糖尿病
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53 巻, 10 号
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ミニレビュー
原著
  • 石井 均, 辻井 悟, 田中 正巳, 古家 美幸, 飯降 直男, 植田 玲, 奥山 さくら, Risa P. Hayes, 岡村 将人, 岩 ...
    2010 年 53 巻 10 号 p. 726-736
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    新たに開発され信頼性及び妥当性の確認されたインスリン投与方法に関する評価尺度Insulin Delivery System Questionnaireの日本語版(以下IDSQ-J)に関して,この開発過程で得られたデータを用いて,事後に計画した探索的検討として,ペン型インスリン注入器に着目したサブ解析を行なった.解析結果より,患者の立場からみれば,ペン型インスリン注入器に関するQOLに関しては,「日常生活への影響」が大きな要素を占めることが明らかとなった.IDSQ-Jは,社会的条件における患者の立場からのインスリン投与方法の評価にも有用であり,再現性,妥当性だけではなく,臨床的な有用性も兼ね備えている質問表であると考えられた.
  • 金塚 東, 川井 紘一, 平尾 紘一, 大石 まり子, 小林 正, 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)
    2010 年 53 巻 10 号 p. 737-744
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)は,経口血糖降下薬とインスリンの併用療法患者が他の療法患者に比べ血糖コントロールが最も不良であることを報告した.そこで,その実態の詳細を明らかにするために,2008年に多施設で糖尿病診療情報データベース,CoDiC®に登録されたデータを用いて2型糖尿病における薬物療法について断面調査を行った.2型糖尿病患者,43,574名中4,684名(10.7%)に併用療法が行われた.併用療法患者は食事および経口薬療法患者に比べ推定発症年齢が若く,罹病期間が長かった.他の療法患者に比べBMIが高く,HbA1cと食後血糖値が高値であった.インスリンは混合製剤,経口薬はメトホルミン剤が最も多く併用された.HbA1c値の層別解析において,HbA1c 8.0%以上の症例は他症例に比べ,年齢と推定発症年齢が若く,BMIが高値で,収縮期血圧とLDL-コレステロール値が高値であった.今回の断面調査で2型糖尿病における併用療法の実態が明らかになった.併用療法患者,特に血糖コントロール不良患者で年齢と推定発症年齢が若く,肥満傾向があるので,治療法の改善を目的に更に詳細な研究が必要である.
症例報告
  • 大楠 崇浩, 浦川 彩子, 岡部 圭介, 桂 央士, 山本 裕一, 久保 典代, 吉間 陽子, 藤木 典隆, 坂本 賢哉, 小杉 圭右, 馬 ...
    2010 年 53 巻 10 号 p. 745-749
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性と26歳女性の兄妹.兄は27歳より糖尿病治療中であったが,数年前より治療を自己中断していた.また高校生の頃から難聴と両下腿の筋力低下を自覚していた.初診時,高血糖と感音性難聴を認め,糖尿病が母系遺伝であることからミトコンドリア糖尿病を疑い,白血球を精査したところミトコンドリア3243(A→G)点突然変異を認めた.妹は16歳時に学校検診を契機に糖尿病と診断され,初診時はGAD抗体<4 U/mlであったが,20歳時に53.8 U/mlと抗体価の上昇を認め1型糖尿病と診断された.24歳時,兄に遺伝子異常を認めたことから同様に精査をしたところ3243(A→G)点突然変異を認めた.ミトコンドリア糖尿病では原則,GAD抗体は陰性とされ,陽性例の報告は極めて稀である.GAD抗体が陽性となる機序に関しては未だ不明な点が多いが,発症メカニズムを推察する上で重要な症例と考えられるため報告する.
  • 川原 順子, 高田 裕之, 平岩 善雄
    2010 年 53 巻 10 号 p. 750-754
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.1995年(55歳)に2型糖尿病と診断され,SU薬が投与された.2006年(66歳)より血糖コントロールが不良となり,アスパルト混合製剤にてインスリン導入し血糖コントロールは改善したが,4ヶ月後より再び血糖コントロールが悪化した.インスリン抗体価が高値であり,アスパルト混合製剤の中止,経口血糖降下薬のみの治療に変更したが改善しなかった.リスプロの投与,ステロイドの投与を行ったが,血糖コントロールは不良であった.経過中,血中遊離インスリン値は常に低値または感度以下であった.デテミルを投与した翌月より血糖コントロールが改善し,インスリン抗体価が高い状態でも,遊離インスリン値は80-200 μU/mlと明らかに増加した.デテミルと他のアナログであるアスパルトとリスプロとの構造の差異は,デテミルにおいてインスリンB鎖の30位が欠失し29位に脂肪酸が付加されている点である.この差異が遊離インスリン値の上昇と血糖コントロールの改善に関与した可能性がある.
