動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは糖尿病を含む高リスクの脂質異常症患者に対するイコサペント酸(EPA)の投与は妥当とされており,血中のEPA/アラキドン酸(AA)比が高い群で冠動脈イベントの発生率が低いと報告されている.一方血中のマロンジアルデヒド修飾低比重リポ蛋白(MDA-LDL)は酸化LDLの一種で,糖尿病患者の冠動脈イベントを予測する有用なマーカーとされている.今回2型糖尿病患者60例を対象に血中のEPA/AA比とMDA-LDL値の関連について検討した.その結果,EPA/AA比が0.5未満のA群(30例)で0.5以上のB群(30例)に比べて血清MDA-LDL値は有意に高かった(86±22 U/
l vs 73±20 U/
l).またA群の12例に高純度EPA製剤1,800mg/日を3カ月間投与した結果,EPA/AA比は0.35±0.08から1.20±0.53に上昇し,血清MDA-LDL値は92±27 U/
lから70±23 U/
lに有意に低下した.以上の結果から,EPA/AA比が低い糖尿病患者では酸化ストレスが亢進した状態にあり,EPAの投与によりその状態が軽減される可能性が示唆された.
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