症例は37歳,女性.体重165 kg, BMI 62.1 kg/m
2. 2型糖尿病,脂質異常症,高血圧を有し,糖尿病細小血管障害の進行,肥満随伴疾患の増悪を認め,2008年10月,腹腔鏡下スリーブバイパス術を施行された.術後より頻回の嘔吐を認め,術後1年目より食後の嘔吐と低血糖症状を訴えた.2011年2月に施行した75 g経口ブドウ糖負荷試験では,負荷後180分の血糖値は77 mg/d
lまで低下したが血糖値は正常型を示し低血糖症状は認めなかった.インスリン値は30分後に61.9
μU/m
lまで上昇を認め,活性型GLP-1濃度は79.2 pmol/
lと著明な上昇を認めた.食後の低血糖症状の原因としては,後期ダンピング症候群や活性型GLP-1濃度の上昇による消化管運動抑制,相対的なインスリン分泌の過剰とグルカゴン分泌の低下が疑われた.内科治療抵抗性の高度肥満2型糖尿病において外科治療の減量効果は良好と報告されているが,長期的効果や安全性には不明な点も多く,術後の経過観察は慎重に行う必要があると考え,今回報告する.
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