糖尿病
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56 巻, 8 号
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特集
糖尿病における性差医療
原著
疫学
  • 岸本 一郎, 芦田 康宏, 大森 洋子, 西 洋壽, 萩原 泰子, 藤本 年朗, 槇野 久士, 大畑 洋子, 岩根 光子, 飯沼 恵子, 前 ...
    2013 年 56 巻 8 号 p. 543-550
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    大阪府豊能圏域において保険薬局に院外処方箋を持参した糖尿病患者を対象に糖尿病診療実態を調査した.アンケートを回収できた1,026名の,平均年齢は66.9歳,男女比は女性が36.6 %,平均通院期間は約10年,平均HbA1c値は7.2 %であった.血糖コントロール優または良の範囲にある患者は31 %であり,不可の割合は12.8 %であった.また,9.8 %がHbA1c値を把握していなかった.さらに,32.1 %が眼科を受診しておらず,糖尿病連携手帳所持率は15.6 %にとどまっていた.多変量解析の結果,HbA1c値(高値)と相関する項目は,年齢(若年),性別(女性)および通院期間(長期)であり,眼科定期受診と相関する項目は,年齢(高齢),性別(女性),通院期間(長期),糖尿病入院歴および連携手帳所持であった.連携手帳所持者では,そのほとんどが,HbA1c値を把握し,また眼科を定期受診しており,望ましい療養行動につながっていた.今後,糖尿病連携手帳のさらなる普及とともに,地域での多診療科・多職種の密接な連携をさらに推進することが必要であると考えられる.
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 中島 弘二, 田邉 昭仁, 岡内 省三, 早川 尚雅, 久野 裕輝, 高田 景子, 元佐 慶子, 小西 由記, 羽井 佐裕子, 桶口 三香子 ...
    2013 年 56 巻 8 号 p. 551-559
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    HbA1c(NGSP)8.4 %以上の174名の2型糖尿病患者に9日間の短期強化インスリン療法(Short-Term Intensive Insulin Therapy以下STIIT)を行い糖毒性解除の解析をした.STIIT後ボグリボース・メトホルミンを基本薬とする未治療群74名・既治療群64名(以下未群・既群)の2年間の効果を比較した.STIITは血糖値,高感度CRP, HOMA-IR, HOMA-βを有意に改善した.STIIT前(以下前)HbA1cが前_血糖値に正相関し,前_HOMA-βおよび糖尿病罹病期間(以下罹病期間)に逆相関した.STIIT施行3ヶ月後のHbA1cは罹病期間に正相関し,患者本来の糖尿病状態を反映した.未群のほうがHbA1cは高いが6ヶ月後のHbA1c 6.9 %未満達成率は有意に高かった(未群66 %,既群30 %).多重ロジスティック回帰分析で未群・既群と罹病期間は独立してHbA1cの目標達成に貢献した.既群でコントロール不良な患者のなかにもβ細胞機能が温存された例もあった.コントロール不良患者では早期に糖毒性を解除しβ細胞に負担をかけない治療で糖毒性を再発させないことが大切である.
患者心理・行動科学
  • 瀧井 正人, 内潟 安子, 岸本 淳司, 岡田 朗, 松本 雅裕, 森田 千尋, 波夛 伴和, 野崎 剛弘, 河合 啓介, 須藤 信行
    2013 年 56 巻 8 号 p. 560-569
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    糖尿病に関する否定的認知(以下,DNCと略す)に注目した研究はこれまでなく,測定する心理テストもまだない.今回,DNCを評価するための心理テストを作成し,信頼性,妥当性の検討を行なった.DNCを表すと思われる111項目を収集し,1型糖尿病患者200名,2型糖尿病患者310名に実施した.また,同時に他の心理テストを施行し,人口統計学的・医学的因子を調査した.変数のクラスター分析により,「生きがいのなさ」,「糖尿病の重荷」,「医療不信」,「周囲の監視・干渉」,「疎外感」,「薬・インスリンへの抵抗」,「自己管理の圧力」の7クラスターが抽出され,計26項目の心理テストが作成された.糖尿病治療者の実感として妥当な因子構造が得られ,血糖コントロール不良群ほどDNCの得点が高かったことなどより,本心理テストの妥当性が示された.また,内的整合性の検討,再検査法により,良好な信頼性が確かめられた.
