糖尿病
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58 巻, 6 号
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 小林 一貴, 竹本 稔, 石川 崇広, 岡部 恵見子, 大西 俊一郎, 栗林 伸一
    2015 年 58 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    糖尿病では,主にトリグリセリド(TG)の上昇を特徴とし,食後高血糖と同様に心血管イベントと関連する食後高脂血症を呈する.我々は食後血糖改善薬アカルボースが,食後脂質代謝におよぼす影響を検討した.食後高血糖を主な病態とする2型糖尿病患者20名にアカルボース300 mg/日を3ヶ月間投与し,その前後でテストミールAによる食事負荷2時間後の各代謝指標等を評価すると,体重,HbA1cおよび食後TGが有意に低下していた.また薬剤投与前の食後TGと,3か月間投与による食後TGおよび食後アポ蛋白B48(ApoB48)の変化量が有意な負の相関を示した.さらに薬剤投与前の食後TG≧150 mg/dlであった13名については,食後ApoB48がアカルボースにより有意に低下していた.本研究からアカルボースの食後高TG血症に対する改善作用が示され,その機序として食事由来のカイロミクロンの減少効果が示唆された.
  • 楠 和久, 吉嵜 友之, 竹田 朋子, 本田 宗宏
    2015 年 58 巻 6 号 p. 388-397
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    インスリン治療中の糖尿病患者で腹部のインスリン注射部位に皮下腫瘤を認めた10例において,病理組織や画像検査,インスリン吸収について詳細な検討を行った.病理では4例に主としてアミロイド沈着を,6例に主として膠原線維増生を認めた.アミロイド沈着・膠原線維増生ともに異物型巨細胞や類上皮細胞肉芽腫を認め,組織球がインスリンを貪食している所見も認めた.画像検査ではアミロイド沈着は体表超音波では深部減衰を伴う低エコー域として描出され,CTでは高吸収を示した.インスリン負荷試験ではアミロイド沈着例だけでなく,膠原線維増生例でもインスリン吸収の低下を認めた.膠原線維増生はアミロイド沈着の前段階の可能性があり,この時点で既にインスリン吸収の低下を認めることから視診・触診はもとより,時には画像検査を行い,線維化の段階で皮下腫瘤の早期発見に努めることが重要である.
  • 布施 克也, 石黒 創, 佐藤 幸示, 大橋 麻紀, 高野 久美子, 若木 深雪, 上原 喜美子, 廣井 幸枝, 高村 誠, 加藤 公則
    2015 年 58 巻 6 号 p. 398-406
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    〈目的〉豪雪地に特異的な低血糖リスクを明らかにする.〈方法〉糖尿病薬物治療中患者434名(男237・女197)に聞き取り調査を行った.〈結果〉男性患者の85.7 %(203/237),女性の61.8 %(122/197)は除雪作業に従事し,除雪作業者の40.9 %(133/325)は屋根除雪にも従事していた.除雪作業者の8.9 %(29/325)および屋根除雪作業者の9.0 %(12/133)は作業中か作業当日中に低血糖の自覚があった.除雪作業者のうち,インスリン患者の49 %(18/37),SU剤患者の14 %(7/49)は作業関連低血糖を経験していたが,薬剤の減量や補食などの指導を受けている人はごく少数であった.〈リスクを踏まえた療養指導〉糖尿病治療患者が安全に除雪作業に従事できるために,除雪時の補食・インスリン等の薬物調整・低血糖時の対処行動などについて,安全性を考慮した療養指導項目を策定した.
症例報告
  • 末丸 大悟, 石塚 高広, 橋田 哲, 中村 保子, 上原 豊
    2015 年 58 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女性.食欲不振,歩行困難,傾眠傾向,両上肢を屈曲する不随意運動を認め当院救急搬送された.来院時Glasgow Come Scale E3 V5 M6,両上下肢麻痺なく,頭部CT・MRI異常なく,血糖950 mg/dl, HbA1c 15.1 %,ケトアシドーシスを伴い当科入院した.補液・インスリン持続静注療法で対応し,血糖300 mg/dl以下となり不随意運動は消失した.典型的な画像所見はないが症状より糖尿病性舞踏病と考えた.尿中Cペプチド12.4 μg/dayとインスリン依存状態で抗GAD抗体が高抗体価であり1型糖尿病の急性発症と考えられた.その後,不随意運動なく経過しインスリン強化療法で退院した.我々は,典型的な画像所見を伴わない糖尿病性舞踏病を呈した高齢発症1型糖尿病の症例を経験したので報告する.
