糖尿病
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52 巻, 8 号
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特集 1型糖尿病up-to-date
原著
  • —腎症病期別の検討—
    大塚 章人, 小木曽 泰成, 村井 一樹, 市原 紀久雄
    2009 年 52 巻 8 号 p. 683-689
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    糸球体濾過量低下と動脈硬化リスク上昇の関連について,糖尿病性腎症の病期別に検討した.対象は外来通院中の糖尿病患者576人(男性53%, 平均年齢65歳).推算糸球体濾過量の低下(60 ml/min/1.73 m2未満)を示す症例の割合は,腎症前期で29%, 早期腎症期で40%, 顕性腎症期で67%と,病期が進むにつれ高率であった.腎症病期別に推算糸球体濾過量の低下群と非低下群に分け,動脈硬化関連指標について比較した.低下群では非低下群に比べ,全ての病期で年齢と尿酸値が上昇し,腎症前期および早期腎症期では脈波伝播速度の亢進,HDLコレステロール値低下も認められ,さらに,腎症前期では糖尿病罹病期間が長く,脈圧が上昇し,高血圧症と脂質異常症合併率が高かった.糸球体濾過量低下は,腎症各病期において動脈硬化関連指標の悪化と関連していたが,特に腎症前期でその数が多かったことから,腎症発症前から動脈硬化性疾患の発症を予知する指標になる可能性が示唆された.
  • —NPHインスリンを対照とした無作為化比較試験—
    石井 均, 岩本 安彦, 加来 浩平, 河盛 隆造, 小林 正, 田嶼 尚子
    2009 年 52 巻 8 号 p. 691-701
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    Basal-Bolus療法実施中の日本人糖尿病患者を対象に,インスリン デテミル(以下デテミル)の有効性と安全性を確認するため,NPHインスリン(以下NPH)を対照とした無作為化比較試験を行った.その中で,夜間QOL質問表(ITR-QOLN)とインスリン治療法に関する満足度(ITSQ-J)を用い,デテミルが夜間QOL (quality of life)や治療満足度に与える影響をNPHと比較した.ITRQOLNでは,1型・2型糖尿病ともにデテミル群で総スコアが投与期間を通じベースラインより高く,1型では投与48週後のスコアがNPH群に比べ有意に高かった(p=0.03). ITSQ-Jでは,1型糖尿病のデテミル群で投与期間を通じベースラインと同程度のスコアが維持され,2型ではベースラインより高く推移した.1型の48週後スコアは,NPH群と比較して有意に高かった(p=0.04). デテミルは,夜間低血糖の発現率を減少させるという特性により,夜間QOLを改善し治療満足度を高めることが示された.
症例報告
  • 井上 智彰, 平瀬 伸尚, 市野 功, 田中 誠一, 土師 正文
    2009 年 52 巻 8 号 p. 703-707
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,女性.60歳時に重症筋無力症,胸腺腫を指摘.2005年8月, Hb 8.1 g/dlの貧血を認め,MCV 130 fl, VitB 1250 pg/ml未満,抗胃壁細胞抗体および抗内因子抗体陽性にて悪性貧血と診断.メコバラミン筋注・内服治療を行い,Hb 10∼11 g/dlで推移していた.2007年1月,Hb 4.1 g/dlと低下.骨髄穿刺にて赤芽球癆と診断し,プレドニゾロンを20 mg/日にて加療開始.その後,肺炎等を繰り返したため,7月より5 mg/日に漸減した.2007年9月18日より,気分不良・多飲・多尿傾向で,19日来院.血糖583 mg/dl, HbA1c 6.8%, 尿ケトンを認め糖尿病性ケトアシドーシスの診断にて入院加療.抗GAD抗体は陰性だが,血中・尿中CPRは測定感度以下で1型糖尿病と診断した.胸腺腫に重症筋無力症・悪性貧血・赤芽球癆・1型糖尿病を合併した例はきわめて稀であり,報告する.
