糖尿病
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53 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 鴫原 奈弓, 田蒔 基行, 後藤 広昌, 河井 順子, 藤谷 与士夫, 綿田 裕孝, 河盛 隆造, 弘世 貴久
    2010 年 53 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    混合型インスリン製剤1日2回注射法は本邦において最も頻用されている治療法であるが,目標血糖コントロールが得られない場合の次なる治療手段に関する検討は少ない.近年,インスリン導入法として使用中の経口血糖降下薬に基礎インスリンを上乗せするBOT(Basal supported Oral Therapy)が注目されており,また効果不十分な症例には超速効型インスリンを段階的に追加する方法が提唱されている.そこで,混合型製剤2回注射をBOTに安全に切り替えることができれば,その後は超速効型インスリンを段階的に追加するStep upが可能であるため,その切り替え効果と安全性を検討した.24週間後HbA1C値は8.26±1.14%から7.70±0.78%まで改善(p<0.05)した.観察期間中,重症低血糖は認めず,低血糖頻度が増加した5症例においても併用のSU薬減量により消失した.本研究は非対照の観察研究かつ症例数も限られたPilot Studyであり,今後長期並びに対照と比較した解析を行う必要があるが,混合型製剤2回法からグラルギンとグリメピリドを用いたBOTへの切り替えは大きな血糖コントロールの悪化をきたさず安全に行えることが観察された.
  • 岩瀬 正典, 杉谷 篤, 北田 秀久, 田中 雅夫, 飯田 三雄
    2010 年 53 巻 3 号 p. 162-168
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    海外では膵腎同時移植は腎不全を合併した1型糖尿病患者の根治療法として確立し,合併症や生活の質(QOL)を改善することが報告されている.しかし,移植事情の異なる我が国において膵腎同時移植が同等な治療効果を持つか明らかではない.我々は当院で施行した膵腎同時移植のうち1年以上経過観察した13例(平均年齢40歳,糖尿病罹病期間23年,透析期間6年,移植後2.6年)の糖尿病神経障害,大血管障害,QOLの変化を検討した.運動神経伝導速度,心拍変動,胃排出時間は移植後有意に改善し,移植待機患者よりも良好であった.左室肥大や大動脈脈波速度も移植後改善を示した.Short Form-36で評価したQOLは移植患者で待機患者より良好であり,経時的に改善した.一方,待機患者では著明に低下したままであった.我が国の末期腎不全を合併した1型糖尿病患者において膵腎同時移植が神経障害や大血管障害を改善し,QOLを経時的に改善することが示された.
症例報告
  • 熊田 瑛子, 柴田 敏朗, 橋本 健一, 坂野 敦子, 川嶋 修司, 棚橋 忍
    2010 年 53 巻 3 号 p. 169-173
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    症例は19歳女性.8歳で1型糖尿病を発症,小学生の頃から過食,自己誘発性嘔吐,インスリンの自己調節を行い,低血糖発作を繰り返していた.2007年9月11日13時に健在を確認された後,19時に昏睡状態で発見された.血糖値33 mg/dlでグルカゴン注射により血糖は上昇したが意識が改善せず入院となった.入院後も低血糖が遷延し,第2病日の頭部MRI拡散強調画像及びT2強調画像で両側尾状核頭,被殻,淡蒼球に高信号域を認め,低血糖脳症と診断した.意識改善したのち第22病日の検査においても高信号域は残存していた.低血糖脳症のMRI所見には色々な報告があり,一定していない.本例においては,意識障害は改善したが後遺症として著しい過食と暴言,暴力などの問題行動が自制困難となった.
  • 浅野 美智子, 利根 淳仁, 片山 晶博, 古城 真秀子, 樋口 千草, 塚本 啓子, 伊勢田 泉, 肥田 和之, 上江洲 篤郎, 四方 賢 ...
