糖尿病
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57 巻, 1 号
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
患者心理・行動科学
  • 小泉 順二, 多崎 恵子, 相川 泉, 稲垣 美智子
    2014 年 57 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2014/01/30
    公開日: 2014/02/14
    ジャーナル フリー
    日本糖尿病療養指導士(CDEJ:Certified Diabetes Educator of Japan)は,糖尿病治療において患者の療養を指導する医療スタッフと定義され,我が国では,2001年から認定が開始されている.セルフエフィカシー(自己効力感)は,人間の行動を決定する主要な要素と考えられており,指導する医療者側のセルフエフィカシーは療養指導に影響し,如いては患者アウトカムに影響すると考えられる.今回,CDEJの資格がGSESに影響しているかどうかを,我が国の看護師1,096名の横断調査のデータを使用して解析した.CDEJを保有している看護師(7.80±0.26)では非保有者(7.02±0.15)よりGSESは有意に高く(p=0.014),下位尺度である「行動の積極性」「能力の社会的位置づけ」において有意であった(p=0.013, p=0.000).GSESに及ぼす因子を重回帰分析(ステップワイズ法)で検討した結果,GSESは看護師としての臨床経験年数と,CDEJ保有が有意な因子として抽出された.以上の結果より,CDEJ資格取得はセルフエフィカシーに影響していることが示唆された.
社会医学・医療経済学
  • 上村 美季, 箱田 明子, 菅野 潤子, 西井 亜紀, 五十嵐 裕, 藤原 幾磨
    2014 年 57 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2014/01/30
    公開日: 2014/02/14
    ジャーナル フリー
    東日本大震災により被災した宮城県内の1型糖尿病患者79名のHbA1cの変化,及びHbA1cに影響を与えた因子を検討した.対象患者のHbA1cは,震災前の7.81±1.34 %から,震災1-2ヶ月後に8.07±1.39 %と有意に悪化し(p<0.01),3-4ヶ月後から半年後にかけて有意に改善し,震災前の水準に戻っていた.年齢,性別,居住地,震災前のHbA1c,震災後のインスリン・食糧・運動不足の有無,避難所生活の有無と,震災前から震災1-2ヶ月後のHbA1cの変化量(以下ΔHbA1c)との関係を重回帰分析で検討した結果,避難所生活のみがΔHbA1cに関与していた.避難所生活は,環境の変化が大きく,血糖コントロールがより難しかったと思われる.一方,避難所生活を送っていない患者も有意にHbA1cが悪化しており,避難所生活以外にも精神的ストレス等血糖コントロールに影響を与えた因子があると推測された.
症例報告
  • 和泉 賢一, 塩谷 聡子, 井上 佳奈子, 森 仁恵, 山崎 孝太, 本郷 優衣, 髙木 聡子, 山内 寛子, 河田 望美, 山口 美幸, ...
    2014 年 57 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2014/01/30
    公開日: 2014/02/14
    ジャーナル フリー
    症例は63才女性.主訴は右乳房違和感.家族歴,生活歴,既往歴ともに特記事項なし.2005年健診で糖尿病を指摘されるも放置.2007年より治療開始,血糖コントロール不良のため,2009年よりインスリン治療を開始している.他に明らかな合併症は認めていない.2011年右乳房に2 cm大のしこりを認め,乳腺外科受診.針生検での組織診断は良性腫瘍であったが,その後,腫瘤の増大傾向を認めたため,乳癌との鑑別困難で,手術となった.組織はびまん性に膠原線維が認められ,導管周囲にリンパ球浸潤を認めており,糖尿病性乳腺症の診断であった.本症例は,閉経後の症例であり,比較的短期間のインスリン治療歴であるため,海外の報告とは特徴の異なる糖尿病性乳腺症の症例と考えられた.最近,本邦で以前考えられていた特徴とは異なる糖尿病性乳腺症の報告が増えており,その文献的考察を加え,本症例を報告する.