  • 大谷 敏嘉, 笠原 督, 佐藤 麻子, 百村 伸一, 内潟 安子, 岩本 安彦
    2009 年 52 巻 8 号 p. 709-715
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    50歳頃から重症低血糖と体重増加をきたした45年以上の罹病歴を有する小児期発症1型糖尿病2症例の予後を報告する.症例1は54歳の女性.1959年11月(6歳)発症.2002年3月(48歳)から意識消失を伴う重症低血糖が頻回に出現〔体重66kg, body mass index (BMI) 26.1 kg/m2〕.2007年11月(54歳),朝より低血糖を繰り返し,ジュースを合計3リットル飲用したところ呼吸困難が出現.心不全と診断され緊急入院となった(80 kg, 31.6 kg/m2). 症例2は55歳の女性.1961年(10歳)発症.2004年3月(52歳)の体重は54.5 kg (22.0 kg/m2)であったが,同年5月頃より増加し始めた.2005年3月(53歳)から意識消失を伴う重症低血糖が頻回出現(56 kg, 22.4 kg/m2). 2006年1月(54歳)には体重は60 kg (24.0 kg/m2)になった.2007年5月(55歳)の朝,“dead in bed” syndromeにて発見された.小児期発症1型糖尿病女性患者では更年期を迎える頃から重症低血糖と体重増加をきたし,致死的状況に至ることがあるので,注意深い血糖・体重管理が必要である.
  • 高屋 和彦, 田口 吉孝, 井上 達秀
    2009 年 52 巻 8 号 p. 717-722
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,女性.眼球突出および著明な頻脈を伴う意識障害があり,近医で甲状腺クリーゼを疑われ,当院に救急搬送された.血糖値723 mg/dl, HbA1c 10.3%, pH 7.003, 尿ケトン体強陽性より糖尿病ケトアシドーシスにて入院とした.抗GAD抗体陽性であり,1型糖尿病と診断した.fT3 6.3 pg/ml, fT4 2.81 ng/dl, TSH<0.02 μIU/ml, TSH受容体抗体陽性のため,バセドウ病も発症しており,多腺性自己免疫症候群(PGA) 3型と考えられた.HLA (human leukocyte antigen)検査では,1型糖尿病やバセドウ病の疾患感受性遺伝子を認めた.甲状腺クリーゼは臨床経過から除外し得たが,PGA 3型では糖尿病および甲状腺疾患の緊急状態が合併する可能性や,それらの診断が困難である可能性があり,示唆に富む症例であると考えられた.
  • 野村 由夫, 田内 春見, 草田 典子, 松田 淳一, 山下 啓介, 高桑 英夫, 奥山 牧夫
    2009 年 52 巻 8 号 p. 723-726
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.1988年,2型糖尿病を発症し,以後内服加療を継続.2001年,両眼に増殖前糖尿病網膜症を認めたため汎網膜光凝固術を施行し,眼症状は落ち着いていた.2007年,右眼の疼痛,充血,急激な視力低下があり,当院眼科を受診し入院加療.空腹時血糖84 mg/dl, HbA1c 7.0%, 視力右:手動弁(矯正不能),左:0.15 (0.2), 眼圧右:30 mmHg, 左:16 mmHg, 右眼に虹彩ルベオーシス,隅角に血管新生あり.眼底検査で右視神経乳頭萎縮,蛍光眼底造影写真で右眼底の腕-網膜時間の遅延,また頸部MRAにて右内頸動脈の狭窄を認めたため,右内頸動脈狭窄症による眼虚血症候群とそれに伴う血管新生緑内障と診断し,右網膜光凝固術,右毛様体冷凍凝固術を施行した.充分な視力回復が得られなかったため,さらに右内頸動脈内膜剥離術を施行,その結果,右視力は0.05 (0.4)に回復した.糖尿病における眼合併症は細小血管障害である糖尿病網膜症によるものが一般的であるが,今回のように大血管障害が起因する場合もあるので注意を要すると考えられる.
コメディカルコーナー・原著
  • 平井 啓, 本田 初実, 中西 健二, 井倉 技, 湯川 紗世子, 北川 透, 種村 匡弘, 伊藤 壽記
    2009 年 52 巻 8 号 p. 727-733
    発行日: 2009/08/30
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    脳死下および生体からの膵腎同時移植(SPK)患者5名と腎移植後膵移植待機(KTA)患者5名,膵腎同時移植待機中(WL)患者20名を対象に,健康関連QOLと抑うつ・不安などの心理状態について評価を行い比較検討した.全般的QOLの尺度であるMedical Outcome Health Survey Short Form-36, version 2 (SF-36 v2)と抑うつ・不安の尺度であるHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)によるアンケート調査を行った.SPK患者は,KTA患者とWL患者に比べて,SF-36の身体機能,日常役割機能(精神),身体的サマリースコアが有意に高かった.また,SPK患者のスコアは,46∼55点と国民標準値である50点とほぼ変わらない範囲にあった.また,HADSでは,SPK患者は,不安と抑うつともに正常域の患者が他の群に比べて多い傾向がみられた.本研究の結果により,わが国のSPK患者のQOLの高さが確認され,KTA患者とWL患者のQOL評価の重要性と精神症状に対するケアの必要性も指摘された.
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