  • 永瀬 亮, 岸本 卓巳
    2010 年 53 巻 10 号 p. 755-759
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.2003年10月随時血糖350 mg/dlと大球性貧血を指摘された.2004年1月糖尿病教育入院を行い,食事療法にて血糖コントロールは改善した.貧血はVit.B12低値で抗内因子抗体陽性より,悪性貧血と診断された.以後,2型糖尿病として食事療法にてHbA1c 6%台前半(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53:450-467, 2010))で経過していたが,2009年5月HbA1c 11.4%と急激な上昇を認めた.2004年1月には内因性インスリン分泌は保たれ,膵島関連自己抗体陰性より,2型糖尿病と診断していた.今回入院時に内因性インスリン分泌能は著明に低下し,GAD抗体強陽性となっており,1型糖尿病に転化したと考えられた.抗TPO抗体陽性で慢性甲状腺炎の合併を認めた.悪性貧血と2型糖尿病で発症し,1型糖尿病に転化した多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyglandular syndrome;APS,以下APS)III型の1例を経験した.
  • 赤羽 貴美子, 竹内 誠治, 竹内 彩子, 篠田 純治
    2010 年 53 巻 10 号 p. 760-764
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    持続皮下インスリン注入療法(CSII)にて妊娠前後とも良好な血糖コントロールを維持した1型糖尿病患者を経験し,妊娠に伴うインスリン必要量の推移を評価できたと考えられたため報告する.症例は33歳女性.25歳で1型糖尿病を急性発症.27歳時にCSIIを導入し,33歳時に妊娠し,39週で正常分娩となった.妊娠・出産・授乳終了に至るまで良好な血糖コントロールを維持した.基礎インスリンは,妊娠20週以降増加し,妊娠30週に必要量が最大となり,出産直前に減少,出産直後やや増加し授乳期に低下した.追加インスリンは,20週以降増加し出産直前に最大となり,出産直後から大幅に減少,授乳期は妊娠前と同量となった.授乳終了後は基礎・追加インスリンともに妊娠前の状態に戻った.糖尿病合併妊娠の際にはこのようなインスリン必要量の変化を熟知して対応する必要がある.
コメディカルコーナー・原著
  • 平野 裕滋, 石田 典子, 児玉 亮, 中村 菜摘, 堀内 智美, 長谷川 亮, 田中 宏明, 水林 竜一, 家田 俊明
    2010 年 53 巻 10 号 p. 765-771
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    脳梗塞発症早期患者で糖尿病を合併した群9例と糖尿病を合併していない群26例および健常群10例の3群で,体位変化に対する脳内酸素飽和度変動を近赤外線分光法にて調べた結果,糖尿病を合併している群が他の2群に比べ有意に変動が大きかった.さらに脳梗塞を発症していない糖尿病患者を糖尿病性3大合併症の有無にて分類し,健常群を加えて体位変化に対する脳内酸素飽和度の変動を同じ手法で調べた結果3群間に有意な差は認めなかった.以上より糖尿病を合併した脳梗塞患者においては血行動態を崩さないような十分な管理が必要に思われた.
  • 向笠 京子, 橋本 佐由理, 中島 茂, 金城 瑞樹, 宗像 恒次
    2010 年 53 巻 10 号 p. 772-777
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル フリー
    行動科学の観点から,ストレス耐性などに関与する個人の心理特性に焦点をあて,食事・運動療法中の2型糖尿病患者における心理特性とHbA1c値との関連について明らかにすることを目的とした.外来通院中の患者を対象に,自記式質問紙調査を行った(有効回収率70.8%).食事・運動療法群を抽出し,検討した結果,初診時と比較し,調査時点でHbA1c値が悪化した群は,改善した群に比べ,自己憐憫度(自分を憐れみ逃避行動で対処する特性)が有意に高かった.次に,両群の中で血糖コントロールの悪い症例を抽出し,各心理特性とHbA1c値について,相関分析を行った結果,HbA1c値と感情認知困難度(自分の感情を抑える特性)との間に,有意な正の相関が認められた.自己憐憫度や感情認知困難度の高いストレスを溜めやすい特性が,HbA1c値に関与していると推測され,ストレス耐性を強化する行動変容支援が,HbA1c値の改善につながる可能性が示唆された.
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