糖尿病
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55 巻, 5 号
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特集
エネルギー消費と代謝障害
原著
疫学
  • 工藤 貴徳, 森山 貴子, 柿崎 善史, 葛西 伸彦
    2012 年 55 巻 5 号 p. 316-321
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における薬物療法の導入は,時として重症低血糖を引き起こす.今回,特に医療機関における処置を必要とした低血糖発症の原因を明らかにするために,2009年10月から2010年9月の1年間に当院救急外来に低血糖で搬送された51例(複数回搬送された患者を含む),うち2型糖尿病患者33名の臨床的背景について検討した.HbA1c(以下,HbA1cはJDS値で表記)<6.5 %群は≥6.5 %群に比べて,平均年齢が有意に高値(78.8±3.9 vs 70.3±11.2歳),スルホニル尿素(SU)薬の使用が有意に高率だった(47.1 vs 13.3 %).搬送後,入院となった患者は帰宅できた患者に比べて平均年齢が77.5±8.5歳と有意に高値(p<0.05)であった.治療内容については,入院患者は帰宅患者に比べて,SU薬の使用が52.6 %と有意に高率(p<0.01)であった.
    SU薬は臨床で広く処方されているが,高齢者ではSU薬による厳格な血糖管理が低血糖を引き起こす可能性を高める.そのため,臨床の場では薬物療法,とくにSU薬による低血糖の危険性に留意して,常にその危険性と対処法を患者に指導する姿勢が重要と考えられた.
社会医学・医療経済学
  • 元尾 佳正, 高木 勇次, 福田 俊一, 蒲生 早苗, 古山 順子, 山田 珠央, 手納 信一
    2012 年 55 巻 5 号 p. 322-327
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者は増加しており療養指導へのコメディカルの更なる参画が望まれている.調剤薬局において,アンケート形式の独自の資料を用いて療養指導を行い,その回答による自己評価点数と満足度の変化をみることで指導の効果を評価した.対象は平成18年12月から平成21年1月までに調剤薬局を訪れた糖尿病患者32名であり,フットケア,網膜症,腎症,食事療法,シックデイ,運動療法について指導した.一連の療養指導によりフットケアの自己評価点数は知識・実践ともに有意に改善し,網膜症,腎症,シックデイでは改善傾向が認められた.教育入院未経験者の自己評価は経験者より総じて低かったが,指導後は経験者の指導前と同等まで改善した.満足度は指導後に有意に上昇した.調剤薬局は様々な病医院に通う患者と接するため,地域の調剤薬局をネットワーク化させて活用することで圏域としての糖尿病医療レベルの向上に寄与でき得ると考えられた.
症例報告
  • 坂本 正子, 上村 明, 安間 太郎, 佐々木 良磨, 大西 悠紀, 鈴木 俊成, 松本 和隆, 林 豊美, 古田 範子, 赤塚 元, 矢野 ...
    2012 年 55 巻 5 号 p. 328-334
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性.36歳より糖尿病を指摘されインスリンを使用していた.50歳より拡張型心筋症にて加療されていたが,52歳時に特異的顔貌,GH,IGF-I高値,下垂体腫瘍を認め,先端巨大症と診断された.手術療法を希望されず,酢酸オクトレオチドによる治療を開始した.GH,IGF-Iは治療開始直後より低下し,また下垂体の腫瘍も縮小を認めた.しかし血糖については退院後摂取カロリーの増加,尿中CPRの低下を認め,インスリン量を増量したがHbA1cの上昇を認めた.心エコーでは,収縮能及び左室拡張の改善,僧帽弁逆流量の低下を認め,BNPも低下し自覚症状も改善した.拡張型心筋症を伴う先端巨大症合併糖尿病の報告例は少なく,稀な疾患と考えられる.その病態にGH,IGF-Iの影響と,糖尿病に伴う代謝性の要因とは別の機序が関与している可能性が推測された.
