糖尿病
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58 巻, 5 号
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原著
社会医学・医療経済学
  • 山地 陽子, 板谷 美穂, 今井 健二郎, 山崎 有啓, 小川 晶子, 本田 みき子, 関根 信夫
    2015 年 58 巻 5 号 p. 309-316
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病非専門病棟における専門的・標準的な糖尿病診療の実践を目的として,当院では全病棟に対し定期的な専門チームラウンドを行っている.実際の介入内容では血糖測定の適正化(35.1 %),インスリン療法(34.6 %),経口薬(21.3 %)に関連するものが大部分を占めるが,医療安全に関わるものも5.1 %あった.活動の有効性を評価するため,ラウンド開始後1年及び5年時に看護師・医師を対象にアンケートを実施したところ,1年で既に病棟看護師の98 %にラウンドが認知され,5年後には患者診療に対する効果および糖尿病治療への関心・理解に関連する全項目において有意な向上が示された.医師においても5年時97 %が専門チームの介入を必要とし,90 %がその効果を実感していると回答した.本活動は専門チームが組織横断的に院内の糖尿病診療に介入するものであり,全病院レベルでの糖尿病診療・ケアの質向上に有用であると考えられた.
症例報告
  • 北本 友佳, 森田 聖, 山藤 知宏, 鯉江 基哉, 石田 雄大, 福島 光夫, 安田 浩一朗
    2015 年 58 巻 5 号 p. 317-322
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    SGLT2阻害薬による薬疹が臨床経過より疑われた2型糖尿病の1例について報告する.症例は63歳女性.食物アレルギーあり.シタグリプチン50 mg/日及びグリメピリド0.5 mg/日にてHbA1c 8 %台と血糖コントロール不良でありルセオグリフロジン2.5 mg/日追加.内服8日目,頚部に紅斑が出現し,四肢・体幹に拡大.ルセオグリフロジンの内服を中止するも改善せず.近医受診しステロイド内服するも改善せず,当院受診し入院.皮膚科診察にてルセオグリフロジンによる薬疹疑いと診断.プレドニゾロン40 mg/日点滴にて,皮疹改善.ステロイドを漸減し,プレドニゾロン10 mg/日内服にて退院.臨床経過及び生検結果より,ルセオグリフロジンが原因の薬疹が疑われた.SGLT2阻害薬内服後に皮疹を認めた場合,速やかに皮膚科を受診するよう患者への説明が重要と思われる.
  • 櫻井 健一, 片山 恵里, 茂手木 宏美
    2015 年 58 巻 5 号 p. 323-328
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.2型糖尿病経過中にシタグリプチン50 mgを開始し,血糖コントロール良好(HbA1c5 %台)となるも,その後低血糖と思われる症状が出現した.数日間の体調不良・食思不振の後,低血糖性昏睡(血糖値31 mg/dl)にて入院となった.この時の血清インスリンが9.24 uIU/mlと高値であり,インスリンの不適切分泌が疑われた.各種検査により,シタグリプチンとシベンゾリンの併用による薬剤性低血糖が疑われ,両薬を中止したところ低血糖は改善した.シベンゾリンは膵β細胞に対しSU薬と同様にKATPチャネルに作用し,インスリン分泌を促すことが知られている.本症例は高齢であり,腎機能障害を有しており,シタグリプチンとの併用によりインスリン分泌作用が増強したと考えられた.DPP4阻害薬をIa群抗不整脈薬と併用する際には相互作用による重症低血糖に十分留意する必要があると考えられた.
  • 下山 立志, 岩岡 秀明
    2015 年 58 巻 5 号 p. 329-335
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性.64歳時に2型糖尿病と診断され,経口糖尿病薬を開始されるもHbA1cは8-9 %と血糖コントロール不良であった.73歳時,発熱・下腹部痛・腰痛・全身倦怠感及び食欲低下が出現し入院.子宮留膿腫と診断され腹式子宮単純全摘術,両側卵管卵巣摘出術,洗浄ドレナージを行うとともに,強化インスリン療法で厳格な血糖コントロールを行った.炎症反応陰性化しインスリン離脱して退院したが約2か月後に右腸腰筋膿瘍,1年後に左腸腰筋膿瘍,4年後に右腸腰筋膿瘍,6年後に左腸腰筋膿瘍と,両側性の腸腰筋膿瘍を相次いで繰り返した.近年,腸腰筋膿瘍は画像診断の進歩や高齢化に伴い増加しており,なかでも糖尿病合併例は30-60 %と高率である.しかし,我々が調べた限り両側の腸腰筋膿瘍を相次いで起こした報告はなく,婦人科領域の感染巣から腸腰筋膿瘍に至った報告も計3例のみであるため,文献的考察を加えて報告した.