  • 西尾 真也, 山谷 洋子, 尾本 貴志, 篠崎 正浩, 阿部 眞理子, 安徳 進一, 三船 瑞夫, 当金 美智子, 伊藤 裕之
    2015 年 58 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.65歳時に2型糖尿病と診断され内服治療中であった.68歳時に随時血糖596 mg/dl, HbA1c 14.4 %を認め,入院しインスリンを導入した.混合型製剤1日2回投与にて血糖は安定し退院となるも,導入1ヶ月後より右上下肢の舞踏病様不随意運動が出現.頭部MRIでは左被殻T1強調画像で高信号域を認め,糖尿病性舞踏病と診断した.ハロペリドール2.25 mg/日を開始し,5日で不随意運動は消失した.その後の経過は良好で10ヶ月後にハロペリドールを中止したが再発を認めず.MRIの病変は発症後5ヶ月後には消失.その後も7年間の長期的なフォローアップを行っているが,臨床症状,MRI所見ともに再発を認めず.一般に糖尿病性舞踏病は高血糖に伴って発症する.本例のように比較的急速な血糖改善に伴って発症することは報告が少ないうえ,発病から7年間再発を認めず,5年半後の画像検査を確認した貴重な症例であると考え報告する.
  • 山藤 知宏, 井原 裕, 矢野 秀樹
    2015 年 58 巻 6 号 p. 419-425
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    55歳男性,悪寒,発熱をきたしたため入院10日前に近医を受診し,解熱剤を処方された.翌日皮疹が出現したため当院を受診.随時血糖は113 mg/dl.入院7日前より紅斑は癒合,拡大し,入院6日前の随時血糖は200 mg/dlであった.入院4日前,腹部のCTでは著明な肝,膵の腫大をみとめた.入院2日前より,急激に口渇,頻尿,および全身倦怠感も出現したため,当科を受診.急性発症の糖尿病性ケトアシドーシスにて入院となった.HbA1c 6.9 %,随時血糖807 mg/dl,動脈血pH 7.285,血中ケトン体の増加を認めたが,膵島関連自己抗体陰性であった.グルカゴン負荷試験ではインスリン分泌は低下を認めるものの枯渇状態を確認できたのは発症後8か月目であった.全身の紅斑出現後膵腫大を伴い急激なケトアシドーシスを発症した劇症1型様糖尿病について報告する.
委員会報告
  • 糖尿病データベース構築委員会, 西村 理明, 泉 和生, 林野 泰明, 折笠 秀樹, 野田 光彦, 植木 浩二郎, 田嶼 尚子
    2015 年 58 巻 6 号 p. 426-436
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/08
    ジャーナル フリー
    JDCP studyは,わが国の1型・2型糖尿病患者を対象とし,観察期間中に捕捉された糖尿病合併症のリスク因子を示すことを目的とした大規模前向き観察研究である.対象は40~75歳未満の糖尿病患者6,338名で,本研究では1型糖尿病患者394例のベースライン時の臨床データについて検討した.対象の基本情報は,男性174名(44 %),年齢(平均値:男/女)55.3/56.8歳,糖尿病罹病期間11.9/11.1年,家族歴あり27.7/35.6 %, BMI 22.4/21.8(P=0.048),HbA1c 7.9/7.7 %, HbA1c<7 %達成率23.1/26.9 %,収縮期血圧126.0/124.9 mmHg, LDL-C106.1/107.7 mg/dlであった.インスリンの使用単位数は33.0,体重1 kgあたりの投与量は0.58単位であった.SMBGを95.8 %の患者が行っていた.
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