  • 福岡 勇樹, 成田 琢磨, 小川 正樹, 佐藤 朗, 寺田 幸弘, 松田 亜希奈, 保泉 学, 梅津 香織, 佐藤 雄大, 石川 素子, 細 ...
    2012 年 55 巻 5 号 p. 335-339
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    35歳,女性.多嚢胞性卵巣症候群,糖尿病あり.インスリン治療にてHbA1c(JDS)5 %台で経過.妊娠34週より口渇,多飲,約8 l/日の多尿が出現.午前中のみの飲水制限で,血清Na 138 mEq/lから144 mEq/lへと上昇,水制限後も血漿浸透圧293 mOsm/kg>尿浸透圧213 mOsm/kg,血漿アルギニン・バゾプレシン(AVP)0.9 pg/mlと上昇なく,中枢性尿崩症が疑われ入院,デスモプレシンの試験的点鼻投与にて尿量は約2 l/日に減少した.出産後はデスモプレシンを中止しても妊娠前の尿量に戻ったが,頭部MRIで下垂体後葉の高信号の低下を認め,高張食塩水負荷試験でAVP上昇が不十分であったことから,妊娠による胎盤バゾプレシナーゼ活性亢進によるAVP需要の増大を代償しきれず,部分型尿崩症が妊娠後期に顕在化した病態と考えられた.妊娠に尿崩症が合併する頻度は4~30万妊娠例に1例と稀な症例であり報告する.
  • 添田 幸恵, 田中 久美子, 税所 芳史, 目黒 周, 島田 朗, 河合 俊英, 伊藤 裕
    2012 年 55 巻 5 号 p. 340-344
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.1991年に橋本病と診断.2003年4月より体重増加に対し減量指導を開始,耐糖能異常も疑われ定期的に血糖値,血中CPR,HbA1cの測定を行っていた.2005年10月に糖尿病ケトアシドーシスを発症しインスリン療法を導入した.その際GAD抗体,IA-2抗体は陰性であったが,2007年11月にGAD抗体,IA-2抗体の陽転化を認め,1型糖尿病と診断した.本邦では全世界的にみると1型糖尿病患者の発症率が比較的低く,本症例のような成人発症1型糖尿病についてはその自然歴に不明の点も多い.本症例は糖尿病発症後にGAD抗体,IA-2抗体の陽転化を確認し,発症前より血糖値,インスリン分泌能の変遷を観察し得た多腺性自己免疫症候群3型であり,疾患概念を考える上で貴重な症例と考え報告する.
  • 今枝 憲郎, 加藤 岳史, 一柳 亞季, 北田 はるか, 岩瀬 宗司, 大口 英臣, 谷田 諭史, 岡山 直司, 城 卓志
    2012 年 55 巻 5 号 p. 345-351
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.主訴は意識障害.これまでに糖尿病は指摘されたことはない.全身倦怠感,口渇,嘔吐が7日間続いた後,清涼飲料水の多飲を契機に意識障害となり当院に救急搬送された.来院時の血液検査で血糖値1425 mg/dl,pH 7.092,HbA1c 10.4 %(JDS値),尿中ケトン体2+で糖尿病ケトアシドーシスと診断された.血中CPR 0.08 ng/mlと低下しており,抗GAD抗体陰性,s-Amy 387 U/lと上昇しており劇症1型糖尿病が強く疑われた.しかし,HbA1cが高値という点で合致せず清涼飲料水多飲を契機に発症したケトアシドーシスと診断された.第2病日の腹部CTによる腸管壁肥厚から大腸内視鏡が施行され全大腸に散在する多発性輪状潰瘍が認められた.感染性腸炎が否定され保存的治療で軽快したことから高血糖による脱水が契機の虚血性腸炎と考えられた.清涼飲料水多飲を契機に発症したケトアシドーシスに大腸輪状潰瘍が合併するという稀な症例を経験したので報告する.
地方会記録
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