糖尿病
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55 巻, 12 号
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受賞講演
原著
診断・治療(食事・運動・薬物治療)
  • 山口 美輪, 黒田 暁生, 小谷 裕美子, 松村 晃子, 勝浦 桜子, 上村 浩一, 横田 一郎, 香美 祥二, 有澤 孝吉, 松久 宗英
    2012 年 55 巻 12 号 p. 952-956
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    「食品交換表に基づく新たなカーボカウント法」(黒田ら,糖尿病2010)に基づいて糖尿病食1食に含まれる糖質量を算出する場合,1食を主食と副食にわけ,副食は一律20 gと概算する.しかし,小児期は必要エネルギー量や栄養素バランスが食品交換表とは異なる.よって本研究では,小児期の副食糖質量を検討することを目的とした.学校給食摂取基準に基づく学校給食42食分を小学校の学年別に検討した.その結果,1食のエネルギーは670±44~752±50(平均値±標準偏差)kcalと学年が上がるに従い増加したが,副食糖質量は29.7±7.5~31.2±8.1 gであり,エネルギー量にかかわらず副食糖質量を約30 gに概算できた.学校給食では糖質約10 gの牛乳が毎食提供されるため糖尿病食や病院普通食に比較して副食糖質量が10 g増加すると考えられた.以上より,小学校給食では副食糖質量を30 gとしてカーボカウントを指導できることが明らかとなった.
  • 楠 宜樹, 勝野 朋幸, 明神 真希子, 宮越 香名, 井川 貴資, 越智 史浩, 徳田 八大, 村井 一樹, 浜口 朋也, 宮川 潤一郎, ...
    2012 年 55 巻 12 号 p. 957-965
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    1型糖尿病患者で持続皮下インスリン注入(CSII)の確立時に持続血糖モニター(CGM)と絶食試験を応用する有用性を検討[対象]1型糖尿病18例[方法]CSII変更時にCGM装着下で絶食試験を行い注入レートを決定,以降6か月経過をみた.[結果]総インスリン注入量は44.9±14.3 U/日から変更・調節直後33.9±8.4 U/日と有意に減少(p=0.0002).基礎インスリン注入量は18.4±7.4 U/日から変更・調節直後12.2±4.5 U/日と有意に減少(p=0.0002)し6か月後12.6±4.8 U/日まで変化なし.HbA1cは8.4±1.0 %から調節後6か月7.7±1.0 %と有意に改善(p=0.0095).[結論]CGMを用い血糖変動を把握しながら絶食試験を併用しCSIIへ変更することで,総インスリン量,基礎インスリンの減量が可能となり6か月後まで継続的に増量せずHbA1cも有意に改善した.
症例報告
  • 福島 徹, 原田 範雄, 佐々木 真弓, 田中 大祐, 濱崎 暁洋, 長嶋 一昭, 八幡 三喜男, 稲垣 暢也
    2012 年 55 巻 12 号 p. 966-972
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    59歳男性.54歳時に糖尿病と診断され,56歳時にボグリボースおよびナテグリニドによる肝機能障害出現を契機にインスリン導入となった.58歳時に早朝の低血糖および日中の高血糖を繰り返すため当院入院・精査により,血糖値不安定の原因として低親和性高結合容量インスリン自己抗体の関与が示唆された.インスリンリスプロ朝昼食前2回注射と就寝前の補食により血糖値改善を認めたが,2010年3月(59歳)頃から再び日中に高血糖を認め再入院となった.初回入院時に比べインスリン抗体価とインスリン分泌能の低下を認めた.持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:CGM)の結果から,各食前インスリンリスプロの3回注射と就寝前の中間型インスリン注射の追加を行い,再び血糖値改善を認めた.インスリン抗体陽性糖尿病の治療観察中に生じた血糖不安定性の把握にCGMが有用であった症例を経験したので報告する.
