糖尿病
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55 巻, 2 号
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原著
疫学
  • 上江洌 良尚, 田仲 秀明, 与儀 洋之, 山里 將浩, 島袋 毅, 新川 勉, 比嘉 盛丈, 當眞 武, 高良 正樹, 吉 晋一郎, 吉原 ...
    2012 年 55 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    沖縄県南部地域で通院中の2型糖尿病患者における糖尿病性腎症の頻度と治療目標の達成度について検討した.2008年6月の1ヶ月間に沖縄県南部地区の9つの医療施設を受診した2型糖尿病患者1,279例を対象とした.年齢61.9(SD,11.8)歳,収縮期血圧131.2(14.7)mmHg,拡張期血圧74.1(10.0)mmHg,HbA1c(JDS値)7.1(1.5)%,総コレステロール(以下TC)195.6(33.7)mg/dl,LDL-コレステロール(以下LDL-C)112.4(29.6)mg/dl,血清Cr 0.95(0.68)mg/dlであった.糖尿病のコントロール目標を,HbA1c 6.5 %未満,収縮期血圧130 mmHg,拡張期血圧80 mmHg未満,LDL-C 100 mg/dl未満とするとコントロール目標達成者はHbA1c(40.3 %),血圧(37.9 %),脂質(32.1 %)の順であった.腎症は1期55.4 %,2期25.3 %,3期16.6 %,4期2.7 %であった.沖縄県においては2期以上の糖尿病性腎症は高頻度に認められ,早期の診断と多因子に対する積極的な介入が重要と考えられた.
病態・代謝異常・合併症
  • 中島 佑佳子, 高橋 健二, 鈴木 貴博, 吉田 淳, 安田 麻衣子, 志伊 真和, 藤原 大介, 武川 郷, 松岡 孝
    2012 年 55 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    目的:2型糖尿病の経過中に新規発症する自己免疫性1型糖尿病の臨床的特徴を自験例より明らかにした.対象と方法:過去10年間に当科で経験したこのタイプの糖尿病5例を対象にその臨床的特徴,すなわち糖尿病診断年齢・家族歴・肥満歴・膵島自己抗体・C-peptide・HLA型を検討した.結果:男女比2/3,糖尿病診断年齢54±16歳,糖尿病家族歴4例,肥満歴4例,抗体陽転例数(のべ)GAD抗体4例,ICA 2例,IA-2抗体1例,抗体陽転年齢68±15歳,抗体陽転までの糖尿病罹病期間14±6年であった(mean±SD).負荷試験による血中C-peptide上昇値(ΔCPR)は,抗体陽転前1.85±0.89 ng/ml,陽転後0.38±0.46 ng/ml(mean±SD)へ低下した(p<0.01).HLA DR/DQ genotypeはいずれも日本人1型糖尿病への疾患感受性を示した.結語:糖尿病家族歴・肥満歴と1型糖尿病疾患感受性をもつ2型糖尿病の長い経過中,高齢に至り自己免疫性1型糖尿病が発症することがある.
  • 下田 将司, 吉岡 啓, 俵本 和仁, 阿武 孝敏, 菅田 有紀子, 柚木 靖弘, 田淵 篤, 川崎 史子, 柱本 満, 正木 久男, 種本 ...
    2012 年 55 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    末梢動脈疾患(PAD)の診断に足関節上腕収縮期血圧比(ABI)が繁用されているが,糖尿病(DM)患者では動脈中膜石灰化によりABIが異常高値,偽正常化を示す場合が少なくない.DM患者のPAD診断における足趾上腕収縮期血圧比(TBI)の有用性をABIと比較検討した.50歳以上の2型DM患者74例を対象に,ABI,TBI,上肢―下肢脈波伝播速度(baPWV)を測定し,ABIおよびTBIと各臨床パラメーターとの関係を検討した.ABI0.9-1.29,TBI≥0.6群40例(54.1 %),ABI0.9-1.29,TBI<0.6群28例(37.8 %),ABI≥1.3,TBI≥0.6群3例(4.1 %),ABI<0.9,TBI<0.6群は3例(4.1 %)であった.ABIとTBIは正相関(r=0.477,p<0.0001)を示した.TBIは年齢(r=-0.43,p=0.0001),DM罹病期間(r=-0.403,p=0.0004),HbA1c(JDS値)(r=-0.28,p=0.0168),収縮期血圧(r=-0.292,p=0.0112),AEI(r=-0.336,p=0.0055),高感度CRP(hs-CRP)(r=-0.246,p=0.0479),baPWV(r=-0.214,p=0.049),最大頚動脈内膜中膜肥厚度(cIMT)(r=-0.231,p=0.0481),平均cIMT(r=-0.228,p=0.0487)と負の相関を示した.ABIは年齢(r=-0.275,p=0.0176)とのみ相関した.細小血管障害の進展,動脈硬化危険因子数(RF)の増加に伴いTBIのみ低下した.ABI0.9-1.29,TBI<0.6群において,より高齢で,DM罹病期間が長く,HbA1c(JDS値),hs-CRP,AEI,baPWVは高値であり,平均IMTは増加傾向を示した.2型糖尿病患者のPADスクリーニングとしてTBIはABIに比し有用と思われた.
