糖尿病
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55 巻, 6 号
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物治療)
  • 木村 友彦, 菅田 有紀子, 阿武 孝敏, 川崎 史子, 柱本 満, 松木 道裕, 宗 友厚, 加来 浩平
    2012 年 55 巻 6 号 p. 375-379
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    当科外来にて強化インスリン療法施行中2型糖尿病患者で,基礎補充をNPHからインスリンデテミル(以下デテミル)に切り替え,6ヶ月以上経過を追えた63例を対象にデテミルの有用性を検討した.デテミル用量は切り替え時7.9±3.6単位(0.13±0.06単位/kg),3ヶ月後8.1±3.7単位(0.13±0.06単位/kg),6ヶ月後8.5±4.1単位(0.14±0.07単位/kg)(p=0.036)と有意に増加したが,追加補充インスリン量は18.4±5.7単位(0.30±0.09単位/kg)から3ヶ月後18.2±5.2単位(0.29±0.09単位/kg),6ヶ月後17.8±5.5単位(0.30±0.09単位/kg)と減少傾向をみた.HbA1cは切り替え時8.01±1.36 %,3ヶ月後7.81±1.39 %(p=0.02),6ヶ月後7.78±1.41 %(p=0.08)と改善した.BMIは24.1±3.5 kg/m2から6ヶ月後には23.6±3.3 kg/m2(p=0.034)と有意に低下した.低血糖の頻度は,NPH使用時1.04±1.28回/月からデテミル変更後0.61±1.03回/月に有意に減少した(p=0.031).2型糖尿病患者の強化インスリン療法における基礎補充インスリンとしてのデテミルの有用性が強く示唆された.
  • 泉 妃咲, 冨永 晴郎, 中島 チ鹿子, 内田 淳一, 渡辺 雄一, 塚本 洋子, 井上 岳, 山田 洋子, 山田 善史, 山田 悟
    2012 年 55 巻 6 号 p. 380-385
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病治療の根幹である食事療法は,一般的にカロリー制限で指導されることが多いが,患者にはストレスが強く,そのコンプライアンスが問題となる.そこで,血糖値の上昇を最小限に抑えながら食事のQOLを向上させるための甘味品として,低糖質ケーキに着目した.今回は糖尿病患者で検討する前段階として,健常者を対象として低糖質ケーキが糖脂質指標に与える影響を同等カロリーの通常ケーキと比較した.低糖質ケーキでは通常ケーキと比較して食後の血糖値上昇が抑制され,インスリンの分泌刺激は弱かった.また,低糖質ケーキは中性脂肪や遊離脂肪酸に悪影響を与えず,一方で食後の満足度は通常ケーキと同等であった.今後糖尿病患者を対象にした検討においても低糖質ケーキの有望な結果が期待される.
  • 小口 修司, 中川 央充, 石橋 みどり, 村田 満
    2012 年 55 巻 6 号 p. 386-391
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    DCA2000/バンテージ(DCA)のHbA1c測定値と国内日常法との乖離要因をJSCC/JDS基準測定操作法であるKO500法を基準として検討した.IFCC検量物質設定値,DCA社内校正物質の設定値はDCA測定値とほぼ近似したが,KO500法では設定値よりも相対%で7~10 %低値に測定された.また,KO500のクロマトグラムでIFCC検量物質やDCA社内校正物質にJDS Lot4では認められない夾雑物のピークを認めた.DCAと国内日常法の乖離要因は国際標準化法の標準物質と国内標準物質における夾雑物の規定の違いや基準測定操作法の分離能の違いなどに起因していると考えられた.DCAは日本糖尿病学会(JDS)の糖尿病関連検査の標準化に関する委員会が決定した値付けによる検量を採用することで妥当な結果が得られ,2010年7月よりJDS Lot4に基づいた製品を導入した.
患者心理・行動科学
  • 山田 ルミ, 稲垣 美智子, 北出 優華子, 古屋 圭介, 津田 真一, 伊藤 弘樹, 西澤 誠, 中川 淳, 中野 茂, 古家 大祐
    2012 年 55 巻 6 号 p. 392-397
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    【目的】糖尿病足壊疽などの重症足病変を予防するためには,壊疽の前駆所見のひとつである皮膚病変(乾燥や亀裂などの軽微な異常)への対策が重要である.そこで,保湿剤を自己塗布させる手法を用いたフットケア教育が患者の足に対する認識(意欲・関心)と行動を改善させることができるかどうかを検証することを目的とした. 【方法】糖尿病神経障害を有する糖尿病患者を対象に清潔ケアに加え保湿剤を自己塗布する実験群と清潔ケアのみを指導する対照群に群分けした.認識と行動は,質問紙による面接を行ない,介入前と比較し3か月後に改善がみられた患者を「向上」と判定し両群を比較した. 【結果】両群の性別,年齢,糖尿病罹病期間に有意差はなかった.行動は実験群で有意に改善し(p<0.01),意欲は向上傾向を示した.しかし,関心には有意差はなかった. 【考察】本研究において,保湿剤を用いた教育は糖尿病患者のフットケア行動を向上させたことが示された.この結果は,保湿教育が軽微な皮膚病変を有する時期における糖尿病患者のフットケアに役立つことを示唆している.