  • 山口 普史, 美馬 正人, 白神 敦久, 関本 悦子, 柴田 泰伸, 尾崎 修治, 重清 俊雄, 佐藤 泰仁
    2012 年 55 巻 12 号 p. 973-981
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.2型糖尿病で,経口糖尿病薬とインスリン グラルギン4単位/日を投与され,HbA1c 6.4 %(NGSP値)とコントロールは良好であった.入院1週間前より食欲不振,行動異常が出現し,誤ってインスリン グラルギン260単位の過量注射を行い,昏睡状態で搬送された.来院時検査で低血糖(PG:15 mg/dl)と低浸透圧血症(241 mOsm/kgH2O)を伴う低ナトリウム血症(Na:118.7 mEq/l)を認めた.血中インスリン濃度は,経時的に測定し,搬入32時間後にピーク(167 μU/ml)を認め,低血糖は約42時間遷延した.総ブドウ糖投与量は1,695 gであった.低血糖および低Na血症補正後,嚥下障害,構音障害,左下肢の軽度不全麻痺が出現した.責任病変は脳幹が疑われたが,頭部MRAで右中大脳動脈狭窄があるもののDWIでは異常を認めなかった.当院入院中に症状は徐々に改善し,近医退院時には後遺症は認めなかった.インスリン グラルギンの過量投与による重篤な遷延性低血糖に,一過性の浸透圧性脱随症候群様症状を合併した症例を経験したので文献的考察も含めて報告する.
  • 北村 哲宏, 大月 道夫, 久保 典代, 倉敷 有紀子, 玉田 大介, 田淵 優希子, 小澤 純二, 安田 哲行, 沖田 考平, 今川 彰久 ...
    2012 年 55 巻 12 号 p. 982-986
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    Glucagon-like peptide-1(GLP-1)受容体作動薬であるリラグルチドの副作用として食欲不振,嘔気が報告されている.今回我々は,リラグルチドが関与した麻痺性イレウスの症例を2例経験した.ともに腹部手術歴はなく,リラグルチド導入時に前兆なく嘔吐にて突然発症した.症例2はインフルエンザを併発していた.2例ともにリラグルチド中止にてイレウスの改善を認めた.背景として,便秘の既往,15年以上の罹病期間,糖尿病末梢神経障害および自律神経障害を有している点が共通していた.これまでリラグルチドによるイレウスの報告はなく,今後GLP-1受容体作動薬を使用する際には副作用としてイレウスを念頭に置く必要があり報告する.
  • 中島 進介, 高橋 哲也, 田中 裕子, 西本 祐希, 中東 由佳, 大野 恭太, 喜多 哲也, 田守 義和
    2012 年 55 巻 12 号 p. 987-992
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性.2011年7月15日から上腹部痛が出現したため7月20日に前院を受診し急性膵炎の診断で入院となった.この時,血糖値は92 mg/dlであった.急性膵炎は速やかに改善した.7月26日から嘔気,全身倦怠感が出現し,妊娠5週と診断されるも翌日に流産となった.嘔気,全身倦怠感は持続していたが,膵炎が軽快したため7月29日に前院を退院となる.翌日から頻回の嘔吐が出現し,7月31日に当院に救急搬送され,血糖498 mg/dl,アシドーシス,尿ケトン強陽性を認め糖尿病性ケトアシドーシスで入院となった.入院時HbA1cは6.0 %(NGSP値)で,尿中および血清CPRが低値であったことから劇症1型糖尿病と診断した.劇症1型糖尿病の発症には急性膵炎や妊娠との関連が報告されているが,本例は妊娠第5週に,急性膵炎の症状が高血糖の出現より10日以上先行して発症した興味深い劇症1型糖尿病の症例である.
  • 阿部 眞理子, 伊藤 裕之, 西野 智哉, 押切 甲子郎, 安徳 進一, 竹内 雄一郎, 三船 瑞夫, 当金 美智子, 山下 達也
    2012 年 55 巻 12 号 p. 993-997
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性.20歳で1型糖尿病と診断され,強化インスリン療法中であった.2011年8月31日意識障害を主訴に当院へ救急搬送された.血糖値は671 mg/dl,尿ケトン2+,代謝性アシドーシスを認め,糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と診断,生理食塩水の補液と速効型インスリンの経静脈投与を行った.高血糖は順調に改善し,インスリンを皮下注射へ切り替えるとともに離床を開始した.第3病日に突然の呼吸困難をきたし,胸部CTにて両側肺動脈に造影欠損を認め,肺血栓塞栓症を併発したと判断した.ただちに抗凝固療法を行い,軽快退院した.DKAに肺血栓塞栓症を合併した論文報告は極めて少なく,いずれも肥満の2型糖尿病である.本症例は非肥満の1型糖尿病であり,DKAによる血液凝固能の亢進や血液粘稠度の増大,糖尿病長期罹病に伴う血管内皮障害が,肺血栓塞栓症の発症に関与した可能性が考えられた.
地方会記録
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