療を開始したが,それまでの約1年間血糖値はmetformin単独で良好にコントロールされた.metforminで血糖コントロールが可能であったWerner症候群の報告は少なく,興味ある症例と思われたため報告する.
コメディカルコーナー・原著
  • 堀江 典代, 上田 一仁, 柴崎 早枝子, 寺前 純吾, 今川 彰久, 花房 俊昭
    2008 年 51 巻 7 号 p. 639-644
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay)を原理とした全自動免疫測定装置LUMIPULSE®f(富士レビオ)を用いて,新しいCペプチド測定試薬「ルミパルス®C-ペプチド」(富士レビオ)の性能評価を行い,低濃度領域での臨床的有用性を検討した.
    その結果,本法は再現性,検出感度ともに優れており,共存物質の影響もなく,特にプロインスリンとの交差反応性はほとんど認められなかった.さらに本法と蛍光酵素免疫測定法であるAIA®-21, 電気化学発光免疫測定法であるECLusys®2010との相関は血中Cペプチド,尿中Cペプチドとも良好であった.本法は高感度,高精度測定が可能であり,診療前検査を視野に入れた日常検査に十分に有用であると考えられた.一方,本法によって,従来法では測定感度以下(<0.2 ng/ml)であった1型糖尿病患者を0.01 ng/ml以上群と0.01 ng/ml未満群に分け,病態比較を行った結果,病型,罹病期間,発症様式において明瞭な特異性はなく,Cペプチド低濃度領域患者群での臨床背景に差異は認められなかった.
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