  • 笠置 智道, 高見 和久, 山田 明子, 坂井 聡美, 原 高志, 酒井 勝央, 安田 圭吾, 今井 裕一
    2015 年 58 巻 5 号 p. 336-341
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    症例はうつ病の36歳女性.糖尿病は未診断.入院1週間前より食事をせず飲酒のみの生活が続き,反復する嘔吐と共に意識状態が悪化し救急搬送された.糖尿病性ケトアシドーシスと診断しインスリン持続投与を開始.それに伴い血清K値は入院時の2.7 mEq/lから1.3 mEq/lまで低下したため,インスリン投与を一時中断しその間72時間で計660 mEqのKを補充した.その後血中ケトン体は減少するもアシデミアがさらに進行し,低Alb血症,低P血症を伴い複雑な酸塩基平衡異常を呈した.Stewartのphysicochemical approachにより酸塩基平衡を解析すると,強イオン性代謝性アシドーシスが主体で,原因として希釈,大量食塩水負荷,急性尿細管障害,ケトン体尿排泄の関与が示唆された.種々の電解質の欠乏を伴った酸塩基,水電解質平衡を総合的に理解するためにStewart法が有用であった.
短報
  • 高田 裕之, 若林 祐介, 篠崎 洋, 川原 順子, 平岩 善雄
    2015 年 58 巻 5 号 p. 342-345
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    当院では2008年に糖尿病地域連携パス(以下パス)を開始した.パス導入患者は通常はかかりつけ医が診察し,当院の担当医は半年毎に診療し1年毎に合併症の精査を行う.パス開始から2014年4月までの6年間にパスを導入した患者は168人おり,この中から悪性腫瘍9例,大血管障害12例が発症していた.悪性腫瘍9例中7例は無症状で6例は発見時Stage IVであった.また,2014年4月にパスを使用していた患者は168人中110人で平均HbA1cは7.4 %であった.一方,同期間に当院を受診するもパス非導入となった115人の患者のうち,年齢,性,糖尿病罹病期間をマッチさせた105人では1例の悪性腫瘍と7例の大血管障害発症を認めた.悪性腫瘍,大血管障害はいずれも糖尿病において重要な合併症であるが,これらに対する複数の検査を定期的かつ確実に施行できるツールとして,地域連携パスは有用と思われる.
委員会報告
  • 糖尿病データベース構築委員会, 田嶼 尚子, 西村 理明, 泉 和生, 林野 泰明, 折笠 秀樹, 野田 光彦, 植木 浩二郎
    2015 年 58 巻 5 号 p. 346-357
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル フリー
    The Japan Diabetes Complication and its Prevention prospective (JDCP)studyは,わが国における近年における糖尿病患者の管理状況を調査し,糖尿病合併症の発症・進展のリスク因子を明らかにすることが目的の大規模観察研究である.対象は2007~2009年に全国の糖尿病を専門とする医療機関に通院中の40~75歳未満の糖尿病患者6,338名で,主要エンドポイントを腎症・網膜症・神経障害・大血管障害・歯周病について設定し,副次エンドポイントを悪性腫瘍および死亡とした.本論文では研究計画および2型糖尿病患者5,944名のベースラインデータを取りまとめた.対象の臨床像は,男性が60.1 %,年齢61.4歳,罹病期間10.8年,家族歴あり52.8 %,BMI24.5 kg/m2,HbA1c 7.4 %(<7 %達成割合40.6 %),血圧(収縮期/拡張期)129.8/74.8 mmHg,non-HDL-C 137.6 mg/dlであった.治療内容は,食事療法のみ10.4 %,経口糖尿病薬62.1 %,インスリン療法27.5 %であった.少なくとも5年間にわたり高い追跡率を維持して,信頼性と汎用性に優れたデータベースを構築し,研究成果を糖尿病診療ガイドラインへ反映させる.
地方会記録
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