    2010 年 53 巻 3 号 p. 174-179
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.2人姉妹の次女(14歳)が1型糖尿病にてインスリン治療中.2008年4月の検診でHbA1C 6.2%を指摘され,同年7月頃より多尿,体重減少が出現し,近医を受診した際,HbA1C 10.3%,随時血糖値463 mg/dlと高値を認めたため紹介入院.尿中CPR 21.9 μg/日,グルカゴン負荷試験でCPR(前値)0.2-(6分値)0.4 ng/mlと内因性インスリン分泌の低下を認め,強化インスリン療法を導入した.GAD抗体は陰性であったがIA-2抗体は9.1 U/mlと高値であり,1型糖尿病と診断した.HLAタイピングはDRB1*010101および090102を有し,次女のHLAハプロタイプと一致した.成人発症のGAD抗体陰性かつIA-2抗体陽性の1型糖尿病で,かつ1型糖尿病の家族歴を有する興味深い症例を経験したので報告する.
  • 山田 努, 加藤 泰久, 山家 由子, 横田 文子, 村越 梓美, 鵜飼 ゆうひ, 萩本 繁
    2010 年 53 巻 3 号 p. 180-186
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    症例は61歳・男性.2008年9月19日から結膜炎症状,全身倦怠感を自覚し症状徐々に悪化,9月22日意識レベル低下をきたし当院に救急搬送された.搬送時意識レベルJCS II-20~III-100,血糖1,860 mg/dl,pH 6.952,総ケトン体16,200 μmol/lと高血糖昏睡・糖尿病ケトアシドーシスの状態であったが,HbA1cは6.4%と軽度上昇のみで劇症1型糖尿病と診断した.治療中第2病日心電図II,III,aVF誘導でST上昇を認めたが,心エコー所見や,その後の経過から心膜炎・心筋炎の合併が疑われた.劇症1型糖尿病の一因としてウイルス感染が疑われているが,過去に結膜炎を初発症状とした報告はなく,心膜・心筋炎を含めた一連の病態が,劇症1型糖尿病のウイルス感染病因説を支持する興味深い症例であると考え,過去の心筋炎合併症例報告との比較検討を中心とした考察を交えて報告する.
  • 丹羽 啓之, 奥村 昇司
    2010 年 53 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.61歳時に糖尿病と診断され食事療法と経口血糖降下薬によってHbA1C 6%台の血糖管理状態にあった.2007年7月30日頃から腰部痛・発熱が出現,当院を受診し,腸腰筋膿瘍と診断し抗菌療法とドレナージ・洗浄を行った.血液・膿部培養からメチシリン耐性ブドウ球菌(以下MRSA)が検出された.バンコマイシン(以下VCM),テイコプラニン(以下TEIC)を投与し解熱傾向を認めたが,途中で腎障害が出現し,リネゾリド(以下LZD)に変更,計4週間でLZDの投与を終了した.投与中止後,再び発熱・腰部痛が出現し,腸腰筋膿瘍の再燃,椎体炎併発と診断.LZDにリファンピシンとST合剤を併用し6週間投与の末,治癒に至った.糖尿病に合併したMRSA腸腰筋膿瘍に対してLZDにて治療を行ったという報告は稀少であるため文献的考察を加えて報告する.
  • 太田 敬之, 巽 邦浩, 中谷 宗幹, 高木 伴幸, 松野 正平, 川嶋 弘道, 中川 貴之, 下村 裕子, 中野 好夫, 若崎 久生, 古 ...
    2010 年 53 巻 3 号 p. 192-197
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル フリー
    症例1は41歳,男性.22歳時に1型糖尿病と診断された.症例2は71歳,女性.49歳時に1型糖尿病と診断された.2症例とも全身倦怠感を主訴に当院を救急受診し,来院時にケトアシドーシスを認めた.経過中に吐血を認め,原因精査目的に上部消化管内視鏡を施行したところ,頚部食道~食道胃接合部まで全周性に粘膜の黒変を認め,急性壊死性食道炎(通称黒色食道)と診断した.黒色食道は食道粘膜が全周性に壊死して生じる非常に稀な食道出血性疾患で,発症原因は未だ明らかになっていない.報告例の過半数に糖尿病の合併を認め,両者の間に強い関連性が示唆される.致死的な経過をたどるケースもあり,厳重なフォローを要する.
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