糖尿病
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55 巻, 9 号
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原著
疫学
  • 金塚 東, 三村 正裕, 篠宮 正樹, 橋本 尚武, 栗林 伸一, 櫻井 健一, 鈴木 弘祐
    2012 年 55 巻 9 号 p. 671-680
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    千葉県における日本糖尿病学会会員と専門医,日本糖尿病協会登録医および一般医による診療の実態を調査した.17病院と67診療所における専門医25名,学会員と登録医計15名,一般医50名が参加した.総症例数は3930症例,専門医はより若年,一般医はより高齢の世代を診療した(p<0.001).専門医は32 %,一般医は10 %の症例をインスリンで治療した(p<0.001).HbA1c(JDS値)6.5 %未満は,専門医で32 %,一般医で50 %である一方,8 %以上は各23 %, 11 %であった(p<0.001).2357症例(60 %)に降圧薬が処方され,専門医は39 %にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),34 %にカルシウム(Ca)拮抗薬,一般医は各34 %, 38 %に処方した(p<0.001).アルブミン尿が未測定であった1266症例中,専門医で162症例,一般医で597症例が早期腎症診断のためアルブミン尿測定の対象となる尿蛋白-,±あるいは+であった(p<0.001).インスリン療法で専門医の役割は大きいが,多くの症例で血糖コントロールは不良であった.専門医はARB,一般医はCa拮抗薬をより多く処方した.専門医は診療している10 %,一般医は37 %の症例で早期腎症を診断するためにアルブミン尿の測定が適用と思われた.
病態・代謝異常・合併症
  • 林 哲範, 守屋 達美, 小川 顕史, 吉野 苑美, 岸原 絵梨子, 小川 惇郎, 山岸 貴洋, 七里 眞義
    2012 年 55 巻 9 号 p. 681-687
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:糖尿病透析患者の血糖プロファイルは不明な点が多く,最適な血糖マーカーも明確になっていない.今回持続血糖測定(CGM)を用いて日本人糖尿病透析患者の詳細な血糖プロファイルを把握し,その特徴を検討した.方法:糖尿病透析患者28例に入院中にCGMを用い,透析日・非透析日の血糖プロファイルの差異,HbA1c・グリコアルブミン(GA)との関係を検討した.結果:平均血糖値(AG)は透析日24時間で150.0±36.0 mg/dl,非透析日24時間で169.1±49.4 mg/dlと非透析日で有意に高く(P=0.0346),血糖変動を示すSDは49.1±19.9 mg/dl, 39.1±13.2 mg/dlと透析日で有意に大きかった(P=0.0014).48時間AGはHbA1c(R=0.64, P=0.0003),GA(R=0.54, P=0.0031)と有意な相関を認め,48時間SDもHbA1c(R=0.46, P=0.0129),GA(R=0.64, P=0.0002)と有意な相関を認めた.また,透析開始後24時間以内に8例(28.6 %)で低血糖を認め,6例(21.4 %)では透析終了後の早期低血糖を認めた.考察:CGMを用いることで糖尿病透析患者の詳細な血糖プロファイルを把握することが可能であり,より厳格な血糖管理が可能になると考えられる.
症例報告
  • 寺島 康博, 大西 みずき
    2012 年 55 巻 9 号 p. 688-692
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は49才男性.2010年6月の健診では空腹時血糖は正常.2011年2月末より口渇を自覚し11 kg体重が減少し3月末に受診.随時血糖482 mg/ml, HbA1c 9.0 %(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53:450-467, 2010)),ケトーシスを伴い入院.抗GAD抗体は陰性,抗IA-2抗体は3.7 U/mlであり,1型糖尿病と診断.尿中CPRは4.0 μg/日.グルカゴン負荷試験で著しいインスリン分泌低下を認め強化インスリン療法を導入.TSH 10.46 μIU/ml, FT3 2.57 pg/ml, FT4 0.80 ng/dl,抗サイログロブリン抗体4000 IU/mlであり慢性甲状腺炎の併発を認め,4週後に甲状腺機能低下が進むためホルモン補充療法を開始.抗GAD抗体陰性かつ抗IA-2抗体陽性の1型糖尿病で発症時に進行性の自己免疫性甲状腺疾患を合併した興味深い症例を経験したので報告する.
  • 酒井 聡至, 谷本 啓爾, 大西 峰樹, 上田 一仁, 上田 博文, 佐野 寛行, 平岩 哲也, 寺前 純吾, 花房 俊昭
    2012 年 55 巻 9 号 p. 693-697
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.67歳時に緩徐進行1型糖尿病と診断され,インスリン療法が開始された.インスリンは徐々に増量され,98単位/日投与にてもHbA1c(JDS)8.7 %と不良である一方,食後に低血糖を来たすため入院となった.体重の減量に伴いインスリン投与量も減少したが,空腹時高血糖が持続し,食後の低血糖が生じた.基礎インスリンを順次,デテミル34単位/日,中間型リスプロ30単位/日,および持続皮下インスリン注入(CSII)(リスプロ)16.8単位/日に変更した.デテミルに比べ,CSIIにより血糖値は良好に低下した.そこで,CSIIによるリスプロ投与と,中間型リスプロ皮下1回投与を比較した.CSIIによるリスプロ投与では,中間型リスプロに比べ,より少量で血中リスプロインスリン濃度が上昇し,血糖値も改善した.同じインスリンでも皮下における滞留時間が長い製剤ほど血中への移行が阻害されており,インスリンが皮下組織で吸収が障害されている可能性が示唆された.
