糖尿病
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52 巻, 3 号
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原著
  • 岡山 かへで, 後藤 広昌, 吉原 知明, 池田 富貴, 福井 宗憲, 東 さつき, 藤谷 与士夫, 綿田 裕孝, 河盛 隆造, 弘世 貴久
    2009 年 52 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,スルホニル尿素薬による治療効果が不十分となった2型糖尿病患者のインスリン療法として持効型溶解インスリンを1日1回上乗せするBasal-supported Oral Therapy (BOT)が注目されている.簡便でコンプライアンスが良好であるが,HbA1cの改善度は頻回注射に比較すると高いとは言えない.そこで,BOTで効果が不十分な2型糖尿病患者を対象に朝食あるいは夕食直前1回から超速効型インスリンを追加し,不十分であればさらにもう1回を追加するという,超速効型インスリンの段階的追加法の血糖コントロールに及ぼす効果を観察した.観察した16例において超速効型インスリンの1回,あるいは2回の追加によりHbA1cは8.12±0.92%から24週後には7.19±0.54%(p<0.0001)と改善した.観察期間中,重症低血糖は認めず,体重増加は有意ではあったがわずかであった.本研究は非対照の観察研究であり,結果の解釈には制限があるもののSU薬とグラルギン併用療法の効果不十分例に対し,超速効型インスリンの段階的追加法(Basal Plus法)は有効である可能性が示唆された.
  • 藤川 るみ, 伊藤 千賀子
    2009 年 52 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    CTで測定した内臓脂肪面積(Visceral Fat Area, 以下VFA)を基本にして,メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome, 以下MS)をスクリーニングする適切な腹囲径を検討した.対象は当所で人間ドックを受診した1,617例(男性1,101例,女性516例)である.MSの判定項目である高血圧,脂質代謝異常,空腹時高血糖のうち2個以上有するものをスクリーニングする精度をVFA別に比較した.男性ではVFA 94 cm2, 女性では60 cm2が最も精度が高く,感度と特異度は男性69%, 女性77%であった.それに対応する腹囲径は男性86.0 cm, 女性82.4 cmであった.リスクファクターが0, 1, 2, 3個につき各々の臨床検査データを男女別に検討した.男女共に危険因子が多くなるに従いVFAも増加し,血圧,脂質代謝に悪化がみられた.そこで,MSをスクリーニングする腹囲の基準として男性85 cm, 女性82 cmを提案したい.男性では従来の日本の基準と大差ない結果であったが,女性では大きな差を認めた.女性は男性に比しVFAは著しく少なくVFAの基準は男女別に設定が必要と考えた.
  • 石井 均, 辻井 悟, 田中 正巳, 古家 美幸, 飯降 直男, 植田 玲, 奥山 さくら, Risa P. Hayes, 岡村 将人, 岩 ...
    2009 年 52 巻 3 号 p. 209-221
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    インスリンの投与方法(インスリンおよびその投与器具の両方を含む)が患者のQOL (Quality of life)に与える影響を測定するため,Insulin Delivery System Questionnaireの日本語版(以下,IDSQ-J)を開発した.IDSQ-Jは患者自記式の18の質問項目,4つの質問群から構成され,因子分析の結果,共通性の低い2つの質問項目を除く16項目が満足度,扱いやすさ,日常生活への影響,血糖コントロールという4つの下位尺度を構成していることが検証された.各下位尺度スコアについて,良好な再現性が認められ,インスリン治療に対する意識調査結果や糖尿病治療満足度質問表と期待された関連性をもって妥当性が確認された.以上の結果より,IDSQ-Jはインスリン投与方法を患者の立場から総合的に評価する評価尺度として実用上,有用であることが証明された.
症例報告
  • 盛田 幸司, 飛梅 美智子, 安谷屋 徳章, 川本 博嗣, 内田 香介, 濱田 耕司, 藤井 博子, 吉田 理恵, 高祖 裕司, 元吉 和夫 ...