症例報告
  • 佐藤 愛, 大濵 俊彦, 田中 聡, 石塚 恒夫, 勝盛 弘三
    2012 年 55 巻 6 号 p. 398-403
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性.51歳時に糖尿病と診断され,経口血糖降下薬を開始.71歳時にHbA1c(JDS値)8.3 %と増悪した為,インスリン療法(ヒューマログミックス50®)を開始し,HbA1c 6 %台まで改善した.しかし,1年後より血糖値が不安定となり朝方の低血糖,日中の高血糖を認めた.血中IRI 2430 μU/ml,インスリン抗体結合率78.4 %と高値であった.またScatchard解析では,この抗体は低親和性,高結合能であった.インスリンの種類を変更したが,血糖値は不安定なままであり,経過中に脳梗塞を発症した.インスリン抗体による低血糖を防止するために,インスリンを中止しGLP-1受容体作動薬に変更したところ,血糖コントロールが改善し,持続血糖モニターによって日内変動を視覚的・数量的に評価する事が出来た.
  • 藤田 征弘, 石関 哉生, 平山 智也, 石田 真理, 石田 裕則, 本庄 潤, 安孫子 亜津子, 羽田 勝計
    2012 年 55 巻 6 号 p. 404-409
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は62才の女性.19年前より慢性糸球体腎炎にて維持透析中で,今まで糖尿病の指摘はない.2009年12月に左肘部管症候群の術前採血で随時血糖500 mg/dl以上の高血糖を初めて指摘され,精査・血糖コントロール目的にて入院となった.入院時口渇など高血糖の症状の自覚はなかったが,HbA1c 14.4 %(以下HbA1cはJDS値で表記1)),グリコアルブミン82.7 %,随時血糖382 mg/dlを認め,GAD抗体が5190 U/mlと著明に高値であり1型糖尿病の新規発症が考えられた.また,甲状腺自己抗体が陽性で,自己免疫性甲状腺疾患を併発した.本例は維持透析中であったため著明なアシドーシスや脱水を認めなかった.インスリン治療にて退院時には,グリコアルブミン35.1 %まで改善した.急性の高血糖を呈する透析患者には,悪性疾患の除外とともにGAD抗体の測定が重要であると考えられた.
  • 福田 有希子, 大西 正芳, 最上 伸一, 杉田 倫也, 尾林 博, 福井 道明, 長谷川 剛二, 北川 良裕, 中村 直登
    2012 年 55 巻 6 号 p. 410-414
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性.ソフトドリンク摂取習慣を有していたが,2010年健診時まで耐糖能異常なく,翌年1月に近医で初めて軽度耐糖能異常を指摘されたが無症状のため無治療で経過していた.5月下旬頃より8 kgの体重減少を指摘され,著明な口渇,全身倦怠感が出現し当院救急受診.糖尿病性ケトーシスを伴う著明な高血糖のため入院となった.入院時,意識障害やアシドーシスは認めなかった.各種検査より自己免疫性1型糖尿病と診断したが,比較的インスリン分泌能が保たれていたことから,1型糖尿病の慢性的な病態の進行に加え,ソフトドリンクの過剰摂取により急激な糖代謝異常を呈したと考えられた.本例は,LADA(Latent Autoimmune Diabetes in Adults)またはSPIDDM(slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus)と考えられたが,本例のように生活習慣により,急性自己免疫性1型糖尿病に類似した発症様式を呈する場合がある.軽度耐糖能異常者の中に存在する1型糖尿病患者が重篤な糖代謝異常に至ることを予防するためにも,軽度耐糖能異常者に対する成因精査や糖尿病教育を含めた初期診療,細やかな経過観察が重要であると考えられた.
報告
  • 武藤 達也, 中野 玲子, 虎石 顕一, 朝倉 俊成
    2012 年 55 巻 6 号 p. 415-419
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    血糖測定器の採血手技指導方法の実態を把握するために日本糖尿病学会専門医が所属する20床以上の施設にアンケートを送付し1,190名の医療者から得られた回答を解析した.指導時に用いる資料,採血前の血液を出しやすくする前処置,採血を指示する部位,血液が出にくい場合の対応などの項目をアンケート調査にて比較検討した.指導時には,資料として簡易説明書が多く用いられていた.採血前の前処置は,30 %の医療従事者が特に何の指導もしていなかったが,指導した群の60 %は採血部位近くのマッサージを推奨していた.採血部位は,指先または手のひら部位が多く指示されていた.血液が出にくい場合は,指の下部(近位部)から採血部位(遠位部)付近へ絞り出すように圧迫するなどの指導がなされていた.しかし,それら指導内容に関する統一性や根拠となるエビデンスは存在せず,今後エビデンスを構築し採血手技指導指針を検討していく必要がある.
地方会記録
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