症例は62才の女性.19年前より慢性糸球体腎炎にて維持透析中で,今まで糖尿病の指摘はない.2009年12月に左肘部管症候群の術前採血で随時血糖500 mg/d
l以上の高血糖を初めて指摘され,精査・血糖コントロール目的にて入院となった.入院時口渇など高血糖の症状の自覚はなかったが,HbA1c 14.4 %(以下HbA1cはJDS値で表記
1)),グリコアルブミン82.7 %,随時血糖382 mg/d
lを認め,GAD抗体が5190 U/m
lと著明に高値であり1型糖尿病の新規発症が考えられた.また,甲状腺自己抗体が陽性で,自己免疫性甲状腺疾患を併発した.本例は維持透析中であったため著明なアシドーシスや脱水を認めなかった.インスリン治療にて退院時には,グリコアルブミン35.1 %まで改善した.急性の高血糖を呈する透析患者には,悪性疾患の除外とともにGAD抗体の測定が重要であると考えられた.
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