症例報告
  • 楢林 ゆり子, 石川 真由美, 坂本 健太郎, 森瀬 敦之, 廣井 直樹, 久保木 幸司, 芳野 原, 柴 輝男
    2012 年 55 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は28歳女性.10歳時に頭蓋咽頭腫摘出術後に汎下垂体機能低下症となり,13歳まで成長ホルモン(以下GHと略す)の補充療法を,また現在まで継続して副腎皮質,甲状腺,抗利尿ホルモンの補充療法を受けている.手術後より体重が増加し,13歳時BMI 26.5から16歳時にBMI 29.6と肥満が増悪し,糖尿病と診断されインスリン治療が開始された.今回は28歳時に下痢発症後四肢脱力を呈し救急搬送され,高ナトリウム血症および低カリウム血症が認められた.下痢とデスモプレシンの点鼻失念による脱水と電解質異常を来した病態と診断された.脱力に関してはヒドロコルチゾンの内服失念による副腎不全と低カリウム血症の関与が疑われ,緊急入院となった.補液とデスモプレシン点鼻により高ナトリウム血症は改善し,副腎不全に対しては最終的にヒドロコルチゾン内服25 mg/日で退院となった.一方,糖尿病は食事療法の遵守により血糖コントロールが改善し,第17病日でインスリンは中止となったが,早朝空腹時の低血糖を来すようになった.アルギニン負荷試験でGH分泌が低反応であり,成人成長ホルモン分泌不全(以下AGHDと略す)と診断した.低血糖の原因として,夜間のGH分泌不全による肝臓の糖新生の低下が考えられた.インスリノーマや副腎ホルモンの補充不足は否定的であった.低血糖の程度は軽く,眠前に80 Kcalの補食摂取により空腹時血糖60 mg/dl前後を維持することができ,GHの補充療法は行わず退院とした.糖尿病を併発したAGHDの患者で,早朝低血糖を頻発し空腹時血糖の決定因子としてGHの重要性を示唆する症例を経験したので報告する.
  • 竹島 健, 村上 典彦, 浜松 圭太, 野津 雅和, 村部 浩之, 横田 敏彦, 高橋 健二
    2012 年 55 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.2002年より糖尿病治療を開始し,血糖コントロール目的で2005年に入院.既往に高血圧症,家族歴は母に糖尿病がある.体重84.3 kg, BMI 36.9と肥満を認め,FPG 127 mg/dl, HbA1c 6.8 %(以下JDS値),血中CPRは朝食前2.43 ng/mlで朝食後2時間CPR 6.06 ng/ml, HOMA-R 4.39とインスリン分泌能は保たれ,インスリン抵抗性を示した.一方,膵島関連抗体はGAD抗体627.2 U/ml, ICA 1:10, IA-2抗体8.0 U/mlといずれも陽性であった.糖尿病の治療は,食事療法とアカルボース300 mg内服を継続した.以後5年間経過を観察したが,HbA1c 6.5~7.5 %,随時血中CPR 3.13~6.59 ng/mlで推移し,インスリン非依存状態が持続している.経過中には脳梗塞,不安定狭心症を発症した.インスリン抵抗性,BMI高値,大血管障害,糖尿病家族歴など2型糖尿病の臨床像を示した一方,GAD抗体,ICAおよびIA-2抗体がいずれも陽性,HLA class II遺伝子型は日本人1型糖尿病に対する感受性を示していることより,糖尿病の成因と病態を考える上で示唆に富む貴重な症例と考えられた.
  • 山本 淳平, 金子 慶三, 高橋 圭, 佐竹 千尋, 角田 宇衣子, 河野 ひろ子, 澤田 正二郎, 長谷川 豊, 宇野 健司, 今井 淳太 ...
    2012 年 55 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性.3年前より健診で耐糖能異常を指摘されていた.2010年2月,口渇・多飲のため近医を受診しHbA1c 11 %(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病 53:450-467, 2010))でSU剤とα-GIを開始された.2ヶ月後HbA1cは6.6 %と改善を認めたが抗GAD抗体陽性が判明したため,自己免疫性1型糖尿病の診断のもと,外来で強化インスリン療法を導入され入院予定となった.その後約40日間,10単位/日のインスリンで食前血糖値100 mg/dl前後と良好に経過したが,特に誘因なく口渇・多尿と腹部膨満感を自覚し,その日を境に300 mg/dlを超える食前血糖値の急上昇を認めた.その10日後の入院時,ケトーシス,随時血糖値379 mg/dl, HbA1c 7.9 %,尿中Cペプチド2.7 μg/日を認め,既にインスリン加療中であったが劇症1型糖尿病診断基準を満たした.血糖コントロールには36単位/日のインスリンを要した.自己免疫性1型糖尿病の良好な経過中,劇症1型糖尿病類似の急激な糖尿病増悪を呈し,SMBGでその血糖変動を詳細に捉え得た1例を報告する.
  • 川口 真弓, 緒方 浩美, 岩崎 桂子, 井上 朱実
    2012 年 55 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性.58歳発症の1型糖尿病として,インスリン強化療法を施行されていた.意識障害にて救急搬送.救急外来での診察時には,中心部しか見えないという訴えあり,右側同名性半盲を認めた.頭部MRIで両側後頭葉,小脳半球にFLAIR像で高信号,拡散強調画像でもやや高信号の病変を認めた.脳梗塞も疑われたが,血糖改善とともに意識,視野の速やかな改善を認めた.第11病日の頭部MRIでも著明な改善を認め,PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)と考えた.急性期のMRI撮影が可能となり,PRESという疾患概念が広がるにつれ,糖尿病患者における,PRESの報告も増えてきている.多くは血圧等,他の要因も重なっており,高血糖のみでPRESが発症しうるのかは,まだ不明である.いくつかの報告から,その考察もおこなった.治療,予後とも脳梗塞やてんかんとは異なるところがあり,疾患の認識が必要である.
地方会記録
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