症例報告
  • 岡田 裕子, 小林 寛和, 白木 里織, 西澤 昭彦, 高田 政文, 鎮西 忠信, 石川 雄一, 永田 正男
    2013 年 56 巻 8 号 p. 570-577
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性.40歳時に2型糖尿病と診断され内服加療開始,2007年(64歳)より2相性アスパルト注射が開始されたが,2009年より夜間,早朝の低血糖と日中の高血糖が出現し2010年6月に当科入院した.インスリン抗体価,抗体結合率が高値であり,スキャッチャード解析ではhigh affinity siteの低親和性と高結合能を認めた.インスリン製剤の変更を行ったが改善せず,インスリン中止のうえ分割食とミグリトール内服を開始したが,早朝の低血糖は遷延し日中の高血糖は悪化した.このためリラグルチドを開始したところ速やかに早朝低血糖は消失した.開始4ヶ月後に血糖の上昇を認めたため,リラグルチドとインスリンの併用療法を開始すると,早朝低血糖の再発なく血糖の改善を認めた.外来性インスリンに対して産生されたインスリン抗体による低血糖症に対し,リラグルチドの投与が低血糖の改善に有効であった症例を経験した.
  • 田口 雅史, 山本 光勝, 南 創太, 柴田 道彦, 木原 康之, 原田 大
    2013 年 56 巻 8 号 p. 578-583
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    45歳男性.39歳時に糖尿病と診断され,2010年6月からグリメピリドと二相性インスリンリスプロ(ヒューマログミックス25®)が開始され,同年7月からC型慢性肝炎に対してPEG-IFNα-2b(PEG-Interferonα-2b)+リバビリン併用療法が開始された.11月頃よりインスリン注射部位に一致して発赤,掻痒感を認めたため,グリメピリド投与を継続し,インスリンの種類を変更したが症状改善せず,HbA1c(以下NGSP値)10.0 %,空腹時血糖264 mg/dl,と血糖コントロールも不良であり,2011年3月入院となった.ヒトインスリン特異的IgE陽性,各種インスリンに対するプリックテストにて陽性を認め,インスリン即時型アレルギーと診断した.また,インスリン抗体も83.7 %陽性であった.インスリンアナログ製剤を中止し,投与していたグリメピリドにリラグルチドを追加したところ注射部位の発赤,掻痒感も改善,次第に血糖コントロールも改善し,インスリン抗体も低下した.インターフェロンは1型糖尿病などの様々な自己免疫性疾患を誘発することは知られているが,インスリン即時型アレルギーの報告は少なく,貴重な症例と考えられたため報告する.
委員会報告
  • 川崎 英二, 丸山 太郎, 今川 彰久, 粟田 卓也, 池上 博司, 内潟 安子, 大澤 春彦, 川畑 由美子, 小林 哲郎, 島田 朗, ...
    2013 年 56 巻 8 号 p. 584-589
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    1型糖尿病は膵β細胞の破壊性病変によりインスリンの欠乏が生じて発症する糖尿病であり,発症・進行の様式によって,劇症,急性,緩徐進行性に分類される.今回,本委員会において急性発症1型糖尿病の診断基準を策定した.劇症1型糖尿病の診断基準を満たさず,口渇,多飲,多尿,体重減少などの糖尿病(高血糖)症状の出現後,おおむね3か月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥り,糖尿病の診断早期より継続してインスリン治療を必要とする患者のうち,経過中に膵島関連自己抗体の陽性が確認されたものを「急性発症1型糖尿病(自己免疫性)」と診断し,同患者のうち膵島関連自己抗体が証明できないが内因性インスリン分泌が欠乏(空腹時CPR<0.6 ng/ml)しているものを単に「急性発症1型糖尿病」とする.しかし,内因性インスリン分泌欠乏が証明されない場合,あるいは膵島関連自己抗体が不明の場合には診断保留として期間をおいて再評価することが重要である.
  • 田中 昌一郎, 大森 正幸, 粟田 卓也, 島田 朗, 村尾 敏, 丸山 太郎, 鴨井 久司, 川崎 英二, 中西 幸二, 永田 正男, 藤 ...
    2013 年 56 巻 8 号 p. 590-597
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル フリー
    1型糖尿病調査研究委員会の緩徐進行1型糖尿病分科会において緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準を策定した.必須項目は,1)経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性であり,2)糖尿病の発症(もしくは診断)時,ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく,ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならない症例,とした.Insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体,インスリン自己抗体(IAA),もしくは亜鉛輸送担体8(ZnT8)抗体の陽性所見はSPIDDMの診断根拠としての知見が不十分であり現段階では診断基準に含まれない,また本症にソフトドリンクケトーシスが合併する場合はケトーシス,ケトアシドーシスをひきおこすことが報告されている.SPIDDMは糖尿病の発症(もしくは診断)後3ヶ月を過ぎてからインスリン療法が必要となり,高頻度にインスリン依存状態となること,GAD抗体やICAは多くの例で経過とともに陰性化すること,またGAD抗体やICAの抗体価にかかわらずインスリン分泌能の低下が進行せず,10年以上たってもインスリン依存状態とならない例があること,さらに小児科領域と内科領域のいずれでも早期インスリン療法が行われることを参考項目に加えた.
地方会記録
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