    2009 年 52 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病・足壊疽から炎症性貧血を呈し,血清クレアチニン(Cre)は基準値内だが血清エリスロポエチン(EPO)上昇反応が不良で,EPO製剤投与を試みた2症例を報告する.症例は51歳,男性(HbA1c 14.0%, Hb 8.1 g/dl, EPO 22.3 mU/ml)と47歳,女性(HbA1c 11.7%, Hb 6.7 g/dl). 前者はEPO投与後に網赤血球数・貧血が改善した.後者は炎症改善後,腎機能不変も内因性EPO値が改善(16.6→29.7 mU/ml)したため,EPO上昇反応不良に腎障害以外の要因も疑われた.ともに腎症3B期だがEPO投与基準(Cre≥2 mg/dl等)外である.腎障害以外に炎症性サイトカインもEPO産生低下に働き,貧血を助長するとされる.炎症長期化で貧血が遷延する糖尿病足壊疽例で,輸血頻度減少を狙ったEPO投与が真に有効か(ひいてはEPO投与基準も見直されるべきか),今後の検証が望まれる.
  • 今枝 憲郎, 山田 一博, 木村 了介, 一柳 亞季, 藤岡 はるか, 龍華 史江, 水野 達央, 遠山 竜也, 山下 啓子, 岡山 直司, ...
    2009 年 52 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は27歳女性.重症筋無力症(MG)とバセドウ病で治療中であった.2007年5月に他院でチアマゾール(MMI)が2週間投与されたが,患者にはMMI, プロピルチオウラシル両者にアレルギーがあり,手術予定であった.7月下旬に意識消失で当院に救急搬送された時,低血糖(24 mg/dl)を認めた.空腹時検査でIRIの異常高値(233 mIU/ml)とインスリン投与歴がないにもかかわらずインスリン抗体結合率が上昇(89%)していた.HLA DRB1*0406が認められ,Scatchard解析ではhigh-affinity siteの親和性低値(0.0195×108 M-1), 結合能高値(119×10-8 M)を示し,MMIにより誘発されたインスリン自己免疫症候群(IAS)と診断した.バセドウ病には甲状腺亜全摘術を施行した.MGにバセドウ病が合併することは知られているが,さらにIASが合併するという極めて稀な症例であり報告する.
  • 阿部 麻記子, 梅園 朋也, 小林 貴子, 大貫 恵子, 加藤 麻祐子, 宮内 雅晃, 山本 直之, 木村 守次, 豊田 雅夫, 鈴木 大輔
    2009 年 52 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    進行性筋強直性ジストロフィー(以下MyD)患者にはしばしば糖尿病を合併し,骨格筋におけるインスリン抵抗性の存在が想定されており,インスリン抵抗性改善薬の有用性が期待される.Pioglitazoneによりインスリン必要量を減少しえた糖尿病合併進行性筋強直性ジストロフィーの2症例を経験したので報告する.症例1: 63歳,女性.48歳時MyDと診断.62歳で血糖高値指摘,HbA1c 10.8%でインスリン導入,1日最大54単位必要であったインスリンがpioglitazoneを開始後14単位に減少した.症例2: 50歳,男性.30歳時MyDと診断.39歳で糖尿病指摘.42歳から強化インスリン療法導入.筋力低下により頻回注射困難となるが,pioglitazoneを開始したところ,1日あたりのインスリン量20単位が4単位まで減少した.糖尿病を合併したMyD患者へのpioglitazoneの投与は,インスリン抵抗性改善による血糖降下作用の可能性が示唆され,インスリン投与量の減少から患者の負担の軽減ができると考えられた.
  • 河邉 聡子, 富沢 浩子, 坂内 千恵子
    2009 年 52 巻 3 号 p. 239-241
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病性筋梗塞を発症した50歳台,男性の2例である.両者ともHbA1c 9.0%以上と血糖コントロール不良状態であった.誘因なく下肢疼痛が出現し,MRI所見から糖尿病性筋梗塞と診断した.糖尿病性筋梗塞は,四肢に急激な疼痛,腫脹が出現する非常に稀な糖尿病合併症であり,発症の原因・機序は明らかにされていない.糖尿病性筋梗塞は高血糖が大きな要因であり,他の糖尿病合併症の有無には関わらないと考えられた.