  • 西尾 勇一郎, 恒川 卓, 篠原 由里, 佐藤 郁子, 吉岡 修子
    2012 年 55 巻 9 号 p. 698-704
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    γグロブリン製剤を使用して一時的に抗GAD抗体陽性を示した症例を3例経験した.症例1は53歳男性,ギラン・バレー症候群に対し使用,投与30日後に2.4 U/mlを示した.症例2は67歳女性,低γグロブリン血症と細菌感染症からの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の合併に対し使用,投与22日後に2.9 U/mlを示した.症例3は73歳男性,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対し使用,投与12日後に2.1 U/mlを示した.いずれも投与前は陰性,上記測定日以降も陰性.投与したロットの抗GAD抗体価は2.1~4.9 U/mlと弱陽性を示した.一方,症例4は79歳女性,ITPに対して使用したが抗GAD抗体価は変化しなかった.症例4に使用したロットの抗GAD抗体価は1.6 U/mlと低かった.γグロブリン製剤投与により一時的に抗GAD抗体が陽性を示す可能性が示唆され,γグロブリン製剤投与直後は抗GAD抗体の測定にて膵β細胞傷害の有無を評価するのは注意が必要と考えられた.
  • 山本 直, 岡田 洋右, 西田 啓子, 松下 幸司, 新生 忠司, 田中 良哉
    2012 年 55 巻 9 号 p. 705-709
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性.若年時より大酒家で食事も1日1-2食であった.1990年より関節リウマチに対しプレドニゾロンを内服していた.2007年8月,過剰な飲酒後に就寝し,翌朝昏睡状態で発見され当院へ救急搬送された.血糖値8 mg/dlと著明な低血糖を認め(IRI 0.6 μU/ml),グルコース静注により意識は回復し,低血糖昏睡と診断した.以後,断酒と規則正しい食事のみで低血糖発作は認めなかった.絶食試験およびインスリン負荷試験では無自覚性低血糖を認め,迅速ACTH負荷試験ではコルチゾールの分泌は不良であった.以上より,本例は慢性的なアルコール摂取による低栄養とステロイド長期投与による潜在的な下垂体・副腎皮質機能抑制状況下に,無自覚性低血糖を繰り返しており,過剰な飲酒による糖新生抑制を契機として重篤な低血糖をきたしたものと考えられた.
  • 橋本 善隆, 桑形 尚吾, 加藤 紀子, 新美 美貴子, 中澤 純, 高谷 季穂, 石井 通予, 神内 謙至, 磯野 元秀
    2012 年 55 巻 9 号 p. 710-716
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.約20年前に糖尿病を指摘され,インスリンにて加療されていた.血清Cr値および尿蛋白の増悪を認めたため紹介され入院となった.身体所見で両側耳下腺の腫張,胸部X線およびCTで間質性肺炎,および胸腔・腹腔内リンパ節の腫張を認めた.また,免疫グロブリンの増加,低補体価血症,尿中β2-MGおよびNAGの増加から,糖尿病性腎症以外の腎疾患の合併を疑い腎生検を施行した.腎生検では糖尿病性腎症の変化に加え間質性腎炎の所見を,免疫染色で,IgG4陽性形質細胞の間質への浸潤を認め,IgG4関連腎臓病と診断した.ステロイド治療で血清Cr値および尿蛋白は改善した.また,血糖コントロールに必要なインスリンは,26単位/日から最大92単位/日まで増加した.これまで,糖尿病性腎症にIgG4関連腎臓病を合併した報告はなく,本症例は腎生検による早期診断とステロイド治療により透析療法を回避できた貴重な症例と考えられた.
  • 田口 雅史, 木原 康之, 南 創太, 柴田 道彦, 山本 光勝, 原田 大
    2012 年 55 巻 9 号 p. 717-721
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    61歳男性.2007年切除不能膵癌と同時に糖尿病を指摘された.膵癌には集学的治療が奏功していた.2008年より二相性インスリンリスプロ(ヒューマログミックス50®)が開始されたが,2010年より早朝の低血糖を認め入院となった.空腹時血中免疫反応性インスリン(IRI)は2150 μU/ml,抗インスリン抗体も83.8 %と上昇していた.持続血糖測定(CGM)では,早朝の低血糖及び日中の高血糖を認め,日中の血糖変動が激しかった.インスリンアスパルト(ノボラピッド®)に変更後,日中の血糖変動から改善した.本例は膵癌による膵性糖尿病に対してインスリン投与中の血糖悪化について,インスリン変更による改善過程をCGMにて詳細に観察できた貴重な症例と考えられため報告する.
  • 長尾 博文, 岡田 拓也, 鈴木 綾乃, 寺川 浩世, 藤田 真吾, 津川 真美子
    2012 年 55 巻 9 号 p. 722-726
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/08
    ジャーナル フリー
    劇症1型糖尿病の急性期に高頻度で肝機能障害を合併するとされているが,その病態については不明な点が多い.症例は40歳女性.2011年4月20日から嘔吐や口渇が出現し,4月22日開眼しているものの会話はかみ合わない状態となり救急搬送された.血液検査にて血糖1063 mg/dl, HbA1c 5.6 %(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53:450-467, 2010),尿ケトン陽性,動脈血pH 7.19であり,糖尿病性ケトアシドーシスとの診断にて入院となり,インスリン治療を開始した.入院後の精査にて劇症1型糖尿病と診断した.第7病日より一過性にAST, ALTの上昇を認め,第15病日に最大となり,第32病日に正常化した.入院時の腹部CT,第4病日の腹部MRIにて脂肪肝と膵腫大を認めた.1ヶ月後の腹部MRIにて脂肪肝と膵腫大は改善していた.また第4病日の腹部MRI拡散強調画像にて膵の高信号を認めたが,1か月後には改善していた.一過性の膵腫大と高度脂肪肝を合併し,その経過をMRIにて観察しえた劇症1型糖尿病の1症例を経験したので報告する.
地方会記録
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