日本人2型糖尿病患者を対象に膵
β細胞機能の12ヶ月間の変化と影響因子を検討した.著しい高血糖からの離脱例,高度肥満例,進行した肝障害,腎障害,インクレチン使用例,インスリンと経口血糖降下薬併用例を除外し,血糖コントロールが3ヶ月以上良好で安定している症例205名を対象とした.膵
β細胞機能はグルカゴン負荷試験のCペプチドの6分間の反応量(
ΔCPR)で評価した.検討する臨床指標は,年齢,性別,糖尿病罹病期間,糖尿病網膜症,高血圧,尿アルブミン,HbA1c,血清脂質を用いた.観察開始時(ベースライン)での横断的検討では,糖尿病罹病期間は
ΔCPRと有意(r=0.357, p<0.001)な負の相関を示した.ステップワイズ法による重回帰分析の結果,臨床指標の中で糖尿病罹病期間は
ΔCPRを予測する主な独立変数(F=16.951)であった.全対象例の12ヶ月間の縦断的検討で,
ΔCPRは有意(p<0.001)に低下した.これらを治療法別に検討すると,非薬物療法群(39名)と経口血糖降下薬群(134名)の
ΔCPRはそれぞれ有意(p<0.05, p<0.001)に低下したが,インスリン治療群(32名)の
ΔCPRは有意な変化は認めなかった.経口血糖降下薬群での投薬内容に関するサブ解析で,
ΔCPRの低下にインスリン分泌促進系経口血糖降下薬,特にスルホニル尿素薬の関与が強く示唆された.日本人2型糖尿病における膵
β細胞のインスリン分泌能の経年変化には,高血糖曝露による自然史的影響ばかりでなく,種々の治療方法の影響が関与していることが示唆された.
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