  • 安井 佑, 鈴木 義史, 瀬戸 洋平, 塩尻 俊明, 松永 高志, 堀江 篤哉, 岩本 逸夫, 吉田 象二, 橋本 尚武
    2009 年 52 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.入院4カ月前から徐々に進行する下肢脱力,2週間前より息切れと動悸,その後口渇,多飲,嘔吐が出現し来院.随時血糖439 mg/dl, HbA1c 8.9%, 血中ケトン体高値,代謝性アシドーシスの存在から糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の診断で入院.抗GAD抗体は当初2.2 U/mlと低抗体価陽性であったが,その後83.6 U/mlまで上昇し1A型糖尿病と診断.また,甲状腺腫,甲状腺機能亢進,甲状腺受容体抗体陽性よりバセドウ病の合併と診断した.入院時下肢近位筋優位の筋力低下と,大腿筋の著明な萎縮を認めたが,筋電図で神経原性所見は認めなかった.DKAとバセドウ病の治療を行い筋力低下は3週間程度で回復し,甲状腺中毒性ミオパチーと診断した.病態としてバセドウ病が先行し,1型糖尿病が併発したために,甲状腺機能亢進がDKAの誘因となり,さらにDKAがミオパチーの増悪因子になったと考えた.
  • 岡田 由紀子, 押谷 創, 杉山 豊, 三村 哲史, 浅野 靖之, 辻田 誠, 渡部 啓子, 成瀬 友彦, 佐々木 洋光, 渡邊 有三
    2009 年 52 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.47歳より糖尿病を指摘され,52歳からインスリン(ペンフィル30R®)を使用していた.53歳で血液透析を導入し,57歳で右下肢切断術を行った際,血糖コントロール不良でインスリン抗体68.8%, HbA1c 13.3%であった.インスリンリスプロに変更し,血糖コントロールは改善した.今回,急性腹症で来院し穿孔性腹膜炎の診断で緊急入院手術となったが,術後遷延性低血糖と高血糖を呈した.インスリン製剤の変更,ステロイドの併用,二重膜濾過(DFPP), pioglitazoneの併用などを試みたが血糖コントロールは改善せず.インスリンとは異なる機序の血糖降下作用をもつIGF-1製剤メカセルミン(ソマゾン®)を使用し,コントロールを得た症例を経験したので報告する.
  • 大濱 俊彦, 金城 一志, 知念 希和, 曽爾 浩太郎, 武田 英希, 諸見里 拓宏, 張 同輝, 宮平 健
    2009 年 52 巻 3 号 p. 255-258
    発行日: 2009/03/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    みかん缶詰・アイスクリームの大量摂取により,清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を来たした症例を経験したので報告する.症例は40歳のメタボリックシンドロームを有する男性.上気道感染罹患後,食欲低下からみかん缶詰などを多量に摂取していた.口渇,多尿の症状が強くなり,2週間で10 kgの体重減少を認め,全身倦怠感が強くなったため外来受診した.受診時,血糖1,150 mg/dlと著明な高血糖とケトーシスを呈していた.初期のインスリン治療に対する反応は非常によく,糖毒性が取れるとともに血糖コントロールも著明に改善し,入院時低下していた内因性インスリン分泌能も改善してきた.現在経口糖尿病薬でコントロール良好である.来院時,糖尿病性ケトアシドーシスとの鑑別を要したが,病歴,治療への反応性等から清涼飲料水ケトーシスと同様の病態と判断した.メタボリックシンドロームの増加に伴いインスリン抵抗性を持った人が増えており,本症例のように清涼飲料水ケトーシスあるいは清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を来たす症例は今後も増加すると思われる.そのため,高血糖,ケトアシドーシスで発症した若年の糖尿病患者を診た場合に1型糖尿病の糖尿病性ケトアシドーシスと同時に清涼飲料水ケトーシスも鑑別に入れないといけないと思われる.その際,詳細な病歴聴取により,インスリン抵抗性の存在,日常的な清涼飲料水あるいはその他の糖分など(本症例ではみかん缶詰やアイスクリーム)の大量摂取の食事歴を明らかにすることが重要である.本症例は長期間の清涼飲料水の多飲歴がなく,清涼飲料水ケトーシスの典型例ではなかった.清涼飲料水ケトーシスの発症にフルクトース負荷が関与するとの報告もあり,フルクトースを含むみかん缶詰がケトーシス発症に影響を及ぼした可能性があると思われた.本症例のように清涼飲料水に限らずそれ以外の糖分の急激な大量摂取も清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を呈するので注意を要する.
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