症例は89歳女性.2007年3月8日,意識障害のため当院脳神経外科を受診した.神経学的所見や頭部MRIで異常は認めなかったが,血糖値が37 mg/d
lでありブドウ糖の点滴を施行し,血糖値,症状ともに改善したために帰宅した.翌日早朝,再び意識障害を認め,当院外来を受診した.低血糖を認め,低血糖の精査,加療目的で入院となった.低血糖時の高インスリン血症(30151
μU/m
l),インスリン抗体62.5 %,インスリン使用歴もなく,インスリン自己免疫症候群(IAS)に高率に認められるHLA
DRB1*04:06を有しており,本邦最高齢で発症したIASと診断した.1994~2010年までに報告された120例を集計した結果,従来発症率に男女差は認めなかったが,最近では女性のIAS発症率が増加していること,女性の発症率の増加の原因として
αリポ酸による薬剤性IASの関与が示唆された.後期高齢者の発症は17例であり,チアマゾールや
αリポ酸などの典型的な薬剤によるIAS症例は認められず,薬剤性IAS発症頻度が若年層と比較して少ないという特徴が認められた.文献的考察を交えて報告する.
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