  • 柳 一徳, 鈴木 國弘, 加瀬 正人, 清水 昌紀, 田中 精一, 青木 千枝, 吉田 敦, 麻生 好正, 笠井 貴久男
    2014 年 57 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2014/01/30
    公開日: 2014/02/14
    ジャーナル フリー
    52歳男性.38歳頃より糖尿病を指摘され治療開始,48歳時にインスリン導入となったが,2010年6月から通院を自己中断していた.2012年6月13日救急搬送.血糖566 mg/dl,HbA1c 14.4 %で肺膿瘍・肝膿瘍・眼内炎を認め,全身に播種した多発感染症と診断した.培養検査から,Hypermucoviscosity phenotypeのKlebsiella pneumoniaeが検出された.呼吸・循環管理や大量補液とインスリン持続投与を行い,感染症に対して,抗菌薬の投与やドレナージを施行し,全身状態の改善を得た.Genotypeを検索したところ,rmpA陽性が確認された.Hypermucoviscosity phenotypeのKlebsiella pneumoniaeによる重症多発感染症の報告はまだ少なく,日常の糖尿病診療に注意喚起を促す事ができる貴重な症例と考え報告する.
  • 井端 剛, 津川 有理, 西谷 重紀, 西井 稚尋, 小室 竜太郎, 飯田 さよみ
    2014 年 57 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2014/01/30
    公開日: 2014/02/14
    ジャーナル フリー
    症例は21歳女性.平成23年11月2日朝に心窩部痛,頻回の嘔吐,著明な口渇出現.翌日症状が改善しないため当院救急外来受診後入院.意識傾眠.検査では血糖1075 mg/dl,血清Cペプチド(CPR)0.13 ng/ml, HbA1c(NGSP)6.7 %,代謝性ケトアシドーシスを認めた.膵酵素高値,肝酵素正常.グルカゴン負荷6分後Δ血清CPR 0.08 ng/ml.尿CPR 3.7 μg/日でありインスリン分泌能枯渇を認め劇症1型糖尿病と診断した.来院時の腹部CTおよび翌日のMRIにて高度脂肪肝を認めMRI拡散強調画像では膵臓に高信号を認めた.インスリン療法にて血糖管理は改善した.高度脂肪肝は入院5日目の腹部CTにて軽減,入院9日目のMRI画像にて改善および拡散強調画像で膵炎症所見の消失を観察した.肝酵素上昇を伴わない高度脂肪肝および膵炎症所見の画像変化を経時的観察した1例である.
  • 檀浦 裕, 和田 典男, 小原 慎司, 柳澤 克之, 後藤 公美子, 羽田 健一, 晴山 仁志, 宮崎 知保子
    2014 年 57 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2014/01/30
    公開日: 2014/02/14
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性,妊娠32週に頭痛,嘔気,嘔吐が出現し,翌日近医産科クリニックに入院し,胎児心拍が徐脈化したためその翌日当院産科に搬送された.入院時高血糖,代謝性アシドーシスを認め,糖尿病性ケトアシドーシスとしてインスリン投与を開始した.胎児は死亡し2日後に娩出された.入院時のHbA1c(NGSP)6.7 %,血中Cペプチド低値,抗GAD抗体陰性より劇症1型糖尿病と診断した.インスリン治療開始後も低Na血症が遷延したため下垂体前葉機能を精査したところ,ACTH, GH, LH, FSHの分泌低下を認めた.発症から約2週後に施行されたMRI検査では,下垂体は周産期としては通常より小さく,T1強調像で脳実質とiso-intensity, T2強調像ではやや不均一なiso-high intensityを示し,Gd-DTPA投与後では下垂体柄と辺縁部のみ造影された.発症約6週後には,下垂体は萎縮していた.妊娠中に発症した劇症1型糖尿病とほぼ同時に下垂体前葉機能低下症を合併した症例はこれまでに報告がなく,周産期に発症する下垂体疾患の病態を考える上でも貴重な症例と考え報告する.
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